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49.目覚めのもふもふ

顔の前に気配を感じながら薄っすらと目を開く。

目の前が真っ白に染まり、その白い何かに自然と、僕は顔をうずめめたいという欲求に駆られた。


もふん。

もふん?


もふんもふんもふんもふんもふん『ある…』『ぢ…ぐぅ』もふもふもふもふもふん。


「クワァァァァウォーン」


「あててててて。痛い。痛いよキハク!」


目の前にある極上のもふもふを、心ゆくまで堪能してみた結果。このような大惨事となりました。


目の前には涙目のシルネとレム。そして、頭を丸齧りにする更に大きくなった我が愛狼【キハク】

どうしてこうなった?



あれから丸2日経っていたらしい…。

どうやら大きくなったキハクと、僕を肩に担いだギルド長が宿に訪れた後。暫くして、事態の終息宣言が出されたらしい。


既に、論功行賞にあたる報酬の受け渡しは完了し、僕が目を覚まし次第ギルド長室に来るようにとシルネが言伝を預かっていた。


「ユウ様〜」


涙でぐしょぐしょになった顔で、シルネが胸に飛び込んでくる。レムがいるため、ギルドのシルネバージョンではあるが、美少女である事は変わらず、胸元で泣き続ける女の子にどう言葉をかけて良いかわからない…。


「シルネ。それにレムもなんだか心配掛けたみたいでごめんね」


胸元のシルネの頭を撫でながら、心配をかけてしまった事に対して謝罪する。


キハクの話しでは、担ぎ込まれた当初は《認識阻害》が働き、どこぞの知らないおっさんが担ぎ込まれ、勝手に僕の部屋のベッドに寝かされた事で、レムもシルネも大混乱に陥ったらしい。


さすがにサラムさんは、状況判断で僕だとすぐに気付き、ギルド長を3階に通したみたいで、混乱するレムの頭頂部に拳骨を落とし、落ち着かせたとのことだった。


混乱する2人を気にすることなく、ギルド長は僕とキハクの《認識阻害》を解除し元の姿に戻し、その後2人に事の顛末を、話しても良い範囲で伝え、後日来るようにと伝え帰って行った。


「おや。やっぱり目を覚ましていたのかい」


2人の叫び声が1階にも届いていたらしく、サラムさんが暖かいお茶を持ってきてくれた。


「体調はどうだい?ミネリアが言うには、大量の神力を一気に吸収した経験値酔い?だそうだよ。まぁいっぱい、ゴブリンの奴がいたんだろう?冒険者になったばっかりのユウにはキツかったのかもしれないねぇ」


頭に手を置き、優しく撫でてくれるサラムさん。その優しい手はまるで母のような温かさで、心をホッとさせてくれた。


「大丈夫です。体を動かしても違和感は無いですし、逆に軽いくらいです」

おそらくレベルアップしているであろう体は、以前より軽く感じ思った以上に全身がスッキリしていた。


まさか上位ゴブリンだけでなく、【ゴブリンキング】まで討伐してるとは言えず笑ってごまかしはしたものの、経験値酔いなるものが起きるほど大量の経験値を得られたことは大きい。


あの後すぐに気絶してしまったが、この都市に着く前にはキハクは一回り大きくなっていたらしい。

ポメラニアンが豆柴に、豆柴が柴犬サイズになった。でもまだまだちっちゃくて可愛い。


この短期間で、この成長ならもぅ前のグレーパックウルフとして売られたウルフだとは思わないだろう。


無事、経験値が分配されたみたいでよかったね。


「ほらシルネ。顔を上げて涙を拭きな。そんな顔してたらギルド長のところに行けないよ」


胸元で泣き続けるシルネに、ハンカチを渡し顔を拭かせる。

「グスッ… ユウ様のハンカチ…。」


ん?なんかおかしなニュアンスで聞こえるぞ?それにハンカチは自分のポケットにしまうんだね。シルネ。

ほら。レムに見られて、なんか言いたそうな顔してるでしょ。


「よ…よし。じゃあ落ち着いたしギルドに行こうか」


「あっあのぅ。確かに私もお義母さんに会いたいのですが、このタイミングでギルドは…」


「あぁ!そうか。ごめんね。このタイミングで僕がシルネを連れてたら騒がれちゃうよね。ん?そうだ!」


(シルネ。変化の魔道具って今の姿以外に変えれないの?)


胸元から少し顔を離したシルネの耳元で、小声でサラムさん達には、聞こえないように魔道具について確認してみる。


(そうでした!大丈夫です)


うん。それなら問題ないね。


「わかった。じゃあ一緒に行こうか」


再び誘うと、シルネの顔は嬉しそうに、満面の笑みを浮かべた。

「はい!」



「むー。シルネさんばっかり、ズルいです。私もっ…ぐぇっ」


「ほらレム!あんた掃除残ってるでしょうが。いつまでも油売ってんじゃないよ。まったく」


こちらに向かって飛び込もう?とした瞬間、サラムさんに襟を捕まれ部屋を出ていくレム。

なんか、折角心配してくれてたのに、ぐぇっとか言ってたし、少し可哀想になってきた。今度美味しいもの作って持ってくからね。


「それにしても、甘味が少ないよな〜」


「どうしました?」


シルネにも聞いたことがあるが、ギルド職員のシルネですら、砂糖の入ったお菓子は一度しか食べた事がなく、上着のボタンほどの大きさのクッキーのような焼菓子を半分に割って食べたっきりだと教えてくれた。


砂糖は何かの植物から作られるが、何の植物でどう栽培するかは王族の契約農家しか知らず、たまに流れてくる砂糖の金額は宝石ほどの価格がついている。

僕も買おうと思ったが、さすがに諦めらめた。


これから必要になるし、植物の本でもあさるかな。


準備を整えながらも、甘味を求める頭はくるくる回り、様々な料理に想いを馳せる。


「いや。何でもないよ。さっ行こうか」


丸齧りは許してもらったキハクと、シルネの肩を叩き、ギルドへ向かった。









ブックマーク&評価を頂き有難うございます。


これからも是非よろしくお願いします。

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