表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/74

43.母は強し

轟音と共に、数体のゴブリンが弾け飛ぶ。


「はっはっはー!ゴブリン共が!潰す潰すブッ潰す!こっちへ来いよっ!おらっ!【挑発】」


タンカーや、重戦士職の戦士が、熟練度を上げることで使用可能となる職技の一つで、周囲の敵の敵対心ヘイトを上昇させる技【挑発】を使い、大きな戦鎚を振り回す戦士が、自分の周囲にゴブリンを集め、薙ぎ払うように振るわれる戦鎚によって、ゴブリンを薙ぎ倒していく。


「ギョフォ」


「また足下に隙が出来てます。 よ!」


「ギャッ」


「ガッハハ。構わん構わん!オンシが片付けてくれるじゃろ! そりゃ【地走】」


大きく縦に振るわれた戦鎚が、地面を叩くと、衝撃波が一直線に走り、その直線上にいたゴブリン達が弾け飛んでいく。


この戦鎚使いは、殲滅力の高さに比例するかのように大技後の隙も大きく、先程から懐にゴブリンシーフ、遠距離からゴブリンアーチャーに狙われているところを投石でその隙を埋めていた。


「ギャー」


キハクの牙が、ゴブリンファイターの首筋を噛み切り、絶命させる。


「いかんな。」


「どうしたんですか?」


戦鎚を振り回し、戦士が小声で呟く。


「こちらはいいんだが中央が後退しておる。足並みを揃えるならばこちらも後退すべきだろう。何かが起こっとる」


何かが起きている。その言葉が気になり、中央へ向け《気配察知》を意識する。


「⁈」


「どうしたんだ!」


増えている……?


中央の敵意の気配が明らかに先程よりも増え、冒険者達を襲っている。


「わからないですが、ゴブリン達の数が増え中央の冒険者達に一斉に襲いかかっています」


「なんじゃと!えぇい鬱陶しぃ。とにかくこの場は後退するぞ。端は十二分に削った。中央に助けに入るぞい」


近寄るゴブリンファイター達の、頭部を爆散させながら、戦鎚の戦士が中央へと足を向ける。


中央の敵意の数は、先程から減るどころか増えており、今にも味方が飲み込まれそうになっていた。


『キハク全力で行くよ。』

『なんだかさっきからすごい体が軽いです。主様。いつでもいけるよ〜』


すでに《認識阻害》の影響で、戦鎚の戦士の姿は変化し、わからなくなっている。


同様にあちらも、もうこちらを認識できてはいないだろう。


《血桜》をいつでも抜けるよう意識し、中央へと向かう。



「なんだこれ?」


中央にたどり着くと、そこには異様な光景が広がっていた。


倒されたゴブリン達、冒険者達が蘇り、アンデットとなり味方を次々と襲う。


倒しても倒しても蘇るアンデットに、冒険者達は戸惑い少しづつ後退していた。


「やめろー。おいっ俺がわからねぇのか!スキフ!スキフ! う うぁー!」


おそらく、元パーティメンバーを襲っているアンデットの頭に、力一杯石を投げ込む。


頭蓋骨を破壊するその音ともに、糸が切れたように崩れ落ちるアンデットに、すぐさま周囲に声をかけた。


「敵はアンデットです!どこかでゴブリンネクロマンサー がいるはずです。アンデット自体は頭部への攻撃が有効のようですので、即対応を!それ以外での攻撃方法では蘇ります!」


【ゴブリンネクロマンサー 】

仮初めの魂を死者に与えることができ、死体を操る事に長けたものが至る。


蘇りを防ぐように、アンデットを含め、生きているゴブリン達の首を刈り、頭部と体を切り離す。


血桜に付着した血はすぐさま消え去り、ゴブリンを切れば切る程、その斬れ味は落ちるどころか、鋭くなっていくようだった。


冒険者達が頭部への攻撃に切り替え、しばらくすると、徐々に中央部分も負傷を癒した冒険者達も戻り、戦列を押し戻し始めた。


傷ついた冒険者へ、次々とポーションを投擲すると、当たった瞬間に瓶は砕け散り、その体を淡く発光させた。


錬金術師達のたゆまぬ努力か、ファンタジーのご都合主義か……。


この世界のポーション瓶は壊れにくく、砕け散り易い。意味がわからないって?そういうものなんだよね。


「フンッ!」


傷が癒された冒険者達を確認し、安堵していると、後ろから頭部の弾けたゴブリンモンクが、飛んでくる。


「おい息子!白いのと最前線へ上がるぞ。私も行こう。そろそろ日没だ一気にケリをつけるぞ」


「息子⁈」


ギルド長が、直接名前を呼ばないようにして読んだ名が、まさかの息子!


たしかに、義理の娘の主人になったよ?あれ?いつ結婚したんだ僕たちは?


偃月刀を手に、ワイルドすぎる出で立ちで、周囲のゴブリン達を撫で斬りにしていくギルド長は、有無は言わさぬといった。威圧感を振りまいている。


もちろん、僕の返答は決まっていた。

「はい!母さん」


ブルドーザーのように、障害物ゴブリンを掃討し、道を作り出すギルド長の背中を追いかけ、ゴブリン軍の中へ中へと切り込んでいく。


【ゴブリンナイト】の盾ごと真っ二つにし、【ゴブリンシーフ】の腕を切り落とし、【ゴブリンファイター】を一刀両断にする。


その姿は、まさに阿修羅。


転生者を疑うほどの無双っぷりに、[あれ?もうちょっとスキル付けても対して影響なかったんじゃない?]と思ってしまったのは、おかしいことじゃないと思う。


遠距離から狙いをつける【ゴブリンアーチャー】と【ゴブリンメイジ】を、落ちているゴブリン達の武器を投擲し倒すと、とうとう軍の最後列に辿り着いた。


「いたぞユウ。臆病者め守りを固めて、自分は高みの見物か」


ゴブリン達の大集団から、50m程離れた先に小さな集団が確認できる。


大きな盾を構え主人を守る忠義の盾【ゴブリンナイト】を最前列に守りを固め、詠唱を続ける【ゴブリンメイジ】と弓を携えた【ゴブリンアーチャー】が後方支援の為、その後ろに控える。


支配者である【ゴブリンジェネラル】は、たった2人で来た僕らに薄っすらと、余裕の笑みを浮かべ、巨大な斧を3体の【ホブゴブリン】に持たせ、仁王立ちをしていた。


そして、その【ゴブリンジェネラル】を挟むように、回復役の【ゴブリンプーリスト】と、中央を混乱させている【ゴブリンネクロマンサー 】が、怪しげな杖の先端を紫に光らせながら、控えていた。




本日多くの皆さんから、ブックマークと評価を頂きました。

有難うございます。


引き続き、この物語に対し評価を頂けたら嬉しいです。

感想もお待ちしております。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ