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38.レムとシルネとダブル問題

お知らせ。

連載開始1ヶ月&10万字到達。


『迷宮都市の料理人』

皆様のお陰で今日で初投稿からちょうど1ヶ月。そして本日投稿分で10万文字となりました。


まずは10万文字を一つの目標と考えているので、毎日増えていくブックマークを見て嬉々として書いてます。


これかも『迷宮都市の料理人』をよろしくお願いします。

顔を埋め悦に浸る2人と、なされるがままとなったキハク。

現在キハクは、その真っ白でふかふかな体を両サイドから持ち上げられ、足をだら〜んとして完全な脱力状態になっている。


頑張ったね。キハク……。


たぶん僕が厨房に行ってからすぐに、キハクを構い出したんだろうな。


「ハッハハ! 何という触り心地だ。シルネの髪もシルクのような触り心地で気持ちよかったが、こちらの感触はなんとも言えん。ついな。許せユウ。そしてキハクもな」


抱かれながら、クネクネと体を捩っていたキハクが解放され、足元へとやってくる。

若干涙目のような気がするが、まぁ嫌ではなかったのか?


『主様〜。良い匂いがします』


床に置いたウルフ耳の入った小皿に、鼻を近付けるキハクは既にしっかりとお座りをし、待ての状態で待機している。

しかしユラユラと動く尻尾は、さすがに待てが出来ておらず。正直に気持ちを表していた。


「うん。いいよ食べて、ギルド長から貰ったウルフ種の耳を柔らかくしたものだから食べやすいと思うんだ」


ギルド長の顔をしっかりと見た後、調理してきた【ウルフ耳のミミガー風】を勢いよく食べ始めるキハク。


やはり魔物は、魔物の肉を美味しく食べられるって事か?そうならば、人でもいけそうな気がするんだけど……。う〜ん。


「おぉキハクよ。礼を言ったのか。そんな目で見つめられると困ってしまうよ」


満足そうなギルド長が、再びキハクを撫でようとしたとき、食べ終えたキハクに変化が起こり始めた。


「ウーッ」


一瞬の唸り声と同時に、真っ白なキハクの体毛が黒に近いグレーに、そしてフワフワの毛が針のように鋭く、そして鋼のような光沢のある体毛に変わっていく。

まるで、ハリネズミやヤマアラシのように、全身の硬い体毛の1束1束を逆立てるキハク。


しかし、すぐに次の変化が始まった。

「ウゥーッ」


最初の変化が終わったと同時に、鋼のような毛が柔らかな白い毛に戻り、次は赤く、赤く染まっていく。

尻尾の先に火が灯り、全ての脚の膝部分からも炎が生まれ、小さなイグニスウルフの姿となった。


おそらく一つ前の姿は、アーマードウルフの姿だったのだろう。


食べたウルフ種となれるスキル《狼化》。そのスキルを目の当たりにした瞬間だった。


「おぉー。これが例のスキルか!まさか冗談半分だったんだが、本当に変化出来るとはな。丸一匹食べる必要がないというのも…。まぁイグニスウルフは火を操る事ができるし、アーマードウルフは恐ろしく硬い毛が何層にも生えているため、斬撃に異常に強い。そして厄介なのはその毛を武器としても使ってくる事だ。同じ事が出来るならば、それなりに戦力増加になったはずだ。2人ともしっかり励めよ」


ギルド長の検証結果を改めて考えてみると、キハクの種族は異常に強かったんじゃなかろうか。ギルド長が何を言おうとしたかもだいたい想像できる。


多くのウルフ種を取り込めば、それだけ多くの特殊能力やスキルを得る事が出来る。


しかも一口で良いとなると、仲間うちで一匹のウルフを分け合えばいいだけの事。そうすれば食した全員で、そのウルフの力を共有出来ると言うわけだ。


そんな、圧倒的強者になり得る種族を、蹂躙する龍族。彼らは何故キハクの身内を滅ぼしたのか。

そして、キハクと過ごせば、いずれ龍族と合間見える日がくるだろう。


キハクの変化が終わった後、奴隷を持つことの説明を受け、ギルド長に見送られてシルネと共に、ギルド長室を出た。


「あっあの!ユウ様。こんな私ですが、これから末永く宜しくお願いします。…… 私は長生きですよ。」


挨拶の最後に、そっと笑顔で付け加えられた一言ささやき


長命なエルフの彼女はお互い寿命を迎え死ぬ事になれば。間違いなく、いずれ一人になってしまうだろう。

だから可能な限り、僕もその笑顔に応えられるように。そしてこの笑顔を守れるように頑張ろう。


「うん。宜しくね。シルネ」


顔の熱が引かぬまま、一度宿屋に戻る。


ギルド長には、家を紹介してくれるよう条件を出したが、もちろんその場でとはいかず。

数日中に紹介できる業者と、物件を探してくれることになった。




「お か え り な さ い ゆ う さ ん」


宿の扉を開け、笑顔で出迎えてくれたレムが、その後に入ってきたシルネを見た瞬間顔が凍りついたように体の動きを止め、無表情となった。そしてまったくと言ってよいほど、抑揚のないお帰りを発してきたレム。


言葉だけじゃなく、その後の動きも非常にゆっくりで、さっきから同じ所をずっと箒で掃いている。


ーーー箒なのにピッカピカだ。


スキルの能力を実感しつつ、余計な事を考えていると、レムが再度ゆっくりと口を開く。


「おふたりでおとまりですか。“別々《・・》”のへやをおとりになりますか」


“別々”の所だけが、やけにハッキリと聞こえたが気のせいだろうか。


ゴンっ!


「いったーーーい。何すんのよお母さん!」


「何馬鹿な事言っているんだい。ギルドのミリネから聞いたよ。なんだか大変だったみたいだね。シルネの事もね。奴隷契約を結んだのなら2人部屋を用意するよ。だから今の部屋の荷物は、夜までにまとめてしまいな。」


「あっ。はい。いつも有難うございます」


「いいんだよ。あぁそれとベッドはダブルで良いね」


「あっはい。ダブル(ベッド2つ)で大丈夫です」


パタンっ

何故かレムが箒を手放し固まっているが、どうしたんだろう?

そして僕の後ろでは、真っ赤な熟れたトマトのような顔になったシルネが、もじもじしているし。


(やっぱり、いきなりよく知らない男と同じ部屋なんて嫌だよね。まぁベッドは別々だしそのうち慣れるでしょ。だから今は、そっとしておこう。)


「じゃあ鍵はこれだ。304ね。3階の一番奥の部屋だよ。今使っている301から、夕食までに一番奥の部屋に荷物を移しておいておくれ。隣も下も空き家だけどあんまり騒ぐんじゃないよ 」


サラムさんから、色んなものを含んだ笑顔で鍵を渡されたが、そんな事はしないよ。奴隷だからって、いきなりはしないよ!


相変わらずもじもじとして、まったく喋ることのないシルネと、取り敢えずは部屋に向かう。


案内通り、3階の今借りている【301】号を越えて、突き当りまで進むとたしかにその部屋はあった。


【304】


そう書かれたドアを見つけ、開けた瞬間。………僕は大いなる間違いに気が付いた。いや気がつかされた。そして今までのシルネの行動の意味を理解した。


12畳程の部屋に、大きめのベッドが1つ?


「ユウ様。まさか初日からとは思いませんでしたが、夜までにしっかりと準備をしておきます」

頬を染め、服の袖をそっと掴み小声で呟くシルネ。


「えっ!えぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーー」


どうしてこうなった?


前話で10万まであと2話と後書きさせて頂きましたが、ギリギリ10万文字に届いてました。

申し訳ないです。


これからもよろしくお願いします。


感想 ・ 評価 ・ ブックマーク ・ レビュー など是非面白いと思って頂けましたら。よろしくお願いします。

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