3.飼い殺しは遠慮したい
「そうですね。俺Tueeeなら聖剣召喚やら全魔法適正やら成長速度促進やらでしょうか。その他諸々つけて転生することもできますが、最初の鑑定で勇者扱いされて、国に一生飼われるか。反逆して自分の国を作る!みたいな人生になりそうですね」
「えっ最初の鑑定って何かされるの?」
「はい。全国民は生まれたら鑑定石での鑑定と名付けをされます。だいたい生まれ持ったスキルが2〜3個。戦闘用だったりそうじゃなかったりで、将来を決めるようですね。まぁスキルがなくったって、強い人は強かったりするんですけどね。」
「俺が転生予定の国は、どんな所なんだ?」
「はい。迷宮都市を国力の中心とした。人族三番目の国ですね。迷宮は魔物素材からお宝まで、無限の可能性を秘めていますから。スキル主義で、国に雇われる職業につくのならスキルが必須です。戦闘職なら剣術や弓術。魔法職なら魔法技能。少々好戦的で、領土を広げようと戦闘職が優遇されてます。」
「ちなみに迷宮って攻略したらどうなるんだ?」
「はい。先程のご説明の通り最下層には迷宮主がいます。迷宮主が倒されると迷宮が崩壊するので、大きな迷宮は迷宮主までの攻略を禁止してます」
「ちなみに迷宮主を倒して、ダンジョンコアを体に取り込めば迷宮主になれるのでダンジョンマスターに憧れがあるなら狙うのも手ですよ。まぁその事はあまり知られてないんで、コアは莫大な魔力を蓄えてる魔石みたいな扱いですね。国が一生遊んで暮らせるお金と、国専属の冒険者として雇ってくれますよ」
にこりと笑い爆弾を落としてくるが、俺はそんな波乱万丈な人生も飼い殺しの人生も望んじゃいない。
「なんだか。就職の自由がなさそうな国だな。俺はいいや。上手いこと戦闘職を避けれて身を守れるようにするにはどうすればいい?」
「そうですね。先程のご要望ですと、知識継承は可能です。言葉や読み書きも出来るようにしておきます。あとはスキルですね。まずは料理という事で料理を。それと身を守るとし気配察知を。これは気配を探る事で、自分に降りかかる危険も事前に察知します。使い慣れればもっと細かく設定できますよ。実は危機回避というのもありますが、これは自然に危機を回避して行くので意識できず安全に誘導されてしまいますので」
「その方がいいんじゃないの?」
「はい。危機回避だと何が危険だったかが自覚ないままなんです。どの程度の危険かも。それに引っ張られて望まない方向に行く事もありますし、冒険はしづらくなります。気配察知ならば、危険な場合何に対してかわかり回避を選択できます。」
「あーなるほどね。未知な物を扱う時とか、選択肢すらないのか。確かにそれなら、気配自体を察知できる気配察知かな。ありがとう」
「いえ。では続けます。食材の鑑定という事でしたが、そのまま鑑定をお付けしましょう。ただこのスキルはバレるわけにはいかないので、固有能力として《メニュー》というスキルを付加します。これに食材を入れるインベントリ機能も付いているので、持ち運びも便利になるかと思います。もちろん魔法袋も存在するのでそちらも入手すれば使えます。」
「おぉ大盤振る舞いだね。助かるよ。でも鑑定でバレないんなら俺Tueeeセットも固定能力にすればいいんじゃない?」
「そこなんですが、固有能力は非常に大きな容量を使うので、単純にリソース不足で中途半端になってしまうんです。今回もバレないために鑑定石に出ない固有能力を付加する事で少々リソースが不足してしまい。申し訳ないですが、読み書き言葉のいずれか2つを、諦めて頂きたいのです。それと最初から強いスキルではなく、スキル同様成長させるものだと、ご理解ください。」
「そうか。鑑定なんてバレたら勇者並みに国に飼い殺しされるよな。じゃあ言葉と書きを諦めるよ。自分で習えば何とかなるんでしょ?」
「はい。普通に生活していれば言葉は覚えられますし、勉強すれば書けるようになります。読めはするので難しくはないでしょう。ではスキルではなく知識として、読みを追加します」
「固有能力は通常ならあるだけで相応の力を発揮できるところ申し訳ないです」
少し残念そうに頭を下げるネルが、さらに僕の右側に視線を移す。
「それと海藤さんが持っていた包丁ですが、この空間に一緒に付いてきています。何か特別な包丁か地球の神の加護を受けているのでしょうか?」
「包丁?」
今まで気付かなかったが、自分の右手側には師匠から貰った和包丁のセットが、包丁巻きケースに入って置いてある。
そういえば俺、なんか作務衣みたいの着てて生前の物、何も無いと思ってたよ。
「あー。多分だけど死ぬ前に神社で神さまにお祓いして貰ったんだよ。だからかな」
「確かに浄められてますね。ではその包丁を元にあなたの包丁を作り直しましょう。さすがに、そのままでは向こうの世界には持っていけませんので。いつか持てるようになったらお確かめください」
ネルは包丁巻きケースから1本1本包丁を取り出し、なにかを呟きながら確認し、大きく頷く。
包丁巻きに再び収められた包丁を返してもらい。
改めて包丁を見つめる。
「わかった。すまんな相棒。一回も使ってやれなくて。転生先では必ず役に立ってもらうからな」
そう言うと、薄っすらと銀色の刃紋が光ったような気がした。
「では転生の準備にうつります。名前は鑑定石の鑑定と共に授かりますが希望はありますか?苗字は無いですので言っていただければ名前をそのまま付与しますが」
「ではそのままユウにしてくれ、意外に気に入ってるんだ自分の名前」
「わかりましたユウさんですね。ではユウさん固有スキルに《メニュー》 一般スキルに《料理》と《気配察知》を《メニュー》一覧はご自身でご確認下さい。僕のせいでこんな事になったので、固有スキルらしい性能になってます!転生先は農家の次男。15歳になったら村を出る運命になります。それまでに自立出来る力を身につけてください」
「わかった。まぁなんだ色々言ったが料理を続けれそうで良かった。1からやり直すチャンスだと思って頑張るよ」
「はい。今回は本当にごめんなさい。僕のせいで」
僕っ娘は本当はこの喋り方が素なんだろうな。
やっと落ち着いたって事か。
「それでは転生を始めます。最後にユウさん。向こうの世界はスキルが全てでは無いです。同時に困難ではありますが、努力次第でスキルは身につきます。ほとんどの人がその前に諦めてしまいます。自分自身の為努力する事。これを忘れないでくださいっ!」
最後の言葉を聴きながら、青い光に包まれ目の前から世界が消えた。
お読み頂き有難うございます。
やっと転生の準備が整いました。
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