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26.君はもう一人じゃない。

意外と簡単な材料で美味しく作れるアイツが登場します。

PVが2万を超えたので、本日2話目の更新です。


窓から差す光を浴びて、ゆっくりと目を覚ます。

上半身を起こし、腕を大きくあげて背筋を伸ばすと、横にいるキハクも前脚を伸ばし背中を反るようにして背筋をのばしていた。


階段を降り食堂に向かう僕の腕には、キハクが抱かれている。


「おはようございます!」


食堂にいるレムと、厨房で仕込みをしているサラムさんに挨拶し席に着く。


「おはようございます。ユウさん。白狼のこ……。」


抱かれているキハクを見たレムの表情が、一瞬困難の表情を浮かべる。


「あれ?えっとユウさん?昨日は確かに真っ白な…えっ?何があったんですか?」


そう。僕の抱いているのは間違いなく白狼のキハクだ。ただし、レムが見ているその姿は、どう見ても昨日連れ帰った状態の灰色のくすんだ毛並みのグレーパックウルフの子が、元気に尻尾を振っている姿だった。


《狼化》


それが、今キハクが使っているスキルだ。

この能力は、キハクの種族のオリジナルのスキルで一口でも食べた事のあるウルフ種の姿や能力を、その種のオリジナルスキルであっても使用を可能にする。

キハク曰く熟練度が足りないため、姿を変えなくてはスキルを使えず、さらにその一部しか使えない。


キハクは、元々迷宮の外で暮らしていた。

少数しかいなかった種族だが、その地域の統治者として君臨していたらしい。しかし突如複数の龍族に襲われ壊滅してしまった。生き残ったもう1匹と共にもう一匹の能力を使い迷宮に外から入り、グレーパックウルフの群れにまぎれ生活していた。

しかし、その仲間も傷付いた体が回復出来ずに、キハクを残して息絶えた。


しばらくは、グレーパックウルフの姿で群れに紛れて暮らしていたが、魔力がなくなりかけ、スキルが維持できなくなってしまった。

姿はグレーパックウルフから元に戻ったが、真っ白な毛色は汚れですっかりグレーになり、スキルを解く前とあまりに姿が変わらず。そのまま捕獲されてしまったらしい。


グレーパックウルフの群れの近くで捕まり、色もグレーっぽかった為、そのままグレーパックウルフとして過ごす事になったが、3日程食事を抜かれ、ろくに魔力も回復出来ず戦っていたところ。ぼくと出会った。


“天涯孤独”


この子狼の壮絶な数日間を聞いた時。僕はキハクを抱きしめた。


起きた時その話を聞き、しばらくキハクと色々な話を聞いた。


あるじ様に出会えてよかった』

そう腕の中のキハクが言った時、僕の目から大粒の涙が流れ止まらなくなっていた。


下の食堂に行く際。真っ白なその姿は目立つ為、今唯一姿を変えられるグレーパックウルフになって貰った。ちなみに目も普通の魔物と同じように赤く出来るが、さすがにスカイブルーの瞳をレムに見られている。ここで目も赤くするのはまた面倒になるため、レムの前では目を普通のままにしている。


「はい。昨日の子狼で間違いないですよ。キハクって言います。真っ白は目立つので昨日のうちに染めちゃいました」


種族の事もスキルの事も、そんなに広げるものではないだろう。どこで変な奴が聞いてるかもわからないしね。ついでに僕が許可しない限りは念話も禁止している。


「キハクちゃんですね。私はレムって言います」


キハクは頭を撫でられながら尻尾を揺らし、挨拶がわりにとレムの指先をペロリと舐め柔らかな肉球を手のひらに乗せていた。


朝食の準備の為、お客さんはいないので キハクをレムに預け厨房へと赴く。

昨日から、どうしても食べたかったあれにトライする。材料は昨日のグラタンともだいぶ被るし、何気にベーコンの使用率が高いのが気になる…。早く新しい食材を探さなくては。


〜ポテトとベーコンのトメットピザ〜

使用包丁:陽炎【薄刃庖丁】

材料(1人前)

具材

ラビエ豚のベーコン 3cm

ゴロポイト 中1個

チーズ 1掴み

塩 少々


ピザ生地

小麦粉(強) 120g

小麦粉(薄) 20g

酵母 2g

塩 少々

植物油 少々

ぬるめのお湯 80cc


トメットソース

完熟トメット 2個

オニオル 1個

ネルーツ 2枚

植物油 少々

塩 少々

胡椒 少々


トメットソース

①トメットの皮を湯剥きし、煮沸した瓶に詰め蓋をする。

②瓶ごと水から茹でること30分でホールトメットの完成

③熱したフライパンに刻んだオニオルを半分くらい入れ飴色になるまで炒める。

④しっかりと飴色になったら一度火を落とし、常温に戻ったところに、粗めに刻んだネルーツを入れ再び火をつける。

④軽くネルーツに火が通ったタイミングで、刻んでおいた残りのオニオルと潰しながらホールトメットを入れ、さらに火にかけ煮詰める。

⑤水分がある程度飛んだら、塩胡椒をし味を整え完成



ピザ

①小麦粉(強)と小麦粉(薄)を振るい入れ、塩と酵母を混ぜ合わせる。

②植物油と酵母を発酵させるための、ぬるめのお湯を加え混ぜ合わせる。

③生地が一纏めになるまでよくコネ、まとまったら空気を抜くように打ち、数回に1回こねるを繰り返す。

④乾燥しないように蓋をし、1〜2時間放置し発酵を促す。

⑤一次発酵を確認したら、手で伸ばしガスを抜きながらさらに伸ばす

⑥再度蓋をし、20〜30分かけ2次発酵を行い生地の完成。

⑦発酵後円形に伸ばしピザの形に整えたら、トメットソースをぬり、具材を乗せ窯へ

⑧450〜500℃に熱した窯で1〜1分30秒程で取り出す。

⑨最後にパラパラっと粗めに砕いた胡椒をかけて完成!


いつものように、時間がかかる発酵やら水煮やらは《どうぐ》の力を最大限に活用。時間のかかる作業をすっ飛ばしているから10分も掛からず完成だ。


それにしても、市場に小麦粉が数種類売っているのには驚いた。と言ってもこちらの人たちはそこまでこだわって使っているわけではなく、様々な小麦の種類というより名前別に売っているだけで、自分たちの店で使う一番気に入った小麦を1種類決めてそれを使っている感じだ。

市場にあったその小麦は、グリュメニン種 グリュノマニ種 グリュゼニス種 グリュデセナ種の4種類。

真っ白な粉ではなかったが、その品種を捏ねることで、グルテンの量が違うことがわかった。料理のスキルの熟練度が足りないからか、強力粉 中力粉みたいには分からないが、自分なりに試した結果がメニンが(強) ノマニが(中) ゼニスが(薄)として分別した。 ちなみにデセナはたぶんパスタ用に使ってた小麦だと思う。


窯から取り出した大きめのピザを8等分に分ける。この三角の形をどれだけ夢見たことか。相変わらず調味料は塩と胡椒しか使ってないけど…。


「それで?お二人はやっぱり僕の後ろにいるんですね……。レム?流石に厨房にキハクはまずいんじゃないの?」


予定通りといえば予定通り。振り返ると、既に隠れて見る事を辞めたサラムさんと前脚の脇に腕を通した状態でキハクを抱くレムが期待の眼差しでピザを注視?いやガン見していた。

2人の女性の視線をここまで集めるとは…。憎い奴め


「だっ…」


「だ?」


「だ 大丈夫です!キハクちゃんはとっても清潔です!」


うん。ダメだね。2人とも。

まぁキハクは抜け毛はないらしいからいいのかな?レムの清掃スキルで洗われたばかりだしね。


「「「『いただきます!』」」」


結局ピザは3人と1匹で分けました…。


こんなにも笑顔に囲まれて、キハクはもう一人じゃないよ。






読んで頂き有難うございます。またブックマーク有難うございます。

よろしければ感想や↓の評価を押して頂けると嬉しいです。


誤字脱字があれば教えてくだい。すぐ訂正いたします。

よろしくお願いします。

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