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23.料理人だからこそ出来る事がある。

少々更新予定を遅れてしまいました。

本日2話目です。

よろしくお願いします。


やっと60000文字突破しました。少しは読み応えのある小説になってきたでしょうか。

これからも引き続き楽しんで頂けると幸いです。

交渉を有利に始めるために、先手を取る。その為にそこまで興味が無いように見せ、まずはその場を離れる素振りを見せた。コートを翻しわざとコートの下の装備を見せ付けるように。


「ちょっと待ってくれよ。お兄さん。その格好を見るに良いとこの御坊ちゃま。そうだご貴族様でしょう?」


来た!

今は迷宮に入るためグランファ印の装備に換装している。どう見ても一級品の装備で、見た目だけは新人の冒険者じゃぁないよね。


「……」


ポーカーフェイスになっているか自信はないが、YESともNOとも言わずに元締めの男に向き直る。


「そんなに怒んないでおくれよ。なっ?しかし、あのグレーパックウルフはかなり衰弱してるが、なかなかの素材だぜ?」


ジャリン。


先程受け取った。小袋をそのまま机の上に投げ置く。銀貨40枚。

ただのグレーパックウルフの子どもなら相場は銀貨7〜8枚。これだけ弱っていれば3〜4枚が相場だろう。

従魔にしたいならば、子供のうちから育てるために子供の魔物は少し高めの相場が付いている。といってもグレーパックウルフは基本群れで強い個体。野生種ならば個体でも強くなるが、人の手で育てられた群れを作るタイプは、あまり強くならない。この値段で落ち着いているのはそれが原因だろう。


「こちらから頼んだという上乗せ分。グレーパックウルフの相場からなら十分だとおもうけど?こちらも面白いものを見せてもらったしね。そのままそちらにお返しするよ。」


銀貨40枚の入った袋をちらりと確認し、箱の側に待機している手下に目でサインを送る。


「坊ちゃん。わかってると思うが、街中で歩かせる際は従魔の首輪を付けてくれよ。ここで買ってくれるんなら銀貨5枚ですわ。どうします?」


ククっ。どこまでも商売人だな。ポーカーフェイスを貫く筈が、つい苦笑いになっちゃったよ。

従魔である事と同時に、人に危害を加えないようにする従魔の首輪。相場は銀貨2枚だろうに。


「どこまでも利益重視だね。ほら銀貨5枚平気で上乗せするその図太さ分ね」


銀貨20枚で節約しなきゃ明日の暮らしが成り立たない……。なんて思ってたのはつい最近のような気がするけど。

お金の魔力って怖いね。ほんと。でも白狼であるこの子の相場を考えれば端金だんだけどね。


「毎度あり。まぁ知ってると思うが、成りはちいさくても魔物だ。死ななきゃ坊ちゃんが食べた後の残飯でもあげときゃ十分ですぜ」

「おいっ!」


男が合図すると、箱に横たわったままの傷付いた子狼に首輪を取り付ける。

最後にこの従魔の首輪に所有者の血を垂らす事で、所有者登録の完了となる。これで売買は完了だ。


傷付き寝込んでいる子狼を腕に抱き、優しく頭から尻尾の方を撫でる。弱々しい息遣いが聞こえるが、命には別状なさそうだ。ただやはり空腹なのだろう、お腹あたりがへこみ肋骨が少し浮き出ている。


「料理人の名にかけて、君を餓死だけはさせないよ」


手当のために、ジャミーさんの調薬店、ニールさんの精肉店に向かい足りない材料を揃える。

問題は、この子を宿に入れてもらえるかだ。もし入れてもらえないようなら物置でも貸してもらうしかないかな。


「サラムさん!」


宿に戻り、誰もいないカウンターから奥に向けサラムさんを大声で呼ぶ。この時間は厨房で朝食の片付けをしているはずだ。


「どうしたんだい。ユウ。あんた今日は迷宮だ……どうしたんだいその子は?」


腕の中で横たわり、傷だらけでぐったりしている子狼を見つけ、表情が硬くなる。


「すみません。迷宮前の広場で賭けの対象にされていました。グレーパックウルフの子供と説明されましたが、僕には特殊な子狼に思えるんです。だから買い取って保護しました。手当ては部屋でしてもいいでしょうか。もしダメなら物お」


「何言ってんだい。さっさと手当てしてあげな!レムに後からお湯を持っていくように言うよ。それと従魔ならそのサイズなら一緒で構わないよ。さぁさぁさっさと部屋に戻りな」


背中を押され、全て説明することもなく許可を出してくれた。やっぱりここは暖かい場所だ。

お礼を言って、部屋に戻ると1畳程の布を引き大きめのタオルの上に子狼を寝かせる。弱々しい息遣いは相変わらずで、傷からは所々血が出ている。


「まずは、傷の治療と体力の回復だな。まったく転生するんなら回復魔法の一つくらい使えるようにしとけば良かったな」


一瞬、楽な方へと考えがよぎったが、あの村で回復魔法なんて使えた時の人生が全く良い方に想像できない。軽くがぶりを振り余計な邪念を取り払う。


冷静になったところで《どうぐ》から手当の材料を取り出し、手当の準備を進める。


・回復ポーション

・魔力回復ポーション

・一口コンロ

・フライパン

・地鳴鳥のレバー

・地鳴鳥の卵

・オート麦

・キャロ

・ラビエ豚のヒレ


料理を作る前に、深い傷を中心に回復薬を掛け傷を塞いでいく。自分の調薬したポーションの中でも特に上手く出来たものを報酬としていくつか貰っているため、まず足りなくなることはないだろう。

徐々に塞がっていく傷を確認し、短く早い息が少し落ち着いたところでポーションの散布を止める。


「少し待っててな。今助けてやるからな」

そう耳元で囁き、頭をひと撫でするとドアの外から慌ただしい足音が近付いてきた。


コンコン

「ユウさん。レムです。お湯を持ってきました。開けてもらえますか」


ドアを開けるとお湯の入った大きなタライを抱えるレムが立っていた。


「ありがとう。助かったよ」


「いえいえ。大丈夫です。私も手伝わせてください!」


タライを受け取り、治療に戻ろうとしたがレムも手伝いを買って出てくれた。正直人手があるのは助かる。


「有難う。じゃあこのタオルでこの子を拭いてくれない。だいぶ汚れて毛色も灰色になっちゃってるから」


汚れを落とす様にと、綺麗なタオルを差し出すが、レムさんは手を伸ばしながら軽く顔を傾ける。


「はい。……? ユウさんこの子グレーパックウルフの子なんですよね?毛色は元々グレーなんじゃないです?」


グレーパックウルフだというのは、サラムさんから聞いたのだろう。確かにその通りならこの毛色で間違いはない。


「まぁまぁ。洗って見れば分かるかな。よろしくお願いね。レムさん」


「はい。わかりました!あとユウさん私のことはレムで!さんなんかいりません!」


「わかったよレム。じゃあ僕のこともユウでいいよ」


「はっはい ユウ……さん」


レムと呼んだ瞬間。誰が見ても分かるほど、真っ赤に染まり、顔を持っていたタオルに埋めながらユウと呼び最後に小さな声で‘さん’をつけた。照れるレムも可愛いな。


さてここからは気持ちを引き締めていこう。

料理人として、必ずこの子を元気にしてみせる。魔力と血を取り戻し、体力を回復させる料理を


〜子狼用スタミナ&貧血回復オートミール〜

使用包丁:玄亀・陽炎

材料(1食分)

オート麦 30g

地鳴鳥のレバー 50g

地鳴鳥の卵 1個

キャロ 1/2

ラビエ豚のヒレ 50g

魔力ポーション 1瓶


①材料のキャロをみじん切りにする。鉄分を補うためのレバーと、ビタミンを補給するためのラビエ豚のひれを細かく切っておく

②みじん切りにしたキャロをやわらくなるまで茹でる。

③薄めに油を引いたフライパンを熱し、レバーとヒレ肉を軽く炒める。

④ 肉類に軽く色が変わる程度まで火が通ったら、茹でたキャロの水気を取り除きフライパンに入れ、軽く炒める。

⑤フライパンに水の代わりに魔力ポーションを加え、オートミールを入れたらお粥状になるまで煮る。最後に卵を回し入れて、冷めたら完成!


今回も時間の短縮のため、茹でる・煮るの作業は《どうぐ》内で保温と4倍速調理を実施。後ろで一生懸命子狼を綺麗にしているレムに、バレないように出し入れしながら調理した。

レバーで足りなくなった血液を、豚肉で疲労回復、そして完全栄養食の卵でしっかり栄養補給を。


完成したオートミールを器に盛って振り返ると、氷の様に固まったレムがいた。


「ユウさん…この子…」


読んで頂き有難うございます。またブックマーク有難うございます。

よろしければ感想や↓の評価を押して頂けると嬉しいです。


誤字脱字があれば教えてくだい。すぐ訂正いたします。

よろしくお願いします。


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