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14.美味しいレシピは相棒と共に

同時進行で進めていた料理は、芋を使った1品だ。


ゴロポイトという。ジャガイモ風の芋を使った料理。


これに使用する包丁は、陽炎【薄刃庖丁】。

ちなみに名前は、僕が決めたわけではない。


多分あの残念美神ざんねんびじんのおふざけが過ぎた結果だと、僕は思う。


「これウスバカゲロウの駄洒落だよな……。」


初めて葉物を切ろうとして、変化させたこの包丁の名前を見て、少しの憤りとともに突っ込まずにはいられない自分がいた。


この陽炎【薄刃包丁】は、菜切り庖丁とも呼ばれることもある程、野菜を切るのに適した包丁だ。


その名の通り、野菜の繊維を崩さずに刻む、剥く、削ぐなどの繊細な調理をするために刃は非常に薄く鋭く、刃渡りは16.5cmと他の包丁よりも短い。


その切れ味は、トマトの様な野菜をまな板に置き、手を添える事なく透けるほどの薄さに切ることが出来る。


その姿は関西型と呼ばれる鎌形で、関東型のように刃先が四角になっておらず。

細かい細工ができるよう尖っているため、京料理などに見られる人参や、大根などの細工は、この1本の菜切包丁から生み出されている事が多い。


そして片刃の、その刃の他の包丁とは違う一番の特徴は、他の包丁とは違い、刃が反っておらず。

直線で、大根などの桂剥きがしやすい刃型になっている事だろう。


とことんまで野菜を扱うことに特化し、生み出された包丁の姿である。


その包丁で、水に晒し灰汁抜きした。じゃがいものような食材であるゴロポイトの皮を剥き、芽の部分をくり抜く。


〜ゴロポイトのカルトッフェルプッファー風〜

使用包丁:陽炎【薄刃庖丁】

材料(1〜2人前)

ゴロポイト 2個(220gくらい)

オニオル 半分

ネルーツ 1枚

地鳴鳥の卵 1個

小麦粉 大さじ4

塩 少々



①皮を剥いたゴロポテイトを3分の1は細長く千切りに、残りを摩り下ろしにする。こうすることでしっかりと歯ごたえを残すことができる。


②次に玉ねぎの様なオニオルと、ニンニクの様なネルーツをすり下ろし小麦粉+卵+塩を加え、良く混ぜ合わせる

※片栗粉がなさそうなので、今回は小麦粉を代用した。


③植物性の油を少し大目に入れたフライパンに掬い入れ、揚げるように焼く


きつね色に焼き色がついたら取り出し、油を切って出来上がり!


この《料理》スキルの一番有難いのは、手に持った食材を、地球上の食材の何が一番近いかを、感覚で教えてくるようになった所だ。


ちなみにゴロポイトは、まぁ見た目ジャガイモだったから良かったものの、ニンニクとして使ったネルーツは、見た目チューリップの球根のような感じで、薄皮を剥がしたらユリ根という、手に持つまでさっぱり用途がわからなかった。


料理スキルの熟練度が低かった時は、一々食材に《しらべる》で鑑定してたし…食用としか出なかったから、少し不便だったんだよね。


便利になったものだよ。ホント


この仕組みがわかってから、市場で品質を見るついでに食材の使い道を調べ回ったりした。


まだまだ回りきれてなく、少ししか食材は見つけられなかったが、それでも食材が分かる事実に、僕は手放しで喜んだ。


卵に使った地鳴鳥は。所謂ニワトリだった。

決して飛ぶ事は出来ず。野生種は森の中を走り回り、発達した脚と爪で、外的を蹴り殺す習性を持つ。


ラビエ牛や豚と同様、既に繁殖技術は確率され、卵は比較的安価で手に入るが、野生種の卵は非常に高価でら味も濃厚だと、サラムさんが教えてくれた。


ついでに、村で食べていたクワイモは、修行時代に食べたアピオスという『ほど芋』に近い味と食感だと分かった。


おそらく収穫してすぐに食べていたから、甘みも何もなかったんだろな。


あの芋は収穫してから暫く寝かせると程よい甘さになる。


ちなみにクワイモは、スラムや孤児院でこちらでも多く食べられているとの事だった。


この調子でまずは胡椒と大豆を見つけたいと切に思います。はい。


「ありがとさん!ホント助かったよ。まさかユウが料理が出来るだなんてね。お陰で今日は大繁盛さ!お礼と言っちゃなんだけどね。夕飯は今度から厨房のを好きに使って構わないよ。それとこれ」


渡されたのは大銅貨10枚。

ここに泊まっている間は、たまに夜手伝ってくれれば1泊1,000ネルにしてくれると言われ、今回は2日分支払っているので大銅貨10枚を返してくれた。


「ありがとうございます!喜んで手伝います」


勿論二つ返事で了承する。


これで料理の熟練度も上げられるし、宿代も安くなる。 言うことなしの、契約だ。


「あぁ!お陰で今日は食事だけじゃなくエールもワインも完売さ。お陰でよい稼ぎになったよ」


満面の笑みで、今日の売り上げについて語るサラムさんとグッタリと椅子に腰掛けるレムさんだったが、夕食にと先程作った2品を振る舞ったとたん。


2人の反応が凄まじかった。2人ともステーキとして1人600gは食べたんじゃなかろうか。


サラムさんは売り上げの報告を忘れ、ステーキに食らい付き、椅子で項垂れていたレムさんは、冒険者のような豪快さで、ステーキとゴロポイトの料理を、口に運び喉に詰まらせていた。


自分たちにはなかった。調理した食事の美味しさが、しっかりと味わえたみたいだ。


作り方を教え、しっかりマスターしたので、しばらくはこの2品を新メニューとして、やっていくとの事だった。


サラムさんのスキルには、料理はないとの事だったが、食材に差がなくしっかり基本ができていたので、新メニューについては、十分にお客に提供できるレベルの料理を作っていた。


ただ一つわかった事がある。


この料理のスキルの有無での味の差は、調味料の種類と手をかける行程の多さに、比例するみたいだ。


そりゃ肉1枚焼いて、天と地ほどの味の差が出たら怖いよね。


そのかわり、ゴロポイトの方は少し差を感じる出来栄えとなっていた。


今回の料理レシピの公開時、サラムさんより報酬の打診を受けたが、この世界の報酬の基準が分からない。


結局、今回は厨房を自由に使える権利と、営業に差し支えのない範囲での、食材および調味料の無償の使用許可を貰う事となった。


レシピ2つで、この報酬は破格じゃないかと思ったが、サラムさん曰く一般的に調薬や錬金術など、公開されていないレシピの使用許可は、大金を積み教えて貰う価値があるもので、料理レシピも同様の価値が本来はある。との事だった。


僕に甘えるようで申し訳ない、と言うサラムさんだったが、こちらとしては宿としての拠点だけでなく、料理の拠点ができた事は非常に価値がある。


勿論今回のレシピの転売は、禁止にしたが、正直この2人が勝手にレシピを流すとは、考えづらくそこまで気にしていない。


まぁ僕が心配しているのは……。


「サラムさん。レムさんこのレシピはそこまで厳密に隠そうとしているわけではないですが、サラムさんやレムさんが他者に教えるのは辞めてください。そう言う広まり方をしたら、広がるほどに味は落ち、料理の評価が下がってしまいますから……。」


折角美味しい料理は幸せに、そして笑顔になれる事を広げようとしているのに、中途半端に伝わったレシピで、結局いつもと変わらない評価を受けることだけは避けたい。


その事を十分理解してもらい。夕食とレシピの指導の時間は過ぎていった。



厨房の片付けを終え、鞘に収められた包丁を、取り出す。


キラリと輝く刃紋には、肉の血も油も、一切付いていない。まさに新品の包丁だ。


本来、毎日行う研ぎの作業。修行時代も、元相棒を毎日仕事終わりにしっかりと研ぎ、布でくるんで保管していた。


しかしこの相棒である和包丁はベースである十徳包丁【錦】に姿を変えると、常に刃が最高の状態に戻り、汚れもリセットされる。


右手に手にした。神の加護を受けたこの和包丁は、まさにこの世界において最高の相棒だった。


『相棒。今日はありがとう。なかなか使ってあげれなかったけど、今後はようやく使える環境になったよ。村にいた時に、もし見つかっていたら間違いなく取り上げられていたからね』


「これからもよろしく」


ゴロポイト=じゃがいも

オニオル=玉ねぎ

ネルーツ=ニンニク

地鳴鳥=ニワトリ


今回は2品目に挑戦です。

物語の主人公が無償でチート知識を与えるのにどうしても抵抗があります……。


楽しんで頂けましたら

ブックマーク&感想お待ちしております。

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