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10.この街に料理を!


「いらっしゃい。泊まりかい?食事かい?」


ギルドを出て、先程入った門の方に戻ると、すぐに宿は見つかった。


白いの看板に《ナザーレ》と書いてあるその宿は、並びの建物より少し大きめで、宿の前が綺麗に清掃されている印象の良い宿だった。


「泊まりでお願いします。値段によりますが、できれば長期で泊まれたらと」


一般的な布服に、前掛け姿で出迎えてくれたのは、30前後の顔立ちの整った少しふっくらした女性だった。


「なんだい。拠点登録は他でしてないのかい?と言うことは新人さんだね。ようこそ迷宮都市へ私は、《サラム》ここの女主人さ。ここは1泊銀貨2枚朝はパンとスープがついてるよ。そんでもって拠点登録してくれるんならば銀貨1枚大銅貨5枚に夕食に1品サービスだよ」


「よろしくお願いします。ユウといいます。今日冒険者登録したばかりの新人ですが、何故分かったんですか?」


「そうかいユウって言うのかい。よろしくね。簡単な事だよ。冒険者は迷宮に潜るのに、家を借りるか買うか、そして宿に泊まるかしなければならないだろ?」


「はい」


「その拠点をギルドに申告するのさ。たぶん最初の依頼を受ける時に聞かれるはずさ。だからそれを知らない感じのユウは、すぐに新人だと想像できるのさ」


「あぁ。確かにまだ依頼受けてませんね」


成る程。ちゃんと裏付けがあるんだな。


「それでだ。宿を拠点に登録した場合、宿にはギルドから補助が出るのさ。だから安く出来るって寸法さ。まぁここが気に入らなければいつでも拠点は変えられるしね。どうだい?」


「はい。では拠点としてお願いします。まずは3日分でも大丈夫ですか?」


拠点化登録はギルドにとっても、冒険者にとってもメリットがある。


宿屋において、拠点化登録された宿は、予定より2日以上帰宅が遅れている冒険者がいた場合、ギルドに報告する義務を負っている。


そうする事で、いち早く予定外な事が起こっている事を把握され、場合によっては調査依頼が出される。


冒険者も、早期に調査が入る事で、一命を取り留められるケースもあるらしく宿・冒険者・ギルドのwinwinな制度となっている。


でも正直準備もあるし、そんなに前払いで払えない。

これ以上は厳しいかな


「ありがとさん。ただ前払いは今日と明日の2日分でいいよ。その格好じゃ、これから色々揃える必要ありそうだしね」


「ありがとうございます!正直これ以上は厳しいかなって思ってました。じゃあ銀貨3枚です」


「はいよ。じゃあ部屋を……。レムー!お客さんだよー!」


笑顔で銀貨を受け取ったサラムさんが、カウンターの後ろにある鍵を取ったタイミングで、階段の上に向かって大声をあげた。


「お母さん!大声で呼ばなくっても聞こえるよ!もぅ! あっあのようこそナザーレへ、私はここの娘のレムです。よろしくお願いします」


同じ位の年頃の女の子が、少し頬を赤らめて、こちらに挨拶をしてくれた。


母親似の整った顔立ち、少し癖のある茶色い毛色の髪、そして大きく柔らかそうな……。


「あっユウです。よろしく」


一瞬目を奪われそうになったが、ここで残念美神の言葉を思い出す。


女性は視線に敏感……。


「なーに。お互い照れてんだい。そらレム301号室だ。案内しておやり」


お互いぎこちなく階段を登り、案内された部屋は8畳の洋間にベットが1個、その脇に木製のテーブルと椅子。

そして、押し入れ程の収納スペースと、窓が1つある。


社会人になって、最初の賃貸マンションを思い出させるような間取りだった。


「広いですね。明るいし、部屋全体が綺麗だ」


窓を開ければ大通りが見え、明るい日差しが、部屋を明るく照らしている。


そして何よりも、ベットのシーツから床や窓もしっかり清掃が行き届き、部屋全体が清潔だった。


「あり…ありがとうございますっ!あっこちらが鍵です。鍵はこれ1つなので清掃が必要な際は母か私に出かける前に渡してください。基本は部屋には入りません。冒険者さんは貴重な物を置いて出かける事があるので。それと朝は6時から9時まで、夕飯は17時から食堂が閉まる23時まででしたらいつでも大丈夫です。ただ21時以降は食堂が混雑しているのでちょっとお待たせしちゃうかもしれません」


「部屋 私が清掃しているんです。綺麗って言って貰えて嬉しいです」


顔が赤いのはやはり照れているのだろうか。早口で説明した後、軽くお辞儀をして足早に1階に戻ってしまった。


ちょっと失礼して《しらべる》っと。

名前:レム

年齢:14

性別:女

職業:宿屋

スキル:清掃 気絶耐性


あぁ納得…。宿屋に向いてるね。


部屋に入ると荷物を下ろし、ベットに腰掛ける。


そして力を抜き、大きく息を吐き出すとそこには……。


「イケメンだ。。。」


この世界では珍しい黒髪に優しげな瞳整った顔立ち、父親似の兄ジェイトは鋭い目付きに赤髪のイケメンだったが、僕はどうやら母親似らしい。


そう、僕は生まれてはじめて、鏡で自分の顔を見た。。。


生まれて初めての自分の顔を、色んな角度からひとしきり確認したが、自分の行動を冷静に振り返り、若干自分で引いた。


それからは部屋にバックの中身を置いて空にし、明るいうちに買い物へ相場や店の位置を確認。


迷宮探索に必要な物や着替えを雑貨屋・武器防具屋・薬屋・中古服屋・魔道具屋などで揃え、軽食やらを屋台で買い込んでバックと《どうぐ》に入れ、路地を含め歩き回った。


結果、宿屋のある迷宮都市の東側の何割かの地図が完成した。


ちなみに、宿の相場は大衆宿で銀貨3〜4枚

商人が泊まるような宿は5〜8枚

高級宿になると金貨払いになる宿もあった。


流石は紹介された宿だ《ナザーレ》はなかなか良心的な金額設定だった。


そして回ってみて分かった。


「野菜はあるんだよ。元の世界と似たような野菜が同じような名前で。同じような味で!それなのに塩くらいしか調味料が無いってどういう事だ?スープも串焼きも美味しかった。でもこれは素材の味が良いのであって、胡椒も含めたスパイスも入っていないって」


そうこの街(世界)?には、一手間を加えた料理が皆無なんだ。


野菜を刻んだスープ・肉を串に刺して焼いた串焼き・野菜と肉を切って塩で炒めた野菜炒め。


切る焼く 切る煮る 切るこれがメイン。

いやこれしか無い。


そして僕は誓った。


「僕は誓う!この世界に料理を!」


ブックマーク&評価いただきありがとうございます。

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