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魔王の、その後。  作者: 灰猫
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一話

やっちまったな〜(*´•ω•`*)…

 後悔している。ずっと、ずっと。


 思い出すのは数万年前。


 醜い争いを繰り返す人間、亜人。

 己以外の種族を見下し戯れに殺戮を楽しむ魔人。

 試練という暇潰しで無駄な苦しみと破滅を見て愉しむ神々。

 

 世界は暴力と悲劇と呪詛で溢れていた。


 嫌気がさしていた。この世界には救いなどないと諦めていた。弱者は蹲り、強者はそれを踏みつける。野生の獣と差などない。寧ろ知恵があるだけ余計に醜くおぞましかった。


 純粋な力。膨大すぎる魔力。己には力があった。

 そして降り掛かる火の粉を払っていたらいつからか魔王と呼ばれ恐れられていた。


 全ては己のせいにされた。争いが終わらないのは己のせいだ。魔物が溢れているのは己のせいだ。苦しみが終わらないのは、悲劇が終わらないのは、死の連鎖が終わらないのは、全て全て全て……




 勇者と呼ばれる者がいた。唆され、誇張され、都合が良く耳障りのいい事のみを教えられた哀れな異邦人だった。


 その頃の己は全てを諦めていた。

 勇者は言った。お前が居なくなれば世界は争いから解放される、と。世界を滅ぼす悪め、と。

 その勇者の言葉でふと閃いた。


 



 ならば世界を滅ぼせば争いなどなくなるではないか、と。

 




 短絡すぎた。若すぎた。愚かすぎた。

 

 そして今思えばあの頃の己は精神がおかしくなっていたのだろう。

 力は強かったが心までは強くなかったのだ。ただ外側のみが強かっただけの凡人。それが己だ。

 壊れた心はそれが正しいと信じ、そして成し遂げた。……成し遂げてしまった。


 勇者を滅し、国を滅し、世界から命を滅した。

 神々が怒りに降臨した。だがその怒りすら己の方が勝っていた。激戦の末、神々を滅した。


 世界からあらゆる音が消えた。

 争いは無くなった。嘆き、悲劇、怨嗟は消えた。己は正しかったのだと誇った。





 今、己は崩れた城の玉座で座っている。

 周りには物音一つ聴こえず気配も何もない。

 人々の営みも、虫の鳴き声も、草木のさざめく音も何も無い。ただ風が砂を巻き上げるのみだ。

 そしてそれは世界の何処に行っても変わらないのだろう。


 なぜならこの世界で生きているのは己だけなのだから。


 世界を滅ぼしてからこの1万年孤独だった。

 最初はこれで救われた気がした。

 だが数年経ち、数十年経ち、心が徐々に修復され、そして疑問に思う。

 世界を滅ぼして己は何を願っていた、と。

 平和、平穏などは他の生き物がいて出来るものであり、己しかいないこの世界は平和と呼べるのか?日々の生活を営む人のいないこの世界は平穏だと言えるのか?


 これは平穏ではなく虚無というものだ。

 

 それから数百年経ち、数千年経ち、変わらず己以外は何も無い。身体を動かさず、声も出さず、表情すら動かない。座っているだけで目の前に広がる景色を見ているのかも分からない。


 後悔だけが凍ってしまった心の中でずっと閉じ込められ反響し続けている。



 軽い地響き。風化した城が耐えきれずに崩れた。

 それに全く反応せず崩落に巻きこまれた。


 何トン、何万トンの瓦礫が身体に降り注ぐ。

 痛みはない。重さも感じない。

 ただこの場から動いたのは何時ぶりだ?と思っただけだ。動いたのは故意ではなかったが。


 ふと最近になり地響きや地割れ、山の崩壊が多いなと思い出す。

 恐らくこの星すら死にかけているのだろう。


 これで己も終われる。

 不意に浮かんできた言葉に己の本心に気づいた。


 寂しかった。虚しかった。身体は気温の変化などさほど感じないのに心だけがずっと凍えるように寒かった。


 独りは……もう、嫌だ。


 背に触れていた地面が割れた。

 そのまま身を任せて落ちる。


 死に救いを感じた。

 だが同時に不安が湧いてきた。


 死ねるのか?と。


 地割れに呑まれ身体を幾度もすり潰そうとする大地に今の己は傷を負っていない。

 やがて辿り着いた星の中心。灼熱の心臓に己はまだ形を保っている。


 不安が徐々に膨らむ。


 痛くてもいい。苦しくてもいい。

 だから死を。……(救い)を。

 

 全身に衝撃が走った。今迄感じたことの無い程の痛み。視界が真っ赤に染まる。


 星がその命を文字通り散らしたのだ。


 痛い、痛い、痛い。

 痛みを感じるという事は未だ生きているという事だ。


 咄嗟に治癒魔法を唱えようとしたがそれを堪える。


 死ねるのだ。ここで治癒してしまったらまた孤独になる。

 不意に痛みが和らぐ。死が近付いてきたと喜ぶ。


 やがて痛みは消え、救われたと思った。


 




 「…………………………」


 ゆっくりと目を開くとそこは闇。

 いや、闇と言うには白い光点が無数に輝いていた。


 「なん、とも……美しい、な」


 久々に出した声は嗄れてヒビの入った様な音だった。

 

 身体はふわふわと漂い、これが死後の世界かと暫し美しい光景を眺める。


 前方から巨大な岩がゆっくりとこちらへと向かってきた。

 ソレはやがて頭上へ、そして背後へと通り過ぎすの姿を目で追い背後へと振り返る。




 「……………ぁ…」


 背後へと向けた目が見開かれ、声にならない声が口から漏れた。

 そんな、嘘だ、違う、消えた筈の不安が再び膨らむ。


 そんな不安を掻き消そうと必死に否定する。

 

 そんな行為を嘲笑うかのように次に視界に映ったモノに心臓が一際鼓動を加速させる。



 そこに漂っていたのはヒビの入った剣だった。



 やめろ、考えるな、見るな、やめろ、頼む……やめてくれ……


 

 嫌な考えが浮かび、それが徐々に固まり形を造っていく。

 

 折れた剣。かつて己が使い、無数の命を斬り裂いた愛剣。吸った命の数だけ紅くなった刀身はヒビ割れてもその美しさとおぞましさは微塵も薄れていない。


 愛剣に似た剣が漂い、視線を逸らすことが出来ずにそれを追ってしまう


 やがて刀身の表面が正面まで移動してきた。

 震える手で柄を握ろうとして指が装飾の鍔に当たり刀身が横に倒れる。


 「ぁ……ぁぁ………ぁぁぁァァァ“ア“……」


 視界に映る光景が愛剣に切り裂かれる。

 球状に散らばる大小の岩、その中心に微かに残る血の様に紅い光る液体の様なモノ。


 緩やかだった予感が急速に加速し、そして形が造られそして悟る。



 アレは………己がいた星だ………



 「ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ“ア“ぁあァア“ァアァ“アァァァァァアア“ッッッッッッッ!!!!!!!!!!」



 希望が砕かれた。

 頭を抱え口から叫びが上がる。



 

 己は―――――救われなかった――――

 


 



やっちまったよ………(´;ω;`)

いきなり題名から誤字る暴挙。

魔力の、その後……魔王です。魔王の、その後です。ごめんなさい(´;ω;`)

※修正済です

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