安いレストラン
どこにでもある
安いイタリアンレストラン
透明なドアを開けた男は
ウエイトレスと一言の会話をして
窓際の席についた
窓の外はどこにでもある大通り
無表情でメニューに目を通し
幾つかの注文を済ませると
窓の外を見つめる
大通りには車がひっきりなしに走り
歩道には人々が歩く
何もない時間が少しだけ流れると
ウエイトレスが料理をテーブルに並べた
皿に盛られた幾つかの料理は
みんな違った色をしていて
まるで料理を色合いで選んだように見える
1人ぼっちだけど
小さなパーティのような不思議な光景を
男のマナーのなってない食べ方が崩す
雑に口に放り込み
ただ無表情に食べながら
男は窓の外を見つめていた
すべてを食べきると
男はテーブルの皿を少しだけ横にずらし
隅に置かれた灰皿を自分の前に置く
そしてポケットに手を入れた時
隣の席に親子連れが座った
チラリと隣の席に目を向けた男の表情は
少しだけ穏やかな雰囲気
そしてすぐに席を立つと会計を済まし
ウエイトレスに
「ごちそうさま」
それだけ伝えて店を後にした
大通りの前で男は
背中を丸めて煙草に火をつける
そしてさっきまで見ていた大通りの歩道を
無表情に歩き始めた