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デスマッチ  作者:
3/18

◇3

「死神使いです」


 來亜という少女はそう言うと、右手の指を鳴らした。その瞬間、恭平が周りを見る間もなく、それは起きた。

 黒い無数の影が、じわりじわりと彼の周りを取り囲む。その影たちは、ゆっくりと恭平の足に絡みつき、徐々に上に上っていく。

「な…何だよ!これ!!」

 そう叫ぶのがやっとだった。

 冷たい影は、どんどん彼を取り込んでいく。

「死神ってね、人間が好きなの。特に、若い男は栄養価が高い」

 その目つきは、もはや少女ではない。

 

 悪魔だ。


「安心して。死なんてみんな通る道。それが人より遅いか速いかの違いよ☆」

 笑顔でなんてことを言うんだ。

「俺は、死ぬのか?」

「イエス☆」

 無邪気に笑う來亜。

 けれど、このありえない状況において、恭平の脳は冷静さを取り戻す。我慢ばかりの人生、この先も楽しいことなんてないに等しいだろう。赤の他人のような親戚、何となく付き合っている友達、担任、誰も自分が死んだって悲しまない。

 だったら、いっそのこと死んだ方がましだろう?

 恭平の中で、誰かがそう言った。

 それに、同意する自分がいる。そうだよ、やり残したことなんて何一つない。やりたいことだって、ない。

 こんな人生、早めに切り上げてしまった方が楽…。


 本当に?


 本当にそれでいいのか?


 恭平の脳裏に浮かんだのは、菜緒子だ。

 菜緒子ちゃん…そうだ、唯一やり残したことがあるとするなら、せめて一度くらい、恥じも外聞も捨てて、彼女に好きだって言いたかった。

 うん、それももうできない…。


「七の札、解除を命ずる」

 意識が遠のいていく中で、恭平の耳にはっきりと聞こえた声。

 その声に、我に返った。

「現れたわね…おせっかい女!」

 來亜の眉間に皺が寄る。

「君は…」

 矢藤御さん…。

「彼にはまだやりたいことがあるみたいだから、悪いけど貴方の餌にはさせないわ」

「あんたって本当、いい時に現れるわよねぇ。正義のヒーロー気取り?」

 かすれる恭平の視界には、巨大な鎌を持った楓がはっきりと映った。

「まぢムカつく。いい加減、あの世に還りなさいよね!」

 來亜の手にも刀のように、先が鋭く尖った武器が姿を現す。

「何とでも言いなさいよ。彼が死にたくないって思ったから来ただけよ」

 恭平の身体から、黒い影が消えていく。

 よく見ると、楓が持っていた鎌が黒影を刺している。

「恭平君、死にたくない?」

 その涼しげな目。この状況でも変わらず。

「死にたく…ないです!」

 それを聞いた楓が、微笑んだ。

「高いわよ?」

 え?

 聞き返す間もなく、恭平の前に風が巻き起こる。

 鎌を持った楓は地面を蹴り、悠々と座っていた來亜の前まで飛ぶ。

「ちっ!!」

 後ろに飛び退く來亜。そのあまりの速さに、目で追うことさえできない。

「デスマッチは久々です。でもその前に、答えてくれます?死神使いは、あと何人下界にいます?」

 來亜は笑った。

「さぁ?何人でしょうか?!当ててごらいなさいよ!!」持っていた凶器を、楓目がけて投げる。

 反応が一瞬遅れていたら、串刺しだ。

「答えてくれないのなら、言わせるまでです」

 楓が鎌を振り上げる。

「七の札、電光石火っ」

 投げた札目がけて鎌を振り落とすと、物凄い光りの閃光が來亜を襲う。

「クソッ!」

 閃光が來亜を身体に巻きつく。

「さぁ、吐きなさい」

 その痛みは、來亜の叫び声を聞けば分かる。

 恭平は、思わず目を背けた。

「わた…しは…あんたが苦しむ姿を…見るまで…絶対に…死なないわ!!!」

 空が光る。

 

 世界が、終わったと思った。



「気がつかれましたか?」

 視界に飛び込んできたのは、楓だ。

「わ!!」

 驚くのも無理はない。人間かどうかも怪しい彼女を前にして、冷静にいられるわけがない。

「ち、近寄るな!!」

「新鮮な反応ですね」

 笑顔を絶やさない楓。

 動揺する恭平。

「けど、支払いはちゃんとしていただかないと」

「…し、支払い?」

 恭平の手の中に楓が入れた紙切れ。


 退治料金、三十万。


「へ?」

「死ぬかもしれなかったんです。安いもんでしょ?」

 この人もまた、笑顔でなんてことを…。

「…っていうか!君何者?!さっきのは、何なの?」



「死神退治屋です」

 


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