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8. 歳月
夏から秋に季節が移り変わり、オンジだけが黒石を沢山もって帰ってきた。
タカヤは若衆から猟や山の事を色々教わって、どんどん強くなって旅をしていた、とオンジは伝えた。
父母は遠い空の息子を思い、ほほえんだ。
そして、二年たっても三年たってもタカヤは帰って来なかった。
四年目にクマノの方角から、ヤマト軍が攻めてきた。
五瀬の弟の伊波礼が大王となっていた。
長脛の民は雄々しく戦ったが、敗北し、征服された。
ヤマト王朝は帚星の丘に城を建て、マキムクの盆地に町を築いた。
かつてのオロチを恐れたのか、ヤマトの大王はミワの山に社を建て、蛇神を奉った。
それから二十年の歳月が過ぎたが、タカヤもウーも、帚星の丘に帰って来ない。