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訓練という名の日課

月に1話だとあまりにもアレなので今回は3話上げました。

 昼食が終わってから午後の訓練に戻る。訓練とは言ってもほとんどが筋トレみたいなものだ。


「色々やんの面倒だから3時間耐久走り込みでいいよな」

「僕が死にます」

「死にゃしねえだろ、いくぞー」


 間違えてた、筋トレじゃない。

 僕の意見は無視され合図とともに足を動かし始める。マラソンの選手でもないのにこれはキツイ。

 なにがキツイってこれ3時間全力で走らないと多分この人たちには追いつけない。


「無理しないで辛くなったら言ってくださいね」

「あ、はい」


 アンナさんが優しいこと言ってくれるけどこれでもこの女の人たちのメニューなんだよなあ。僕男なんだけど、ついていけるかなあ。

 ……情けない。






 〜〜1時間後〜〜


「す、水分補給とかないんですか?」

「あると思うか?」

「死に、ますよ?」

「死にゃしねえよ、まだ2周目だぞ」

「死にますって……」


 走り過ぎて頭が痛くなってきた。でも前を走ってる三人はいたって涼しい顔をしている。

 それでも、僕の体力がないわけじゃないと言っておきたい。

 僕たちが走っているのは基地の施設外周。つまりグラウンドや駐車場などを含めた施設の外なのだ。しかもそこかしこに空き地や森なんかもある広さなのでその距離は考えたくないほどにある。

 1時間で一周できただけでも十分おかしな距離だ。


「だ、大丈夫ですか?」

「あまり……」


 少し距離を詰めてアンナさんが声をかけてくれる。

 それはいいんだけど、こんなにペースを崩そうが疲れの色のない顔をしているアンナさんにびっくりする。


「走りながら話ができるとは、まだまだ余裕ですね。リカ、ペース上げましょう」

「ちょっ!?リーシェさん!」

「オケー」


 一番前にいるリカさんがリーシェさんの言葉を聞いて加速する。


「ほんとに、死ねます……」






 〜〜2時間後〜〜


「このペースだとあと一周が限度かな?」

「そうですね」


 基地の入り口に立ってボトルを煽るリカさんと、その隣に立つリーシェさん。

 なにを話してるのかはよく聞こえないがもはや棒になりかけた足を動かしてそこへ向かう。


「あれ、水分補給あるんですか?」

「さすがにないと無理だろ」

「でもさっき……」

「ありゃ冗談ジョークだよ」

「笑えない……」


 と言いながらも、やはり水が欲しいので用意されているボトルに手を伸ばす。


「なんか生まれたての子鹿みたいだな」

「明日動けないです」

「そんときゃ引き摺ってくよ、アンナが」

「なんで私ですか!?そういうのはリカの方が似合うでしょ」

「そこ似合う似合わないの問題ですかね?」


 基地の塀にもたれかかりながら話をする。他の三人はそんなことせずともしっかり立てているから恐ろしい。

 視線を下ろし自分の膝が大笑いしてるのを見るとまた走れるのか不安になってくる。

 笑う膝を見てたら自分も少し笑いそうになってしまった時だった。


「つかよー、クムラよくついてこれたな」


 リカさんが疑問の意を込めて声をかけてくる。


「そうですね、自分でも不思議です」

「いやいやそれもそうだが、そうじゃなくてな」

「?」


 言わんとしてることがよくわからない。とりあえず次の言葉を待つことにした。

 そしてそれはそう待たずとも聞けた。


「アタシは成績ドベを入れたつもりなんだが。お前普通に足は早い方だし、スタミナはあるし、普通に成績だってそこそこいけただろ?なのに成績表ではそこもかんばしくなかった」

「確かにそれは気になりますねぇ」

「……」


 意外と鋭い指摘にリーシェさんが乗っかる。


「ま、話したくなかったらそれでいいよ。さすがにそういうのは無理に聞かねえから安心しな」


 少し顔に出てしまったか、それを汲んでくれたようでなにも聞かれなかった。


「いや、カッコよく言ってますけどそれは当たり前でしょう」

「アンナちゃんよぉ、人がせっかくキメてるのに茶々入れないでよ」

「本当にアンナは空気が読めませんねぇ」

「私?悪いの私ですか?」


 そしてスグにこの調子に戻るのだった。


「クムラはもう無理そうだから休んでな。もう一周いくぞー」

「え?僕……」


 リカさんが唐突に言い出して走り出した。本当に急だ。

 休めとは言われたけどさすがに申し訳ないので付いて行こうと背中を塀から離そうとする。けど足が言うことをきいてくれなくて動けなかった。

 さっきよりも、足に力が入らなくなっていた。


「ゆっくりおやすみくださいな」

「お、お大事に」


 リーシェさんとアンナさんもパタパタと駆けて行ってしまった。


「……」


 その場にポツンと残されて、ついにはへたり込んだ。


「……情けない」


 仰向けに、大の字に寝転んで呟いた。

「あれ?寝てる?」

「疲れたんでしょうね」

「そりゃあれだけ走らされれば普通は疲れますよ」

「しゃあねえ、引き摺ってくか、アンナが」

「いやです。せめて担ぎます」

「ならそれでもいいから持ってっといて」

「よろしくお願いしますね」




「ええー……」

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