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バランスの良い食事を、軍だからな

 大きな食堂の一角に僕は座っていた。ちょうど食堂全体が見渡せるような場所だ。

 こうやって改めて見ると男女比が6:4ってところか。最近はむしろ女の人の方が強いって聞くし、世相の反映みたいなものかな。

 全然関係ない軍と世間をつなげ合わせながら、パンをちぎって口に入れる。

 今日の献立はパンと知らない野菜のサラダと鶏肉のソテー、かな?ポタージュスープも付いている。

 ここの料理は美味しいので苦もなく残さずに食べることができる。


「……」


 ……はい、ぼっち飯です。食事時間は自由時間とほぼ同義だからと前の隊のメンバーを探したのだけれど全く見つからなかったので隅っこで食べている。

 ついこないだまではああいう風にワイワイやってたんだなぁ、と3つ程離れたテーブルの人たちを眺める。


「ふぅ……」


 ため息が出てしまった。今いる隊も騒がしいけど、やっぱり女の人たちだからどこかどうしよもがなく噛み合わなくなるところがあると思っていたけど、改めて一人を実感するとそれが単なる思い込みであって欲しいと思った。


「隣いいですか?」

「っ!……はい」


 見上げるとエリクさんがお盆を持ってそこにいた。少し驚きながらも返事をして、何事もなかったかのようにスプーンを手に取る。

 なんでこんなお偉いさんが食堂に?なんでこんな広い食堂でわざわざ僕の隣に?いろんなことが頭の中で踊る。

 僕がそんなことを考えたる間にエリクさんは食事を食べ始めていた。


「驚きましたか?すいませんね。就任したばかりですからこの基地の内情把握に、とここに来たのですが。すると少し寂しそうな目をしていた貴方を見かけたので声をかけたんです」

「は、はあ」


 考えてたこと全部言われた。全てを言い当てられて驚いているとエリクさんはクスリと笑った。


「クムラさんは自分で思っているより顔に出る人、なんですよ」

「はえ、あ……そう、ですか。……なんで僕の名前?」


 また言い当てられたことと、名前を言われたことに驚いて口が頭についていかなかった。けど、一応聞き返すことはできた。


「一応就任するからと名簿を暗記しました」

「え!この基地だけで450人はいるんですよ?」

「そうですね、でも覚えました」


 一々驚く僕を尻目に淡々と食事を続けるエリクさん。

 格の違う、とはこのことか。多分この人はとんでもない系の人だろうと最近の出来事からすんなりと推察してしまう僕の頭も、そうとうヤられているのだろう。


「貴方は思った以上に愉快な方だ」

「あ、それ最近も言われました」


 クスと笑うエリクさん。どこか人をからかうようなその笑顔も最近よく見る顔に似ている。


「実を言うと気になっていたんですよ、クムラさんのこと」

「と言いますと?」


 唐突な氣になる発言に思わず聞き返してしまった。


「『戦場の女神群』と名高い第07小隊に入ったその……」

「成績最悪者」

「すいません。……そう聞いていたものですから」

「まあ気にするなって言うのが難しいですよね」

「……すいません」


 エリクさんは申し訳なさそうにしてくれるが僕は全く気にしていない。


「でも話すと普通の人とわかりました」

「それは良かった」


 僕はとっくにご飯を食べ終えているがエリクさんの話に付き合うために席を離れない。

 話の内容が誰あろう僕の話だからだ。


「どうです?『アンラッキー7』は?」

「それも知ってましたか。概ね良好、って言いたいんですけどね」


 イタズラっぽくエリクさんは笑った。それから僕は配属1日で思い知ったことを話した。

 アンナさんが真面目だけどイジられキャラだとか。

 リカさんはからかい好きな愉快な人だとか。

 リーシェさんはいつもニコニコだけど実は一番怖いかもしれないこととか。


「……なるほど、聞いた話では上手くやれてるみたいですね」

「そうですか?」

「ええ、07小隊にはボクの知り合いが一人いますから」

「そうだったんですか」


 だから第07小隊を気にかけていたのか、と納得した。と、同時にその知り合いが誰か気になる。


「ちなみに、それが誰かとか……?」

「それは追い追いわかると思いますよ」


 またもイタズラっぽく笑うエリクさん。答えは自分で見つけろってことらしい。


「お、エリクじゃん。クムラもいるな、何してんだ?二人揃って」


 ふいにかけられた声で全てが台無しになった気がする。


「普通にお昼です。食堂ですから」

「なんだ刺々しいな。アタシなにかしたか?」

「いえなにも」


 多分エリクさんの知り合いってリカさんだ。だって知り合いっぽく名前呼んでたもん。さっき凄くキメてたエリクさんが少し可哀想になるくらいのタイミングばっちしだったもん。


「いや〜しかし二人が知り合いとはね〜。エリク、あれは言ったか?」

「まだだよ」

「なんで言ってないんだ?」

「リカだって言ってないくせに」


 今度は僕を置いてけぼりに話し出す二人。それなりに仲が良いらしく、“あれ”で会話が成り立つようだ。


「まあいい、なら今言っとこう」

「なにをですか?」

「今朝言ってたアタシの婚約者な、エリクなんだよ」

「そうなんだよ」

「え、と……はい」


 生返事を返せただけ良くできた方だと思う。

 イタズラっぽく笑う二人が僕を見てくる。

 二人が婚約関係?そりゃ仲がいいわけだ。“あれ“で話が通じてしまうわけだ。


「思った以上に驚かないな」

「そうかな?これは驚いたさらに上の上ってところじゃないかな」

「声も出ない、ってやつか」


 固まっている僕を見て冷静に議論をする二人。なんとなくこうあるのも納得できた気がする。


「クムラよ、これリーシェには言っていいけどアンナには内緒な」

「……なんでです?」


 立ち直った僕の質問を聞いてリカさんはニヤリと笑う。そしてこう言った


「面白いからだよ」

ある程度予想できたこと。


ヒエラルキー

リカ・エリク

リーシェ

アンナ

クムラ


閲覧ありがとうございます

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