吸血鬼と人間
第一章
世界には、2つの存在が存在する。
一つは、人間。そして、もう一つは、人間をはるかに上回る力を持ち、神秘的な力、神威という力を持つ者
___吸血鬼が存在する。
世界の人口の3分の2以上は、吸血鬼。人間は、半分にも満たない3分の1。
吸血鬼の人口は、増え、人間の人口は、減っていった。人は、本能的に吸血鬼を恐れていたからだ。
西、いや、北西の大きな大陸アステアル大陸。大陸のほとんどの人口は、吸血鬼。東、いや、南東の大陸、間には、海洋。イスベ海があり、北西のアステアル大陸より、小さい大陸システリアル大陸は、ほとんどが人間だ。人は、本能的に吸血鬼を恐れ、東にながれていったからだ。
それから、両者の間、人間と吸血鬼の間には、互いにあまり干渉しない条約「交互不干渉条約」を結んだ。だが、ごく一部の人間、吸血鬼も陰で不服に思っている者もいた。
アステアル大陸の中心部のセントラルエリアにそびえ立つ家、外見的には、大きな神殿とも云える白色を基調とした屋敷だ。
シュテル家。吸血鬼の7代家門の一つの家門であり、吸血鬼を束ねる王<ロード>の家門である。その応接間に、一人の女性がいた。長髪のストレート・うすい水色がかった銀髪、光が反射するような艶やかな銀色の髪だ。真っ白な肌。神秘的な少し暗く深みのある青みがかった碧眼。すっきりとした体格、誰よりも高い美貌を持ち、その瞳は優しい瞳を持ち内には強い深みがあります。
女性は、ソファーに静かに座っていた。
-久しぶりですね。約2年くらいかな、私も昨年で20歳になりましたか。なんだか懐かしい感じです-
ガチャ、
「待たせてしまって、ごめんなさい。」
一人の女性が入ってきた。赤い長髪の女性だ。
「いえ、大丈夫です。お久しぶりです伯母様。」
「お久しぶり。ラフィアさん、今日は、えっと、書類のほうでしたね。」
「はい。理事長から頼まれた書類を持ってきました。」
「あの人、元気にしている?」
「ええ、よろしくと言っていました。」
「王立第一学園の理事長ね。ほんっと、自分で持ってくればいいのにね。私としては、久しぶりに顏くらい見たいんだけどね。」
「理事長は、今日、お客様とお会われになるそうですので。」
「お客様?」
「はい。私もまだ詳しくは存じ上げていません。」
「そう、あ、、、ごめんなさい。書類でしたね。」
「いえ、書類は、交流クラス対抗戦についての書類です。」
「確か、クラス代表選手の五対五でしたね。女子2組男子3組の。」
「はい、理事長が一応その申請書をと。」
「わかりました。ラフィアさんとアスカも出るのよね。去年と同じく?」
「はい。アスカも出ますよ。」
「そう。それにしてもあの人もよくやるわね。まあ、ラフィアさんとアスカでクラスは、2勝確定なんじゃない?」
「う~ん、まだ決まってませんし」
「そう、まあ、がんばってね。アスカのこともよろしくね!」
女性は、和やかにそう言い、ラフィアは、静かに席を立ち、
「はい、それでは、失礼します」
と礼儀よく言い、応接間を後にした。
ラフィアは、応接間を後にし、廊下へ出た。廊下を進んで右に曲がり、さらに進み、庭へ出た。そこに、腰をかけて座っている、オレンジ色の髪の少年のところへ歩んだ。少年は。赤い瞳をし、目は、強い意志を感じさせる目している。外見は、筋肉質だが、服は着やせするタイプだろう。
「アスカ。ここにいたのですか?」
少年、アスカは、ラフィアが近づいたのに反応し、彼女のほうを向いた。
「ラフィア、来ていたのか。」
「ええ。さっき、伯母様に理事長から預かっていた書類を渡したの。」
「ああ、クラス対抗戦のやつか。あれに、何か意味があるのか、理事長の考えはわからないな。」
「さあ、私もわからないわ。去年は、全勝して、私達シルクフラワーのクラスが勝ったし、それに私達のクラスともう一つのクラス、ツユクサは、そもそも違うし。」
アスカは、頷きながら
「ああ、シルクフラワーは、身分が高いもの。特に7代家門もいるしな。」
「私のところのサティスファーナ家とアスカのところのシュテル家、そして、アルギレフ家。また、ほかに7代家門ではないけど、身分が高いものがいる。」
「ツユクサは、そういうのではないしな。」
「うん。それにアスカがいるしね。光のシュテル家の。」
それを聞いたアスカは、ため息交じりに
「それを言うなら、ラフィアのところもだろ。」
「う~ん、そうなるか。」
「7代家門。吸血鬼の七つの家。火のアルギレフ家、水のバレイシア家、雷イクナート家、風ザハール家、地クライン家、そして、ラフィアのサティスファーナ家とオレのシュテル家。7代属性を代表する家門だ」
「うん。7代家門が操る七属性の神威<カムイ>は、最も強い。」
「ああ、さらにその家門に伝わる技もあるしな。」
「それを差し引いても、理事長がなぜ対抗戦をするか分からないな。」
「理事長は、たぶん身分の違いでもやれると思えるようにしたいんだよ。」
「だが、それが逆効果になっていると思うぞ。」
「そうだね。」
少し声を低くして、ラフィアが言った。
「何を考えているんだか。」
と言い、アスカは、立ち上がった。そして、そろそろ、と言い
「そこまで送ろうか。」
「うん。ありがと」
2人は、そのまま庭を後にした。
日が照っている。海の上に浮いている。イスベ海だ。吸血鬼がいるアステアル大陸の東、そして、人間が暮らしているシステリアル大陸の西、二つの大陸の中心にある海だ。
イスベ海に浮いているのは、船。アステアル大陸のイツマ湾近くの経済フロント区の港に向かっている船だ。その乗客室に数名の乗客がいた。
少年は、ついさっきまで、寝ていた。黒い髪をしていて、瞳は、深みのある緑色の瞳をしている。目は、パッチリとしていて、少し幼さが残っている。外見も、太ってもいないし、痩せてもいない、髪型も極めてふつうだ。ふつうの17歳の少年だ。少年は、寝ていたとき、昨日のことを夢で思い出していた。
システリア大陸の西側、シリア地方の港に少年は、二人で来ていた。もう一人は、その少年の師匠だ。
二人は、船の出航を待っていた。なぜ、と言うと数時間前に遡る。
少年は、師匠に呼ばれ、師匠の部屋に訪れていた。少年は、師匠と対面になるように座っている。
師匠は、髪の長い茶髪の男性だ。片目は髪がかかっていて見えない。
「カズキ。」
「はい、クロス師匠。」
少年は、返事をした。そう、少年の名前は、アイザワ・カズキと言い、少年カズキの師匠の名は、クロス・シュトレングスと言う。カズキは、今日、なぜ呼ばれたか知らないし、心当たりもない。
-何かしてしまったかな?う~ん、まったく心当たりがないな-
クロスが、突然、静まり、沈黙した、と思いきやさっそうと
「カズキ、明日に向こうに行け。アステアル大陸に。」
と言い、カズキは、自分の耳を疑った、
「えっ。」
いや、覚悟はしていた。1年前から
-とうとうやってきたのか。このときが-
「これまで、お前のことを隠してきたが、これからは、さらに、厳しくなる。たぶん、無理だろう。」
「えっと、たぶん?」
「いや、もう無理だ。向こうに知り合いがいるから、紹介しておいた。明日の午後には、そこに行ってくれ。」
クロスは、厳しい面影と言うわけでもなく、すらすらと言う。
「いや、急すぎませんか。」
「急じゃないだろう。おまえも、いつかこうなるとわかっていた。それが、今日だったと言うことだ。おまえは、人間だったが、もうほとんどが吸血鬼だ。神威<カムイ>の放出を俺の力を使って、術式を発動して止めているおかげで人間と認識されているが、時間の問題だ。確認するが、お前の首にかけている十字架のペンダントを取ると神威<カムイ>が通常に放出し、吸血鬼と簡単にばれるだろう。人間は、吸血鬼を恐れているしな。まあ、それに、向こうの知り合いもお前に会いたがっているしな。」
「向こうの知り合い?」
「ああ、経済フロント区に設立している、王立第一学園の理事長をしている。話しは、もう通してある。」
「学園の理事長って、師匠そんな人と知り合いだったんですか。」
カズキは、少し詰め寄っていった。当のクロスは、平然としている。
-本っ当、いろんな知り合いがいるな-
「だから、今から準備しろ。」
「はい、、、、師匠、今まで、お世話になりました。」
カズキは、頭を下げて言った。
「ふん。ああ、俺は、もう行くぞ。」
と言い、立ち上がった。
「えっ?」
「用事がある。後は、一人で言ってこい。」
「あの、見送りは?」
「お前は、子供か、」
「あ、ああ。はい。それじゃ、行ってきます。」
カズキは、立ち上がりながら、
「普通、見送りくらいするだろう。」
と口走った。 ここは、船の中だ。アステアル大陸とシステリアル大陸のちょうど中心に存在する、イスベ海にいる。カズキは、今、師匠の言葉通りアステアル大陸にあり、イツマ湾の右側に存在している、経済フロント区をめざし、海を渡っている。船は、正直に言うと、小さい、乗客も数人程度だ。むしろ、人間が吸血鬼の大陸に行くのは、めずらしいだろう。
-まあ、と言っても、経済フロント区は、唯一の少数の人間が出入りすることができる場所だからな。-
経済フロント区は、唯一、人間が出入りできる。簡単に言うと貿易、商売などを行う人だ。それにともない、システアル大陸の北側に位置するイリア地方の港も、極僅かな吸血鬼が出入りしている。
「はあ、吸血鬼になっちゃったしな」
カズキは、言うなり、右手を自分の胸にあてた。
鼓動が聞こえる。
-オレは、この心臓のおかげで生きていられる。でも、吸血鬼になるとは、思わなかったな。-
ふぅ、カズキは苦笑交じりに微笑んだ。
「まあ、あの人のおかげか。」
正直、これからどうなるかわからない。でも、向こうでやっていかなければいけないんだ。
その時、突然
ゴォォッー
船がなにかにぶつかった音がした。その瞬間、船内が大きく揺れた。
「なんだ?」
カズキは、窓から外を見た。大き目の岩がちょうど船の先端にあたっていた。そして、船の近くには、この船より、少し小さい、もう一隻の船があった。そこから、二人の人影がこちらの船に飛び移ってきた。見間違いするはずもない。あの、人間ばなれした脚力。そして、たぶん、俺だから感じることができる神威<カムイ>。間違いない。
-吸血鬼だ。この船を奪う気か-
二人の吸血鬼は、船に飛び移ると、辺りを見渡した。
「アニキ、ホント人間ごときが、よく俺たちの縄張りに来れますね~。」
「ふん、愚かな人間ごときがな。」
アニキと、呼ばれた身長が高く、目が鋭い、男は、前方に現れた船員二人に向かって、右腕を一線、横にいきよいよく振った。そこから、大きな力が現れ、風の斬撃となり、船員二人を吹き飛ばした。
「うあぁぁ」
二人は、うめき声を上げながら、吹き飛ばされていった。目が鋭い男は、表情を変えず、もう一人の坊主みたいな髪型をしている小太りの男のほうを向き、たんたんと。
「さっさと、向こうへ行ってこい」
「へい~」
小太りの男は、そのまま歩いて、船内に入っていった。
カズキは、船内の窓から長身の男が、神威<カムイ>の力を使い、七代属性の一つの風を操り、船員二人を吹き飛ばした姿を見ていた。
「ちぃ、何者なんだあいつら。この船は、吸血鬼からも許可が下りている船なんじゃないのか。」
苛立ち気に言いながら、もう一人の小太りの男が船内に入ってきた姿を目撃した。船内の数名の乗客は、さっきまで、騒いだり、叫んでいたりしたが、小太りの男が入ってくるなり恐怖で怯え、客室の端に震えながら縮こまっている。小太りの男は、入ってくるや乗客用のソファーを片手で持ち上げ、乗客のほうへ投げた。
「うあぁあ~」
驚いた乗客達は、叫びながら、怯えていた。男は、満足そうにして
「この船は、俺たちの物だ。そして、貴様らも死にたくなければ言われた通りにしろ。まあ、一人、二人殺してもかまわないか?」
男は、楽しそうに言った。そんな男に、一人の老人が近づきながら言う。
「やめてください。この船は、許可が下りている船ですよ。それに、交互不干渉条約で互いにあまり干渉しないんではないんですか。」
老人は、この船の船員なのだろう。しかし、男は、老人の首もとを掴み投げ飛ばした。
「はあぁぁー。人間ごときが俺様に盾突いているんじゃね~よ~。」
老人は、壁にぶつかり倒れた。
「大丈夫ですか。」
カズキは、声をかけるが返事はない。意識を失っているようだ。カズキは、歯噛みしながら睨む。
-あいつ。ゆるさない-
「あぁぁ~ん」
男は、睨みつけているカズキのほうへ行った。
「なに、睨みつけてんだ。」
男は、カズキを睨めつけながら、カズキの真横に左腕をのばし、手のひらを向けた。そこから。丸い小さな球体のような力の塊が、一つでき、それが飛んでいき、壁にぶつかり爆発した。
-発だ。神威<カムイ>を凝縮し、込めた小さな丸い力の塊だ。-
カズキは、どうするか迷っていた。しかし、先ほどのこの男の行動で決まっていた。
「てめぇも、あんなふうになりたいのか。」
男は、得意げに言う。しかし、カズキは、静まりかえっていた。
「ふん、ビビったか。」
ドン、カズキは、行きよいよく飛び出し男の腹を右手ストレートで殴った。男は、一瞬驚いていたが、
「ふん、人間ごときが俺を傷つけられると思ったか」
男は、笑っていた。しかし、次の瞬間、男は、顔色を変えた。
-近接術・波術-
「おまぇ、、」
最後まで言えなかった。男は、行きよいよく吹き飛び、船内のガラスを割り、外へ落ちて行った。
波術、敵の体内に神威<カムイ>を注ぎ込み、それを操る技、破壊する技だ。
乗客室は、唖然として、乗客は、カズキを見ていた。神威を使ったが、まだ、師匠が施した術式が生きている。まだ、吸血鬼としては、ばれていないが、さすがに今のを見たのであれば、唖然とするだろう。
カズキは、正直、困っていた。
-さすが、なんと説明すればいいか。わからないな。どうしよう。-
その時、サイレンが聞こえてきた。船員が、救難信号を送っていたのだろう。さっきの男は、戻ってくる気配はない。しかし、倒せては、いないだろうな。カズキは、そう思いにふけっていると、一人の男性が入ってきた。メガネをかけている、優しそうな面持ちがある人だ。
「我々は、吸血鬼の犯罪防止機関のコムイと言うものです。もう、賊は、逃げて行き来ました。なので、心配しないでください。」
優しそうな男・コムイが言うや乗客は、安心しきった。コムイは、カズキのほうへ向かい、
「さっきのは、君だね。名前は、何だい。」
カズキは、仕方なく、状況が状況なので言うことにした。
「アイザワ・カズキと言います。」
コムイは、少し驚いて、聞き返した。
「アイザワ・カズキなのかい?」
-なんだ、俺のことを知っているのか、なぜ-
疑問に思っているカズキに、コムイは、
「私は、アルシュナさんの知り合いで唯一、君のことを聞かされているんだ。」
-アルシュナって、確か、師匠が言ってた-
「あっ。」
コムイは、微笑みながら
「ようこそ、アイザワ・カズキくん、ここからは、私が学園まで送るよ」
「え、ありがとうございます。」
カズキは、コムイが伸ばした手に自分も伸ばし、握手した。
数分前。
身長が高く、長身で目が鋭い、男、ジェジンは、ガラスを割って降ってきた、小太りの男、イーモンのほうを向いていた。その目の瞳には、失望が現れていた。
「イーモン。いったい、どういうことだ。」
イーモンと呼ばれた小太りの男は、右手で痛みを堪えながらいった。
「こいつぁ、神威の攻撃じゃねえか。ゴホゴホ」
咳きごみしながら、ジェジンのほうへ行く
「吸血鬼が、紛れ込んでいたのか。」
「わかんね。人間だと思っていたら、くそ。」
「おまえの油断が招いた結果だ。」
「わかってる。くそ、人間なんかを助けやがって。」
「ふん、まあいい、退くぞ。」
「なんでだよ。あいつをゆるさね。」
「犯罪防止機関のやつらがすぐそばまで来ている。急ぐぞ」
「わかったよ。」
二人の男は、船を飛び出し、青い海に消えていった。