†〜3〜†
「5日間此所を空ける?」
「あぁ。祖父に会いに行かないといけなくなったんだ。手紙が来てな」
あの騒動から一週間。
城の人達は街の復興で慌ただしかった。
しかしそれも一週間で終わり、やっとみんな…十夜も休めると思ったんだけど……。
十夜のお爺ちゃんから、手紙が来た。
今までの事、そして闇の事について詳しく話したいらしい。
だからまた十夜は忙しくなる。
5日間此所を空けて、お爺ちゃんに会いに行くんだそうだ。
もちろん十夜の側近の旒來さんも。(今分かったんだよ!旒來さんが十夜の側近だって!!)
「疲れてない?復興作業忙しかったじゃん」
十夜は人一倍働いたと思う。
睡眠もろくに摂らないで、いつも復興作業をしていた。
だから絶対疲れてるのに…。また遠出をしなきゃいけないなんて、大変すぎるよ…。
「あぁ…確かに疲れてるけど…平気だ」
「……皇子だからって、弱音吐いちゃ駄目って訳じゃないんだよ?」
十夜は我慢してる。
みんなが見てない所で、苦しそうな表情をしてるのあたし知ってるよ。
十夜は柔らかい微笑みを向けると、椅子から立ち上がり窓のある場所へと移動した。
夜空を見ながら、言う。
「そうだな。でも俺は…みんなの為なら何でもしたいって思うから。辛い時もあるけど……弱音吐いてる時なんかないんだ」
月の光に照らされた十夜の顔は、憂いを帯びていて、切なく見えた。
「じゃあ……弱音吐きたい時になったらあたしに言ってね!あたしは聞くから!!十夜の弱音!!いつでも頼ってよっ!!」
亜子はガッツポーズをして笑うと、十夜はそんな亜子を見て、目を細めて優しく笑った。
「ありがとう、亜子…」
「いいえ!!」
だから…辛い顔はしないでね。十夜……。
次の日、十夜と旒來さん、少数の兵達は、十夜のお爺ちゃんの元へと旅立って行った……。
そして十夜から聞いた事。
またいつ闇が襲ってくるか分からないし、あたしを一人にすると危ないから、別の守護者を側に置くみたい。
水の力を得意とする守護者。
十夜の幼なじみなんだって。明日会う約束をしてるんだけど…。
どんな人なのかな。
会うの楽しみ!!
亜子はその夜、胸を弾ませながら眠りについたとか。
翌朝……。
亜子はいつもより早く目を覚まして、支度をし、いつでも会いに来て良いように準備をした。
そして時刻が9時を回った頃……。
「亜子、失礼します」
諷羅の声が部屋の扉の向こうから聞こえた。
「はぁい」
軽く返事をして、走って扉に向かう。
ドアノブに手を掛けて、視界に諷羅が映った。
それと…諷羅の後ろに居るスカイブルーの髪をした男の人も。
もしかしてこの人が…十夜の幼なじみ?
水の力を持った、守護者……。
「亜子、鳴巳様が参りました。ご挨拶を」
諷羅は後ろに居る男の人を前に出すように、自分が下がって男の人を前に出した。
見えたのは……とても綺麗な男の人。
髪の毛の色、スカイブルーが映えてとても綺麗だった。
もちろん顔立ちも。
よく整っていて、十夜や旒來さんみたいに美形だった。
つい魅とれてしまうくらい綺麗な人。
「亜子様、水の力を得意とする守護者…鳴巳です。はじめまして」
スッ…と右手を胸の辺りまで持ってきて曲げると、お辞儀をされた。
慌ててあたしもお辞儀をする。
「は、はじめまして!亜子ですっ!今日からよろしくお願いします!!」
すごく大きい声だったのだろう。
鳴巳と諷羅は目を大きく見開いて固まっている。
亜子は、はは…と乾いた声を漏らした。
―――…
「亜子様は元気な方ですね。びっくりしました」
「いやっあれはその…てか様いりません!どうぞ呼び捨てして下さい!!」
「え?」
様付け嫌いだしっ是非名前で呼んで欲しいよ!こんな美形さんには!!
「それじゃあ…敬語も無しで」
「…えっ?」
意外な言葉に亜子が固まる。
敬語無しって…まさか鳴巳君から言ってくれるなんて…。
嬉しい!!
「うん!!敬語無しで呼び捨てねっ!!」
「じゃあ改めてよろしく。亜子」
鳴巳が亜子に手を差し出す。
「よろしくっ鳴巳君!!」
差し出された手を、あたしは強く握った。
それから、亜子の部屋で話は弾む…。
気がつけば、もう陽は沈みかけていた。
「もうこんな時間か…早いなぁ、時間が過ぎるのは」
「そうだね。それじゃあ亜子、俺はこれから用事があるから。少し出てくるよ」
「あっうん。じゃあまたね」
「すぐ戻ってくるから。その後に、亜子についてきて欲しい場所があるんだけど。来てくれるか?」
「え?…うん、良いよ」
「良かった。それじゃあまた来るから」
そう告げると、鳴巳君は部屋から出ていった。
あたしは夕日色の窓を見つめて、鳴巳君が言った事を考える。
「ついてきて欲しい場所って、何処だろ…。まぁいっか、すぐに分かるもんね」
亜子はベッドまで近寄り、勢いよくダイブした。
ふかふかのベッドが、亜子の眠気を誘う…。
すぐに亜子は、深い眠りへと堕ちていった……。