†第一話 少女 〜1〜†
―…誰かが泣いている…。誰…?其処で泣いているのは誰なの…?
「――…待っていました…巫女……」
えっ…?巫女?
「どうか皆の想いを聞いて…世界を―……お願い…」
…何言ってるの?ねぇ…お願いだから…泣かないでよ―…痛いよ――…。
―――…
「………こ…亜子…」
「んン…?」
「亜子!起きなさい!」
「…!」
えっ…。
「やっと起きた…まったく。学校に遅れるわよ?早く支度しなさい」
「………」
夢…でもとてもリアルな夢だった…。
亜子と呼ばれた少女はゆっくりとベッドから起き上がった。
今見ていた夢を理解しようと頭を働かせようとした時…。
「亜子!!ぼーっとしてないで早くしなさいっ!」
「はぃぃ!!」
母親の雷が落ちた。
亜子は急いで準備をし、朝食を食べ、玄関へと向かった。
これがいつもの日常。
「行ってらっしゃい、亜子」
「行ってきまーす!」
バタンと勢いよく扉を開け、閉める。
これがいつもの会話。
何の変わりもない日々だが、亜子は夢で見た事が気になっていた。
何だったんだろう…あの夢…。
疑問に思いながらも、走る足は止めない。
もう遅刻ギリギリだったからだ。
「あまり深く考えなくてもいいよねっ」
そう言うと全力疾走で駆けて行った…。
―――…
「亜子!おはよ!」
亜子は持ち前の足の速さのお陰で遅刻せずにすんだ。
教室に入ろうとしたらとても明るい声が亜子の名を呼んだ。
振り返ると其処には、綺麗な黒色でストレートの髪を持ち、長さは肩ぐらいまである少女が挨拶してきた。
「おはよ麻希!」
亜子の親友の麻希。可愛らしい女の子だ。
「ちょっと聞いてよ!あのねまっくんがぁー…」
まっくんとは麻希の彼氏の事。
麻希は恋愛経験豊富で、恋多き女。しかし純粋で真っ直ぐなの。
あたしはそんな麻希が大好き。尊敬してる。
あたしはと言うと…。
茶髪のロングストレートで周りからは何故か可愛いと言われる。
自分はこんな顔ブサイクだと思ってるんだけど、そんな事ないらしい(麻希談)
本人自分が美人という自覚無し。
「でっ!あたしそんな事思ってないのにー…」
隣ではまだ彼氏の事に文句言ってる麻希。
まぁまぁと宥めて二人は教室に入った。
こんなあたしの日々。
またいつもの日常が始まる…。