《魔眼ノ》
心ここに有らずの彼であっあが、鈴音には関係なく、彼女は鉛筆で料理を作ってた・・・そんな時だ」
「ん!?」
正姫は咄嗟に右手を鈴音の方に付きだし、左手で人差し指を自分の口に当てた。
「・・・なに?」
「ちょっと、音が」
二人は静かにし、耳を澄ませた・・・すると誰かの声が聞こえてくる。
『死ね、化け物が!近寄んな!』
「(『死ね』?・・・この声は・・・外から?)」
窓から外を覗くと誰も居ない・・・声は廊下の方からしているようだ。
「鈴音、ちょって行こう」
「何処に?」
「確かめにですよ」
その後彼等は廊下に出、声のする方をたどって食堂に行った。
「また食堂?まさか、もうお腹すいたの?スパゲッティー食べたじゃん」
「おままごとでね・・・・それより、あれ」
彼等は物陰に隠れ食堂の方を見ていた。
そこには、あの魔眼の女の子と警備兵の何人かが居た・・・しかし、良い雰囲気ではなかった。
警備兵の彼等は、その小さな女の子を蹴る殴るなどして暴行をしていた。言っている言葉は・・・
『俺等の分まで食べんなよ、化け物め!お前は外で草でも食ってろ』
「正姫・・・あの子・・・」
「えぇ、これは虐めですね・・・」
正姫は警備兵を恐れず食堂に入って行った・・・
「皆さん、そこに居る女の子を放ってください」
「なんだお前、黙れ!」
「僕は正姫です・・・何故その子を虐めるのですか?」
「はぁ?んなのキモいからに決まったんだろ!」
「一つ教えてあげます。人はこの世に生れてきたくて生まれて来る訳ではありません、思いも寄らない偶然と
奇跡で生まれて来るのです。だから、誰が生まれてくるかは誰にも解らない・・・・その子だってそう
生まれたくて生まれてきたわけでありません・・・これは『運命』なのです」
「な、なんだこの餓鬼、何言ってんだ!?」
「貴方だって、生まれて来る前から自分の顔がどんなもの何か解っていましたか?子供と言うのは生後一ヶ月
くらいで距離感を掴み、鏡を見せれば自分の顔がどんな物なのか解ります。まー赤ん坊の時の事などほとんどの人が覚えていませんし・・・そうですね~具体的には『物心が付く』頃に自分の顔や体がどんなもの何か解ると言った所でしょう」
「こ、コイツ何言ってんだ」
「つまりその子だって、魔眼で生まれたくて生まれたわけではないって事ですよ」
「こ、コイツ意味和かんね―んだよ!?」
警備兵の一人が小さな正姫に銃を向ける
「言葉が通じないようですね・・・あと、誰かに『銃口』を向けると言う事は、誰かを殺す覚悟があると
言う事です・・・貴方に僕を殺す覚悟はありますか?」
「う、うわあああああああああ!」
彼の額からは汗が見え始め、手が震える・・・覚悟が無いのか引き金を引く様子は無い・・・
「そうですか・・・」
正姫は腕に闇を纏った。
「貴方達、僕を覚えていますか?・・・」
「はぁ!?」
「この闇で『薙ぎ払い』ますよ」
「あ、あ・・・こ・・・コイツ・・・まさか、Ex2・・・やべぇ・・・逃げろ!」
「何でだよ!?」
「コイツはやべえんだよ!?・・・只の餓鬼じゃねーと思っていたが・・・コイツはやべえ!?」
「おい、何震えてんだよ!?」
「うわああああああああ!」
彼は銃を落とし・・・
「とにかく逃げろおおおおおおお!」
「それで良いのです。あと、この子にもう一度手を出したら次はありませんから、覚えておいてください」
「うわああああああああああああああああああああああ!」
刹那を虐めていた彼等警備兵は逃げて行った・・・小さな少女は地面に落ちていたトレイと食べ物を拾い
無言で食べ始める・・・その行動に鈴音は驚いていたのだ。何も言えず惨め、そんな彼女を見てどう
声をかけていいのやら・・
「ちょっと・・・刹那ちゃん・・・」
そんな彼女の行動を見て正姫は彼女に言った。
「それ、僕も頂いていいですか?」
「え?・・・でも、これ落ちたやつ・・・」
「刹那ちゃんも食べているじゃないですか、痛み分けです。僕も落ちた物を食べます。すなわち僕らは
友達と言う事です」
「友達・・・」
「そうです。此処に居る鈴音も僕も皆も同じEx、つまり似たもの同士と言う事です」
「・・・怖くないの?」
「え?」
「刹那の目、黒いし、怖いし、気持ち悪がられるし、警備兵の皆にも虐めを・・・」
「え?そんな事言ったら、僕だって同じですよ、さっきの僕の『闇』や警備兵の脅える顔・・・」
「うん・・・」
「僕も化け物なのです・・・」
「え?・・・」
「あ、いや、別に刹那ちゃんが化け物って言っている訳ではなく、これは言葉の綾で」
「うん・・・」
「ま、まーそう言う事ですよ!」
「・・・」
「とにかく、これから僕達は『友達』です!」
「・・・うん・・・」
「んーそう言う事です(わっきから『うん』しか言ってくれないな・・・やっぱり心を開いてくれるのには
相当時間がかかりそうです・・・)だから今度から食事をする時は、僕達も一緒に呼んでください」
「うん」
「では!」
鈴音は別れ際、刹那に手を振り、こうして彼等は夜も遅かったのでそれぞれの部屋に戻った。
正姫は一人ベッドに横になり思い始めた・・・
「はぁ~今日は疲れましたね・・・これが休日の過ごし方なのでしょうか・・・勉強していた方が疲れないの
でよっぽどマシです・・・でもまーたまにはこう言うのも悪くはありませんね」
こうして夜は更けて行った・・・
あれから数週間が経ち、いつも通りの生活、実験や勉強の日々が続いた・・・
その後、刹那と関わって行くうちに彼女は正姫と鈴音に心を開いてくれ、仲良くなっていった。
二年後の今では、一緒にご飯を食べるほど仲良くなっていた・・・
「でね、刹那ね!昨日先生に褒められて、数学が好きになったんだよ!」
「そうでしたか!(相変わらず凄く喋りますね、まーそれも良い事なのかもしれません)」
「うん、鈴音も凄い!」
「え、そう?(この子、やっぱり少し怖い・・・いや、駄目駄目駄目!こんな事思っちゃ・・・この子だって
私達と同じ人間・・・)うん、刹那ちゃんもね!(私がだってお姉さんみたいに頑張らないと!)」
そんな普通に幸せそうな辛い日々であったが・・・
この二年間、彼等三人は授業以外でEx3後藤 彰を見たことが無いと言う。
「そう言えば正姫」
「え?」
「後藤君って休みの日とか見ないよね」
「アイツ・・・まだ補習続きなのですかね・・・年下の刹那ですら赤点をまのがれていると言うのに・・・」
そう・・・彼は赤点続きで二年間の日曜日はずっと補習で休みなしだったのである。
そんなストレスだらけの毎日を過ごしていた彼、ある日授業で爆発した・・・
これは普通の火曜日の事だ。彼等四人はいつも通り席に座り、先生の話を聞いていた。
だが事件起きたのだ・・・授業中、グボルグ先生は後藤に質問した・・・
「では、次の文章をEx3、読んでみてください」
「え、あー・・・んー」
彼は教科書を手に立ち上がる。難しそうな顔をして、考えていた。
「(えーと社会科?国語?、なんだこれ・・・マジで日本語かよ・・・意味解んねー・・・)」
「如何したEx3?」
「え、うん・・・」
小声で正姫は後藤に教える。
「『世界は広く』ですよ」
「はぁ?」
「頑張ってください後藤君」
「チッ・・・そんな事言うなら、お前が読めよ!クソッ!」
「え、はい、解りました。先生、Ex3が困っているようなので僕が代わりに呼んで良いですか?」
「ん?いいぞ、読んでくれ」
「あ、はい『世界は広く解れている。黒の道を進め、思考を広げ、扉は何処に、青い大陸、ドルウォウェルブ
の大秘宝、近くも無く、遠くも無い、真の傷を持つ者よ、心を開け、傷を尊敬し、青い空を見よ、自分を信じるのだ。全の物を手に入れ、全ては君の物だ・・・他人を理解し、心の扉』はい読みました」
「うん、良くできました」
「気に入らね・・・気に入らね・・・」
「如何したEx3?」
「お前はマジで気に入らねええええええええええええええ!なんでもできると思ったら大間違いだぞ!勉強だ
けで来て、バカみたいに勉強して!」
「え、いや、僕はバカみたいに勉強はしていませんけど・・・」
「くそ、勉強では負けているかもしれないが、力勝負なら負けねええええええええ!」
「え、ちょっと、後藤君、落ち着いて!」
「なー先公、俺だって強いんだ!このクソ野郎に誰が上か教えてやるためにも、コイツと喧嘩が」
「え――――どうしてそうなる」
「(喧嘩?・・・つまり勝負と言う事ですか、んー研究者として実験体をぶつけ戦わせる・・・
今までの実験の成果・・・面白いですね)解りました。Ex2とEx3の勝負を認めます」
「え――――」
「よっしゃあああ(ついにこの時が・・・Ex3である俺がコイツをブッ飛ばして俺がEx2になる!)」
「(如何してこんな事になってしまったのだろう・・・まー確かに自分がどれくらい強いのか見るいい機会か
もしれませんね)」
「(ふふふ、見てろよ、このがり勉野郎、俺のストレスを全てぶつけてやる!)」
「(はぁー・・・)」
「だが、授業以外での決闘は認めない、あくまでも体育の授業の一環としてですよ!」
「おう!」
「そうと決まれば、決闘は一週間後です・・・さて、その話はさて置き授業を続けましょう」
「はーい」
その後も授業は続き、あっという間に一週間・・・正姫と彰はコロシアム、通常戦闘訓練を行う所に居た。
彼等二人は闘技場に立ち、残りの皆は離れたベンチで見ていた。
「さて、私達は此処で見ているので、勝手に初めてください」
「だってよ、がり勉」
「ですねー・・・あまり、気分が進みませんが」
「ふっ、じゃあこっちから行くぜ・・・うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
後藤は何故か叫び、手を天に翳した。
「(・・・何故コイツは無駄に体力を浪費しているのか・・・)」
「風壁いいいいいいいいいいいいいい!」
彼は膝につき、手に纏った風の壁を正姫の方に向けて黙り込んだ。
「・・・えーと・・・」
「(さーきやがれ、俺の風壁はカウンター、テモーが攻撃すれば返り討ちにしてやる)」
「・・・」
「しかたありませんね・・・」
正姫は後藤に近づきハリセンをポケットから取り出した。
「な、なんだ!それ!?さー来い!」
「・・・」
パチンッと彼はハリセンで後藤の頭を叩いた
「イテーな!コラッ!?」
「・・・えー・・・すいません、無防備だったもんで・・・」
「ああああああああああああああああああウゼえええええええええええ俺の風壁は壁なんだよ!」
「・・・」
「だからよ、これで相手を叩けばいてえええんだよ!」
「じゃあ、やればいいじゃないですか」
「上等だ・・・クソ・・・うおおおおおおおおおおおおお!」
それからEx3、後藤 彰は本気をだし、風壁を彼の身体的能力のコンビネーションで正姫を追いつめて
行った。正姫は能力を使わすに彼を倒そうと思っていたが世の中そんなに甘くないらしい・・・
「なかなか、やりますね・・・」
「おまーもな・・・だけどよ・・・俺を馬鹿にするのは止めねーか」
「え?」
「俺だって本気で戦ってんだ・・・お前も本気出せよ、コラッ」
「(相変わらず面倒くさい奴ですね・・・でも、今回ばかりか彼の方が正論です)」
正姫は体に闇を纏い光の右手を作り出した。
「これが今の僕の本気の姿です」
「(能力を二つ!?コイツそんな能力を!?・・・だが、上等だ)上等だああああああああああ」
「うわああああああああああああ!」
その後、彼等二人は全身全霊、力の全てをぶつけ、勝負した・・・三十分後・・・
「はぁーはぁー・・・相変わらずの澄ました顔は気に入らねーし、只のがり勉野郎かと思ったが・・・
お前・・・結構つえーな・・・」
「そうですか?貴方も、口だけの野郎かろ思いましたけど・・・結構強いじゃないですか、伊達に『ゴッド』
じゃありませんね・・・(ふふふ、これが競争心ですか・・・確かにコイツだけには負けたくない・・・
この気持ち、『強くなりたい』と言うこの気持ち・・・僕に無かった物です!)」
「だろうな・・・俺は神・・・ゴッドだから最強なんだあよおおおお!あああはっはっはあああああ!」
「さて・・・」
調子に乗り高笑い、天を向き大きな声を上げ手を上げる彼は無防備・・・そんな彼に正姫は近づき・・・
数分後同様ハリセンを出し、後藤の頭を思いっきりバシイイイイイインと叩きつける。
「え・・・う・・・」
バタッ・・・体力の限界だったのか後藤は白目地面に顔面から倒れた。
「あ、大丈夫ですか!?まさかこんなに威力があるとは!?」
「・・・」
「さて、実験は終わりだ。Ex2なかなかの勝負であるました!」
「え、はい」
正姫は闇と光を解き・・・痛み?胸に違和感を覚えた。
「(あれ?心臓が痛い?・・・まー違いますか・・・)」
これが彼等の日常である。後藤はその後数日学校を休み傷が治った頃、戻ってきた。
正姫に負けたのがそんなに悔しかったのか、あの日以来、いつも以上に五月蠅く面倒くさいキャラになってしまったと言う・・・
「あっはははああああああああああ!」
「(相変わらず・・・五月蠅い・・・)」
それからまた数週間後・・・正姫達は・・・見てしまったのだ・・・