Vo.6
自宅の部屋の中で私の声が響く。
「人気急上昇モデル?私が?」
「そーよん!一週間後に取材よーん!」
“人気急上昇モデル特集“で私の名前が?
自覚ないなぁ。だって普通に歩いててもみんな分からないし。
「これでもしかしたら、専属が決まるかもな!」
専属...
なんかすごい...私がそこまでされちゃっていいのかな...⁈
でも...努力したかいがあったな~‼
「まあ今日中にPVの話もまとまるし、いいことずくしだね~今日は!」
「山下さん、まだ決まってないじゃないですか!」
私は呆れ笑いをした。
「それじゃあ、報告お願いします。」
「ほいほーい!」
電話を切った。
午前中はジム行かなきゃ。午後は...
千里と鈴恵さんが家に来る。ウキウキしてる。2人のためにグラタン作るんだ~‼
iPhoneで音楽を聞きながら、家を出た。
昔は運動が本当に嫌いだった。疲れるから。
でも今までは体型キープのために運動を続けてたけど、今は運動をするのが気持ち良い。
今日はヨガだけ。暇があればウォーキングもすると思うけど。
「あなた、最近娘の雑誌で見たわよ!」
トレーナーの人にそう言われた。
「本当ですか?ありがとうございます。」
「ユア・スタイルだっけ?専属なの?」
「いえ、違います。」
「ユア・スタイル...あっそうそう‼高月美香がそこ専属だったわよね?」
あっ話がやばい方向にいってますよこれ。
ストレッチで伸ばしてる筋肉が違う意味でプルプルする。
「ええ...」
「知ってる?あの人のこと?」
はい、この話右から左に受け流しまーす。
「いえ...あんまり...」
「でも会ったことはあるのよね?」
再び右から左に受け流しまーす。
「一回だけしか会ったことないんですよ。それもすれ違う程度で...」
トレーナーさんは少し悔しそうな顔をした。
トレーナーさんはそのあとも芸能界の話をしつこく聞いてきて疲れてしまった。
特にメスヒョウとあいつが本当に付き合ってるのかという質問に関しては真実を知ってるので、受け流しが大変だった。
こりゃ高いジムでも芸能人慣れしたところじゃないとダメだなとしみじみ感じた。
まあ、いいや。千里と鈴恵さんがあと1時間後には来るし!
プルプルプル、
山下さんからだ。
「もしもし?」
「イエーイ‼フォーフォー‼」
携帯からの大音量に思わず耳を離す。
「決まったんですか?山下さん?」
「決まった決まった決まった決まった決まった決まった決まった決まった決まった‼フォー‼いえすいえす‼」
「ありがとうございます‼山下さんのおかげです‼やったー‼」
「だっだららららだったららら~‼」
「それじゃあ切りますよ~。」
「だらりら、、‼」
ピッ。
まともに歌を全部聞いてると、30分くらいは取られる。
明日にでもPVの台本が来るはずだ。
「だっだららららだったららら~」
口ずさみながら、グラタン用のタマネギを切る。
プルプルプル、
また山下さん。
「はい?「」
「だらりら~‼言い忘れてた‼共演する人‼
植草葵‼イケメンの‼それだけ‼じゃーねー‼フォーフォー‼」
プチッ、ツーツー。
携帯を落とした。
『ぎいやぁぁぁぁぁぁぁ‼』
東京都内のマンションに女性の悲鳴が広がった。