Vo.19
まあ、そこからです。私があいつの名前を覚えたのは。遅すぎ?確かに。
「マジごめん...お詫びに何かする。」
「いいよ。気にすんな。君には明るい未来が待ってるけど、僕にはないから。」
あいつは意味深に微笑み、図書室の床に寝転びました。
「ふぅーん。」
「君には将来の夢とか...ある?」
「ライターになりたいと思ってる。できればファッション雑誌のね。」
あいつは寝ながら私を不思議そうに見たんです。
「...なにか?」
「君、やっぱり面白いね。」
「なにがじゃ?!」
また笑われました。今度は声を上げて。
「いや...この年で自分の夢をはっきりと言える人ってそうそういないだろ。だからすごいと思って。」
「そうかな...?」
「自分に自信があるんだね...嫌いじゃないよ、そういう人。」
いや、あんたに嫌いとか好きとか言われても...
「あんたはあるの?夢とか。」
私がそう聞くとあいつは少し起き上がりながら下を向き、自虐的に笑う。
「内緒にしてくれる?僕の秘密。」
「なんで話して3日目の私に内緒にしてほしい秘密なんか話すの?」
「なんでだろうね。分からないや。」
「じゃあ話さないで。内緒にできる保証はないから。」
「そっか。」
そんな話をしました。
それ以来私はあいつを気にするようになりました。最初は他人には感じないほどの安心感から始まり、それが愛情に変わった...って感じです。
「なるほど...それがあなたたちの恋人になる経緯ね。」
千夏先輩は最後まで真剣に聞いてくれた。
「はい。」
「なんで別れたの?」
「あいつが...自分を売り出すために..."現恋人"と...チューとかいろいろして....!」
相当顔が歪んでたのかもしれない。先輩は笑いをこらえた。
「そっか、あんたもいろいろ大変だったわけね。週刊誌に出てた隠し子は?」
先輩はわざと話題を変えたみたいだ。
「あの子はあいつの妹です。隠し子なんて週刊誌のでっち上げ。腹が立ちすぎて泣きそうですっ!」
私はテーブルを思いっきり殴った。ドスンと鈍い音がしたのと同時に拳が痛くなった。
「いっつ...」
「ま、まだなにかありそうだけど今は聞かないほうがいいのね。」
いっ...!!なんで分かったんだろう...?上手く話まとめたつもりだったのに。やっぱり無理があったのかな。
先輩は立ち上がった。
「それじゃあ、お邪魔しました!また午後の撮影でね!...そうだ。そのあとのパーティー行く?」
「パーティー?なんかありましたっけ?」
「やだっ!美咲ちゃん、ユア•スタイルの姉妹誌としてキスハグって出るでしょ?それの発売記念パーティーよ!」
キスハグ...山下さん言ってたっけ?
「まあ、出るなら連絡して!」
千夏先輩は笑って玄関に向かって行く。その背中を見ながら私は複雑な心境だった。
全部話すって約束したのに、私は話さなかった。でも、この話はあいつの秘密に関わってくる。あいつと同じ事務所とはいえ千夏先輩に話すわけにはいかない。
私は約束を破った罪悪感と話してはいけないという心の叫びが重なり、笑って手を振る先輩に見られないように爪で腕の皮をつまんだ。
めちゃくちゃ...すいません(ーー;)
でもこの話がないと話が進まないのです...




