Vo.16
お気に入り1000件超えました!
皆様のおかげです!ありがとうございます!
「えっ、じゃあその大物芸能人と交際してたモデルって誰ですか?」
「ーーーーさんです。」
「ええー!!!」
ピッ、
ああ。テレビを見て疲れたのは初めての経験だわ~。
いじわる先輩はテレビで次々に裏情報を暴露していった。出演してる服装も清純派として売り出してたときとまるで別人のように挑発的だ。
私も知ってる話はいくつかあったけど、あんなこと話して恨まれたりとかしても知らないよー。
私は化粧水を肌に染み込ませながら、ソファに寝転んだ。
「あーりーさ!」
千里がクマの人形を持ちつつ、私に抱きついてきた。
「おお、起きちゃったか。」
抱きあげると髪からはいい匂いがする。膝に座らせて、その匂いを私の鼻の中に満たした。
「千里、今日は楽しかった?」
「うんっ!ありさといっしょでたのしかった!あしたもあそべる?」
「あ~。ごめんね、明日はお仕事なの~。」
千里は頬を膨らませた。
「ん~!!」
「千里怒らないで。千里だって明日から幼稚園あるでしょ?」
千里はしょげて下を向く。顔をクマの人形にうずめた。
「千里眠いんでしょ?」
顔をうずめたまま、首を振った。
「でも、寝なきゃ。となりで一緒に寝るから。ねっ!」
私は重くなった千里を抱き上げて、千里の部屋に向かった。
「やっ!」
千里は抵抗した。
「なにが嫌なの?」
「ありさのおふとんでねるー!」
ああ、なるほど。
「分かった。いいよ!」
千里は私に顔を上げて、満足そうな顔を浮かべた。もう、超かわいい...!とろけそうになる。
千里が眠りにつくのは早かった。寝顔も毎晩見ても飽きないくらい愛らしい。1年前はいつもこの寝顔を見てから寝るのが習慣だった。
「千里さん、あなたのベットで寝たんですね。」
寝巻き姿の鈴恵さんが出てきた。あいつがロケでいなかったから、今日は女3人でのんびり過ごしたというわけだ。
「ええ。久しぶりだったので。」
鈴恵さんはベットのはしに座り込んだ。
「こんなに平和に寝れるのも久しぶりですよ。あの方が真夜中にお酒を飲んで家にくることもあったので。」
マジかよ....メスヒョウめ....
「なんでそこまで神山は、あいつに執着するんでしょう...?はっきり言って、名前をあげるならもっと大物の人に近づけばいいじゃないですか。」
私は腕を組んだ。
「多分大物すぎるとあからさまな売名行為だと分かるからでしょう。」
鈴恵さんはふぅっ...と深いため息をついた。
「それに...あの2人の関係は世間のトレードマークになりましましたからね。葵さんから聞いたんですが、本来は葵さんをもっと売り出したかった事務所と新作のドラマの宣伝をしたかった神山さんの事務所が偶然にも目的がつながったからでしたけど。」
「そのトレードマークにメスヒョウは執着してるんですね。...」
いやになっちゃう....そんなことに執着するなんて....
「まあ....せっかく楽しい夜ですから、この話はここまでにしましょう!」
「そうですね。せっかくですものね!」
私たちは千里を起こさないように、ダイニングに移動して久しぶりにガールズトークをした。洋服の話とかお化粧の話とか。
「有理沙さんってモデルになってからは、流行に合わせた服を着てるの?」
「いいえ。知ってますけど無視してますよ。前の職業柄、調べてはいますけど。」
「そうなの?有理沙さんらしいわね~。...あらっ!もうこんな時間?話をしてると早いわね~!」
時計はもう11時を回ってる。
鈴恵さんはどっこらしょと立ち上がったときだった。
ピンポーン、
2人で顔を見合わせる。
「こんな時間に誰でしょう?」
私はインターフォンをのぞいた。
「千夏先輩?」
「美咲ちゃん、遅くにごめん。でも緊急なの。」
千夏先輩の顔は今までにないくらい鋭い。
「はっはい。」
マンションの鍵を開けた。
「お友達?」
「はい先輩です。鈴恵さんは先に寝てて下さい。」
鈴恵さんは怪訝そうな顔をしつつ、千里の部屋に行った。
ピンポーン、
「はい...こんばんは。」
少し開けた瞬間、ガバッと扉をこじ開けられた。
「美咲ちゃん、あなたに聞きたいことがあるの!」
先輩の迫力がすごい。私を上から空き缶みたいにプレスしそう勢いだ。
ずんずんと家に上がり込み、なにかをサマンサタバサのバックから取り出した。
先輩を取り出したのは"週刊青空"。
「12ページ。」
先輩はそれだけ言って座った。
12ページ?
パラパラとめくる。
「一体...」
その先の言葉は衝撃に飲まれた。
"俳優植草葵、まさかの隠し子疑惑?"
「うそでしょ...?」
"俳優植草葵、まさかの隠し子疑惑?
ドラマも映画も引っ張りだこで私生活でも恋人に女優の神山みちるがいるなど絶好調の植草だが今回、なんと子どもがいるというタレコミがあった。
「植草は自分の娘を溺愛しています。」
情報筋はそう語る。
「元カノとの間の子どもですが、元カノのほうが育児を放棄したんです。だから植草は子どもを育てつつ、俳優として生計を立てています。」
今、本誌は植草側の事務所に問い合わせ中である。"
写真までついてる。目にモザイクがあるけど、あいつと一緒に写ってるのはまぎれもなく千里だ。
メスヒョウだ。きっと、あいつが引っ越したのを恨んでこんなことをしたんだ。
千里は関係ないじゃない....!
私は怒りすぎて涙が出てきそうだった。目の前の雑誌をぐしゃりと握りしめた。
「この写真の子、美咲ちゃんの姪っ子だよね?」
ビクッと体を震わせた。涙を気がつかれないように拭き取る。
「目の下のほくろがいっしょでしょ?私、前に顔を見せてもらったときにそのほくろがすごく印象に残ってたから。」
私はしわくちゃになった週刊誌を返した。
「ねえ、あなたと葵くんどういう関係?...まさかとは思ったけど、葵くんの元カノってあなたなの?もしかして...」
「違いますっ!!」
思わず叫んだ。そんな誤解をされたくなかった。
「違います、違うんです。」
私は怒りをこらえる。メスヒョウのあのきゃぴきゃぴした顔を思い出すと全身の水分という水分が沸騰しすぎて蒸発しそうだ。
「じゃあどういう関係?」
先輩はずいと詰め寄る。
これは私だけの問題じゃない。しかも歴史を長々と語らなきゃ。
「私....できるならあなたを助けたい!それに葵くんだってこんな記事出されて辛いはずよ。真実でも嘘でも!」
うーん...でも...
「どこまで知りたいですか?」
「全部。」
いやいや、全部っすか?果てしないhistoryですよ?
「先輩...明日仕事は?」
「午後から。あなたと一緒。」
もうっ!仕方ない!
「今夜は眠れなくなりますよ?いいですか?」
「いいわ!覚悟してる!」
「お肌に悪いですよ?」
「それぐらい承知してるわ!!早く話しなさいっ!!!」
はっはい...
私は先輩の向かいに座った。
「ええっと...始まりは高校1年のときです...」
次から有理沙と葵の高校時代の話です。
そのあと、有理沙以外の視点で1話書く予定なんです。誰がいいか投票しまーす!....ていっても2人だけなんですが(笑)
葵...ストーカーじみます。
神山みちる....おバカすぎてイライラする....かも。