Vo.11
「美咲さんの顔が今にも食べられそうな小動物みたい...やっぱマジキスはきつかったか!」
モニターに人が群がる。
.......
「美咲さーん、おーい。」
「.....私の魂は食べられてますか.....?」
私は思わずつぶやく。
「?美咲さん?大丈夫ですか?」
もう、いや。
「美咲さーん。植草さん、手加減してあげてくださいよ‼」
悪魔の王様は私の魂を食べて満足したようだ。後味を楽しむかのような顔だ。
「そうでしたね....美咲さん、大丈夫ですか?」
悪魔だ。今さっき私の魂を喰った悪魔だ。
「うーん、もう一回ウソのキスでやりましょうか!」
私は立ち上がり、水を一杯口に含む。
気持ちを落ち着かせる。
「美咲さん....?」
「大丈夫です。続けましょう。」
もう何も怖くなくなったわ。1番恐れてたことが起こったんだもん。
どっからでもかかってこいや~‼
「お願いしますっ‼」
「....あっはい!それじゃあテイク2入りまーす!」
アスファルトに寝る。熱いけど、どうでも良くなった。
「3.2...!」
はい、さっきと一緒。近づくでしょ?笑うでしょ?しゃがむでしょ?顔近づけるでしょ?私幸せでしょ?
終わり。
「はい、カット!オッケーです!」
「一日目お疲れ様でした!暑かったですね~」
「本当ですね~!」
私は着替えながら衣装さんと話していた。
「明日はスタジオだからいいんですけど...」
「確か、全部夢だったっていう展開ですよね?」
「そうです。まさかの夢オチです。」
悪魔に魂食べられたことも夢にしてくれないかな...?
「美咲さん、私服おしゃれですね~!」
「ありがとうございます!今日はミランダ・カーを参考に....」
衣装さんと2人で出て行こうとした時だった。
「美咲さん。」
出た。悪魔。もう怖くないわ。Tシャツにダメージジーンズ。前はダメージジーンズなんてはいてなかったよね?悪魔さん?
「なんですか?」
「メルアド....もらってもいいですか?」
しまった‼そのこと忘れてた‼
悪魔にメルアドなんて渡したら魂をタダで売ったようなもんだぞ?
でもどうしよう?超古い手を使うか?
「ごめんなさい。携帯家においてきてしまって....」
必殺、携帯おいてきてしまった攻撃っ‼
はっはっ!どうだ?悪魔めっ‼
「そうですか....じゃあ、誰かが持ってたらもらってもいいですか?」
この現場じゃあ誰もいない。はっはぁ~‼
「ええ。いいですよ。それでは。」
私は営業用スマイルを浮かべてその場を去った。
「やっぱり植草さんかっこいいですよね~!オーラがあるっていうか...」
衣装さんも悪魔の暗黒オーラを感じ取ってるんだ~!
「確かにオーラありますよね。」
「銀色のオーラと言いますかね!なんなんでしょうね!」
あっ...そっちすか?
まあ当たり前か。
「あっやーまーしーたーさーん‼」
「イエーイ美咲ちゃん!お仕事お疲れちゃん!」
山下さんとハイタッチした。
「それではここで失礼いたしまーす!」
衣装さんと別れて、車に乗った。
「いやー美咲ちゃんのスタッフ受けがいいこといいこと!」
「そうなんですか?」
山下さんは車を運転しながらカプチーノを飲んだ。私はひたすらぼーっとしてた。
「ほーんとよー!またお仕事来るかもねー!」
今度はラブストーリーはやめよ。絶対。
お風呂から出て、美顔器を浴びてるときだった。
プルプルプル、
知らない電話番号だ。誰だろう?
応答ボタンを押した瞬間に、誰だか分かってしまい激しく後悔した。
「あーりさ。今日楽しかったね。」
ピッ。
切った。
いや、待てよ?一体誰から....
プルプルプル、
「誰から聞いた?」
「おいおい、切るなよ~。君のマネージャーだよ。出っ歯の。」
やーまーしーたーさんっ‼言ってよー‼
「普通に教えたの⁈」
「君に許可もらったって言ったらあっさりね。サプライズしたいから、言わないでって言ったんだ。」
山下さんはサプライズって言葉に弱い。これはもう本能みたいなもんだから、仕方ない。
ピッ。
切った。
美顔器の電源を切り、ベッドに向かう。
プルプルプル、
なんだよっ‼
「なにっ⁉」
「だから切るなって!話があるんだよっ!」
ちょっと怒り気味。
「なに?」
「俺たちもう一回、切るなよ⁈」
ちっ、ばれたか。
「別れは言ったよね?パーティでさ?」
「ちゃんと誤解を解きたいんだ。あのときは2人とも子どもだった。僕も真実を君に言うのを恐れてはぐらかしたし、それで君は出て行った。」
私は濡れた髪をかき乱した。
それは一年前のことである。
週刊誌にある記事がすっぱ抜かれた。
"若手イケメン俳優植草葵、Gカップ女優とお泊りデート
今人気急上昇中の若手俳優、植草葵。他にはない、圧倒的なオーラで人気を博しているが、今回熱愛が発覚した。
「お互い熱烈に愛し合ってますよ。アプローチしたのは植草のほうからです。」
関係者は言う。
本誌は濃厚なキス現場もキャッチした。明らかに顔がはっきりしている。
お相手はGカップの元グラドルにして女優の神山みちる。○月X日、2人は都内のバーで待ち合わせ夜景デートを楽しんだあと、ホテルへチェックイン。
「ホテルのチェックインの時もずーとイチャイチャしてましたよ。周りの人が引くらいに。」
某ホテルのスタッフはそう言った。
この記事が出ることで植草葵の仕事に支障が出ないか不安である。"
私はこれをコンビニで読んだあと、すぐにあいつに聞いた。でもあいつは都合の悪いことだったため、はぐらかした。
『仕事の都合上仕方なかったんだよ。ネタ作りのために事務所にやらされてさ。君には分からない世界だよ。』
なんかまるで私が悪いみたいになった。
しかも、やらされたってどこまでやらされたの?ねえ?ホテルに泊まったんでしょ?その日って仕事で帰れないって言ってたよね?
この頃からケンカが増えた。私は自分の頭を冷やしたいからしばらく出てっていいか聞いた。
あいつは許してくれなかった。
毎晩毎晩私は泣けてしまった。生まれて初めて自分の顔や体型のことを考えた。
かなり気を病んでしまい、体重は二ヶ月で五キロも増えた。
でも噂は加速するばかりで、挙げ句の果てにメスヒョウの声明。
『私は、彼と交際しています。』
あっさり認めた。
私が子どもだったのと、まだあまり芸能界を知らなかった。それも原因だった。
ついに、私はあいつに何も言わずに家を出たのだった。
「そうだね、そうだね、確かに私も幼稚だったよ?でもさ、なんで全部説明しなかったの?私が分からない世界なら教えて欲しかった....」
「有理沙...ごめん。自分の現実から目を背けたかったんだ....」
私はため息をついた。
「あんたさぁ....これで私がどうなったか知らないでしょ?」
長くなったので若干中途半端なところで切ります。
有理沙がどうなったかは....次回(笑)!
でも、期待しないでください。それだけ言っておきます!
ミランダカーっていう人は、リプトンのCMで「ヤバイネ、リモーネ~♩」と歌ってる人です!
モデルさんです~