Vo.10
「あっつ...」
「美咲さんごめんね~。アスファルトだから...」
床に寝転ぶと地面は太陽の熱をこれでもかというほど吸っていて驚いた。
「一応水は撒いたんだけど...」
「大丈夫です。びっくりしただけなので。ありがとうございます。」
私はゆっくりと体を地面の熱に慣らし、寝転んだ。こんなのたいしたことない。問題は...
「はい、じゃあキスシーンね~!」
監督やめいっ!!なぜわからん?
軽々しくキスシーンなんていわないでください!!私女優じゃないんすよ?新人の元ぽっちゃりのモデルなわけ!!分かる?ねえ!!ねえ!!
しかも私にはいろいろと複雑な事情があるわけ!!!!!キスなんていうなっ!!言うなら....言うなら...そうだな...
例のあれっ!!例のあれといえっ!!!
「監督ぅ、キスマジでするんすか?」
「どうしようかな~二人はどうしたい?」
「いやです。」
私がそういった瞬間、時間が静止したように周りが静まりかえった。
やばい。
「なっなんていうか...その...彼が嫌とかじゃなくて....緊張するというか....」
なんなんだこの重苦しい空気は?
「あっもしかして、美咲さんキスしたことないとか?」
いっ.......!顔の血液が沸騰する.....
「うそ?!図星?!かわいーい!」
みんながどっと笑った。
いやいやいや!!!ありますあります!!!相手が右側でクッキーかじってる奴だったからですっ!!!
と思いつつ、場が和んだからそういうことにしよう。若干恥ずかしいけど...
「僕はどっちでもいいですよ。美咲さんの”ファーストキス”がなくなりそうですが。」
植草ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!知ってるくせにぃぃぃぃぃぃ!!!
「でも、ファーストキスがこんなイケメンでうらやましい~!」
ん?メイクさん?なにうっとりした声で私がマジキスする前提的なこと言ってるんですか?
「いや...あの..」
「とりあえず、リハでするふりをしてみてください。それによって決めます。」
監督...
でも、つまりこのリハで完璧にやればいいんだよね?ね?ね?
「それじゃあ、リハ行きまーす!」
私はまるで今しがた倒れたように体を寝たまま崩す。
よしっ!!仕事だ仕事!!私的な感情は入れるなよ!!
コロンと耳の近くで何かが落ちる音がした。ペンだった。これって....
「あっ...落としちゃった...」
植草の声だ。やっぱり、植草のペンだ...
あいつがペンを拾った瞬間、おぞまじい声が聞こえた。
「うまくいくと思ってるでしょ?そうはさせないから...」
危うく悲鳴を上げそうになった。
なに?!今のささやき!!!!”ほんこわ”並でしょ!!!ぎいやぁぁぁぁぁぁこわいこわいこわい!!!なに?!なにするつもり?!?!なにすんの植草葵25歳!!!!!美咲に!!!てか小林有理沙23歳に!!!!私あんたより2歳年下!!!分かる?!弱いものいじめはいけないって小学校のときに..
「はい、リハ3.2.1!」
..最後まで言わせてよ...
てか、もうリハ始まってる!!
あいつが近づいてきてしゃがみこみ、ほほえんだ。
怖い!!!ホラーーーーーー!!!!
そっと顔を近づけてくる...
私は頑張って幸せそうなかおをする.......ふり。
私、やけくそになって受けたオーディションがモデルでよかった。マジで。
唇があと2センチぐらいで重なるところであいつの動きがとまった。
私は幸せ私は幸せI AM HAPPY I AM HAPPY.......
「はい、オッケーです!!!」
ふうっ!!私の肺が新鮮な空気で満タンにした。
「美咲さんは良かったんですけど、植草さんが若干ぎこちなかったですね~。」
う・そ・だ。
まさか、こいつわざとそういう演技を....
「すいません。キスのふりなんで、距離感がとれなくて...」
きっ貴様ぁぁぁぁぁ!!!!才能無駄遣いするんじゃねええええええええ!!!!!
「やっぱ、マジキスでいくか!!」
........
「美咲さん、ごめんね。ファーストキスなくなるけど、またプライベートでね。」
NO,
「それじゃあ本番行きまーす!!」
NO,NO,NO,NO,NO........
「3.2...!」
あいつが来てしゃがみこみ、笑う。悪魔の王様みたいな笑いしてやがる。
悪魔が顔を近づけてくる。私、こいつに魂を食べられるの?
ゆっくり、ゆっくり、悪魔は顔を近づける。
ねえ、悪魔さん、私の魂はまずいよ?もっとおいしくて上質な魂が....
無駄だった。
私の魂は、悪魔に”吸い取られた”。
こんなに長引くと思いませんでした汗
追記
ごめんなさい‼間違えて完結にしてありました!
まだまだ続きます!
お騒がせしてごめんなさい‼