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人魔のはみ出し者  作者: 生意気ナポレオン
第二章:まっありきたりな大会編
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第三十一話:反省の後原点回帰.そして,圧倒

時間が掛かった割には、今回短いです。申し訳ない。

◇◆◇◆◇◆◇side ルフト◇◆◇◆◇◆◇



 現在時刻午前十一時三十一分。シュヴェルト戦闘勝利十九分前。ルフト反省中。


 体の至る所を空気が抜けていくという事は酷く気持ちの悪い。全身穴だらけになったら、皆こう感想を言うのではないだろうか。本来ならば、痛みで気絶してもおかしくないのだろうが、例によって例の如く、痛覚は以下略。


 こんななりなっておいてなんだが、正直、あの二人を倒すのは容易い。嘘じゃな……くもないか、倒すと言う言葉は撤回だ、殺すのは簡単だ。貫殺破城撃を当てれば一撃だろうし、重蹄脚で近付いて、ちょっと首をひねってもいい。


 だがまぁ、勿論殺す訳にはいかない。となると、威力抑えめの破城撃、重蹄脚あたりになるんだろうが、残念ながら相手は二人とも鎧を付けてる。純粋な打撃である破城撃では、威力は半減以下。連発するのも、非効率的だ。


 今思えば、鬼人腕とかに変化するべきだったか、樹で戦うなんて回りくどい事するのは、下策だったか。だけど、目の前で体を変化させるのもなぁ……二人だけならまだしも、放送局の奴らもいるしな。


 <終わりました…二対一の状況でも余裕の表情のルフト選手でしたが."ラチュリアの初花"コンビの二対一でも決して油断せず、単純な、しかし効果的な罠を仕掛けたのが勝敗を分けたのでしょう…>


 罠ねぇ……これまた、引っかかった俺が言う事は出来ないんだが、これで罠とは片腹痛い。光の魔術で、姿を隠して攻撃など、誰でも思いつく、丁度七か月前も同じ手で首落とされてるしな。まぁ、良く考えれば、首を落とされた記憶があると言うのも不気味なものだが。ちなみに、首を落とされた感想は、同じく気持ち悪いだった。命を断たれる行為という物には、自然と嫌悪感が付属しているものなのかもしれない。


 コッコッコッ――石畳を蹴る音が段々と近づいて来る。ふぅ、やっと近づいて来るみたいだな。お前らも気ぃ抜いてないで早く指輪を取りに来た方がいいと思うだけどな、俺は。まぁ、余計なお世話だな、さてっ……と。


 ゆらりと俺は立ち上がる。なるべく無気力に、瀕死に見える様に、墓場から起き上がる屍の様に。油断させるに越したことは無い。


<「「なっ……!」」>


<ル、ルフト選手、立ちました! メディア選手、渾身の魔術を受けて、尚、立ちあがりました! >

 

 五月蠅いな……無理もないか、どう考えても、この怪我で立ち上がれる筈が無いよな"人間"には。

 ……スライムとしての自覚を無くしてるのかもな。言霊は無闇に使わない、か。長老の心配した通りだな。はぁ……ここらで、修業時代まで意識を戻すした方が良いのかもしれなな。

 

 さぁルフト。容赦を無くせ、相手の命を断て、狙うは急所のみ、一切の無駄を無くせ。言霊は秘奥、みだりに見せるな、秘奥を保て。だよな、長老。

 

「変化……"万変乃者"」


 小声で呟き、表面は人間を繕ったまま、中身はスライム他諸々を組み合わせた、極めて柔軟性の高いものへ。だらんと両手を下し脱力、さらに格好の的へと移行。ここまで言えば誰だってわかる、俺が狙うはカウンターだ。


「メディアの魔術をまともに受けて、まだ立ち上がるとは……」

「……リザーレ。私が指輪を取って来るから、一応、詠唱を」

「了解」


 流石にその程度の警戒はするか、だがまぁ……無意味。じりじり動くだけ、時間の浪費だ。


<やはり、意識が朦朧としているのでしょう。メディア選手が近づいていると言うのに、ルフト選手、微動だにしません>


 微動だにしてない? 目が節穴だな、俺の体内は常に流動中なんだがな。まぁいい、あと五歩、四歩、三歩…


「はあっ!」

 風切り音を鳴らし、メディアが俺の左脚を狙って突きを繰り出す。レイピアの先が肉に当たるのを感じる――ここだな。


「万変流格闘術:"柳に風"」

 右足を軸にくるりと回転、突かれた脚は僅かに削られ血を滲ませる。メディアは、突いた勢いにより僅かにつんのめる。その無防備な後頭部へ肘打ち。


「くぅ……!?」

 打ち所が悪ければ、死にかねない一撃。だが、追撃する。今度は左脚を軸に回転、右足が弧を描き、首へ――


「危ないっ!」

 胴へ無理やり軌道修正。足が異常なしなりを見せ、メディアの胴を打つ。ボキィ――足から肋骨折る感触が伝わる。不味い、場所が場所だ、肺に突き刺さったりしないでくれよ。


「メディアッ!」

 多少、気にはなるが、今は目の前の敵の方が先。動揺して魔術が崩れた今が好機、さっさと終わらせる。 

 腰を落として全力疾走、風を後ろへ置き、ただひたすらに敵へと進撃。


「くっ!」

 視線の先、剣を鞘から抜こうとしているのが視界に入る。鞘に手を掛けるときは、完全に無防備。ここで一気に加速――重蹄脚。


 行き成り懐に現れた俺に、リザーレは目を見開きながらも、鞘に掛けた手をこちらへと向けようとする――遅い。

 腕を上へと突き上げ、顎へと渾身の掌底を放つ。体が僅かながら浮く、まず、問題なく意識がさよなら、勝利は確定、そう言えるだろう。だが、先程と同じ、万変流は追撃にこそ、全力を注ぐ。


 足を上に振り上げ、手で掴む。これは、デコピンを打つ前に、指を反らす様なもの。だが、デコピンと違って、此奴の威力は倍以上に底上げされる。

 腕を放して、鞭の様にしなる足を振るう。狙うは再び胴。ここなら、死にはしないだろう。恐らく、だが。


「がぁっ!」


 直撃。そのまま地面へ叩き付け、地面と足での挟撃。衝撃が思いっきり内臓に伝わる筈だ。

 「くっぅ……!」僅かな呻きを上げ、リザーレの体が動かなくなる。


<は、早い……何も、何も実況できませんでした。流れるような……それも、激流のような速攻でした>

<実況よりも早く医療班を。内臓が幾つか傷ついてる可能性もあります>


「ヴァルターさんの言うとおりだ。少なくとも、肋骨が折れてる、とにかく早めに呼んでくれ」

 死にはしない確信があるが、万が一という事もある。念には念を入れておいた方がいいだろう。


<は、はい!>


 ……選手の言いなりになっているが、お前はそれでいいのか? まぁ、ごねられても困るから、いいんだが。


「さて、シュヴェルトさんと合流する……にしても、ここで待つ他ないか」

 なら、久しぶりにゆっくりするか。久しぶりって言っても、この大会始まったのは九時から何だけどなぁ……なんか、濃い時間過ごしてんな……



 午前十一時三十五分―side change→

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