第二十四話:完治の後戦闘,疑問に嗜虐
すいません.前回「三人称で行きます」とか言ってましたが,すいませんあれは嘘でした.今まで通りの書き方で行きます(汗)
申し訳ない<(_ _)>
◇◆◇◆◇◆◇side ルフト◇◆◇◆◇◆◇
現在時刻午前九時二十二分。北西区十七番街にて、ルフト思案中。
<な,何が起こったんでしょう!私には何が起こったのか全く分かりませんでした!と、とにかくチューリ選手、ヴェルデン選手、四名の副将を一斉に撃破ーーー!>
放送に一瞬身を固くするが、副将と言う言葉を聞き直ぐに体を和らげる。倒された放送が流れるのか…だったらイレーナはまだ無事だな…と冷静になると相棒印で連絡すれば良いじゃないか。
そっと人ごみから外れ人影の少ない路地に移動する。おっと連絡を取る前にやることがあったな。
「変化…"スライム"…ふっ!」
紋章が描かれている足をスライムに士あっさりと千切る、こうしてみるとスライムの体って本当に脆いな。
当然このままでいるわけにもいかないので足を創る、解除はやめておけと言ったが解除したら失格とは言って無かったからな、問題は無いだろう。まぁ俺のは正規な方法じゃないだろうが。」
一分程で脚が生え、動作を確認した後に相棒印に手をかざす。すると幾つかの文が印から浮き出る。その中から"意思疎通"の文字を選択し、そっと口を寄せる。
(おい、イレーナ。聞こえるか)
(あ、ああ。大丈夫だ。おい、ディーガン、上手く隠しておいてくれ)
後ろで隠せって…などと言っている声が聞こえる、結局ディーガンも一緒にいるんだな、どうせもう副将ってばれてるだろうから問題は無いか。
(どうした?)
(いや、安否が確認したくてな)
(そうか…まぁ確かにあの放送があったからな、こちらは取り敢えず状況を脱出、今のところは問題なく移動中だ)
(そうか、それじゃあまた放送みたいな事とか気になった事があったら連絡してくれ)
(了解)
よし、これでひとまず…
「イレーナさんにご連絡は済みましたか?」
連絡が終わり顔を上げると、爽やかな雰囲気を醸す軽鎧に兜を被った青年が三メッセ程先に立っている。顔に見覚えはない所からして副将か。
「…いえ、まだ済んでないのでしばらくお持ちを」
「そうですか…しかし印は[さっきのように輝いていませんが]」
「いや、そんな[飛雷球]おわっ!」
飛んできた雷球を上体を右にそらして避ける、今詠唱する素振りは無かったよな!?ってことは!
「あれ?今のを避けますか」
「くそっ隠唱持ちかよ!」
「ご名答です!」
―隠唱…名前の通り詠唱を隠しつつ魔術を放つことが出来る奴が持っている資格だ、隠し方にも色々あり、普特殊な発声法や魔術を組み合わせることで意味のない言葉から放つことが出来たり、本を黙読するように頭の中で詠唱したりする奴もいる。此奴の場合は前者だな。
「くっ」
男が腰に差していた長剣を正眼に構えこちらに向かってくる…その綺麗な型からしてそこそこの学校か何かを出てる…という事はラディーアかラチュリアあたりか?ってそんな事を考えてる暇はないな。雷球を避ける過程で崩したバランスを戻すには距離が近すぎるか、だったら。
[殺人者の刺突剣]
「おっと、危ない」
真っ直ぐに撃った投げナイフを男は右足を軸に回転して避け、勢いを殺すことなく前進を続ける、殆ど溜め無しとはいえそこそこの速度は出てたはずだったんだが…こいつ出来るな?
男は剣を上に振り上げ勢いよく俺の脳天に振り下ろす、と言ってもこれは恐らくフェイクだろう、避けた所でこの路地はやや狭い、あの長剣が届かない場所は無い。そこに剣を突き付け脅し指輪奪う、そんな所か?
だっが…これは俺が素手であった場合の話、俺には拳、投げナイフ以外にも得意な武器があった、いやまぁ拳が武器かどうかは別にしてだ。なぜか俺の来た当初や九か月前のような大きな事件では使わなかった、くどくど言ったが、すなわち短剣だ…!
耳鳴りのような金属音が鳴り、真っ直ぐに振り下ろされたはずの剣は俺の肩をかすめて、地面を砕く。
「なっ何処から…!?」
「自分でぇ…考えろ!」
「くっ!」
俺の右手と左手にはそれぞれ別の短剣が握られている、左手には面白みのない安物のダガー、右手には長老が使ってた短剣を…いや、長老は「コガタナ」って言ってたか?長老が滅多に手に入らないとは言ってたが…発音がよく分らなかったな。まぁいい、名前は確か
「不動行光だったかなっ!」
「何の…話だ!」
再び金属音、しかし今度は俺が攻め手だ、まだ俺の武器の出所が気になるらしい、言葉遣いも乱れてるしな。
<おおっと、住人からの情報通り。ここ、北西区十七番街でも戦闘が行われています!奥に見えるのはラディーア代表のフロンゾ選手ですが…?こちらに近いあの方は誰でしょう、私も認識しておりません>
「なっ…しかし、イレーナさんとれ「ちょっとお静かに!」」
言われる前に跳びかかり皆まで言わせない、ここで正体をばらされたりしたら溜まったもんじゃない、ちょっと動揺させて逃げるつもりだったがそうも行かなくなったな…まっ久しぶりに短剣使えるからいいか。
「くっ…邪魔をするなぁ!」
「いやいや、そう言う大会でしょうがぁ!」
「くそっくそっくそっ!」
「言葉が汚くなってるぞ色男!」
俺がフェイントを入れつつ右に左と攻め続け、男…フロンゾとやらはこちらの勢いに乗せられるままだ、隠唱をする余裕もないようだな。
だったら…
「はぁ…はぁ…」
「はっ!やっぱり、息切れか!喋ってばかりだから…ひゅぅ…そうなるんだよ!」
<フロンゾ選手の言う通りです!謎の選手Aは息切れを起こしています!これは攻守逆転かぁ!?>
此方の喘ぎに嬉々とした表情でそう告げるフロンゾ、くそっ…!
「くっ…しつ…はぁ…こい…!」
「ひゅー…ひゅー…くぅ!?」
<両者よく耐えています!フロンゾ選手の防御とA選手のスタミナどちらが…>
「うくっ…!?」
<おおーっと!A選手、足がよろけてしまったぁー!これはヤバイ!>
<いや、そうとも言えません>
「もらったぁー!!」
勢いを無くし、ふらつき膝をついた俺に一番最初の様に真っ直ぐ長剣を振り下ろして来る。こいつは殺したらダメと言う話を聞いてなかったのか?
<どういう事でしょうか?ヴァルターさん>
<私から言わせてもらうと彼の足がよろけたのは―>
<よろけたのは?>
<わざとです>
「何が…「もらったぁー!!」だ!」
「なっ!」
いやいや、二度目だがまんま引っかかった時の顔はたまらんなぁ!振り下ろして来る長剣をあっさり後ろに躱す、勿論横に躱した方が攻撃に転じやすいのだが、…それじゃあオレが面白くない…!
[変幻流剣術…"蛇の型:絡み突き"]
「ひっ…!」
両腕を鞭腕に変化、全長一メッセほど、そんな腕で馬鹿の腕に絡みつく。短剣を腕にに当て、なるべくく悍ましく、蛇を連想させるように、肌をゆっくりと這い上がって行く。這い上がるたびに腕には血の線が出来る、殺さぬ様に太い血管は避け、的確に腱を断っていく…
「ひっひいい…い、痛てぇ…!」
<なっ…あれはどんな魔術…いや、もしや魔物!?あ、あれは魔物じゃあ無いんでしょうか、魔映器の前の皆さん!これは生放送です!う、嘘じゃありません。目の前にお、起こっている事はじ、事実です!>
「かっかっかっ…!」
オレの喉から思わずひくつかせるような笑いが出る、フロンゾの脅える顔が滑稽で仕方がない、痛みに歪む顔でこちらの顔は愉悦に歪む。自分が今この男を支配している…そんな嗜虐的な気分に…反吐が出る。
「危ねぇ所だった、悪ぃなもう終わりにしてやるよ」
「ひいい…こ、殺さないでくれぇ…!」
[…変幻流剣術…"蛇の型:咬みつき"]
「うっぐぅ…!!」
いつの間にか肩まで這い上がり残り二十セイン程になっていた腕をしならせ、フロンゾの肩甲骨の辺りに深々と突き刺す。
「医療班は充実してるみたいだからな、勘弁してくれよ」
痛みで失神寸前のフロンゾの指輪をそっと抜き取る、よし、これでラディーアは三人…もしくは二人か。
「あらよっ!」
「がっ…」
もうすでに半ばまでなくなっていた意識を、こめかみに一撃あて、すっぱりと無くす。ふぅ…にしても今のはなんだ?何時もの俺ならあそこま愉悦には浸ってないはず…俺も一年戦って来てある程度愉悦を覚えるのには慣れて来たが…今のは…いや、言い訳だな。
「ふぅ…なんだ?まだいたのか?」
<ひ、ひぃ!みみみ…見られてしまいました、皆さん私はこれでお終いのようです…さようなら…>
<大丈夫ですよ、ボレント殿。彼は人間です>
<ああ、あんな人間は居ないでしょう!?>
<信じられないと思いますが、あのように体を変えるのが彼の異能なのです>
<い、異能!?あれが!?>
<ええ、それこそが彼の異能名…"変化士"です>
<し、知り合いなのですか?>
<ええ、ちょっとした…>
「おいおい、それ以上は…」
<という事なので>
<き、気にはなりますが…いずれかは明かしてくれるんでしょうか?A選手>
「ああ~…まぁ当てられてたら、正直に言うさ」
<とのことです。皆さん期待して待ちましょう…ん?次は北西区二十二番で戦闘の様子です。それでは移動の間コマーシャルをどうぞ>
…やれやれ、復帰速いな。しかし二十二番街…もしかしたらシュヴェルトさんか?
午前九時三十分―side change→
どうも,生意気ナポレオンです.
はい,今回ルフト出ずっぱりでしたね…本当色んな場面にころころ変わる予定だったんですが…まだちょっと自分には早かったみたいです(* ̄_ ̄)
さて,次回は最後に書いてある通りにシュヴェルトのとっつぁんです,ほんの少しお楽しみに!