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人魔のはみ出し者  作者: 生意気ナポレオン
第二章:まっありきたりな大会編
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第二十二話:説明の後会話,粛々と交渉

先に注意をさせていただきます…今回,説明回です(汗)



失笑に耐えながらも宣誓を終えた後、ギルド会長がゆっくりとマイクに口を近付ける。

「二人とも有り難う…そして、観客の皆様…静粛に」

会長のそのたった一言で崩れた空気が一気に引き締まる。良く蓄えられた髭、落ち着いた物腰、鋭いと言うよりはやわらかい眼差しだが、そこには今までに蓄積してきた経験や知恵からくる自身に満ちた目をしている。

一言で表すなら"カリスマ"という物を感じる人、誰もがそう言うだろう。

「有り難う、これから少々大事な話をするものでな」

大事な話…?ルールの確認か何かだろうか?だったら小冊子か何かを配ればいいと思うのだが…

「此処にいる皆はご存じだろうが、この大会は毎年試合方法が変わる。一昨年はこちらで用意した者達から逃げ続ける"生存戦"、去年は原点に立ちかえってのここでの二対二でのトーナメント戦"将軍戦"、まぁこの"将軍戦"は不評だったんだが…」

そういって会長が苦笑をすると場内に少し笑い声がつつむ。程よく緩んだ空気、しかしその空気は会長の一言で再び引き締まる。

「そして…今年の試合方法は…"救出戦"に決まった」

「救出戦…?」「今年はあれをやるレベルなのか…?」「しかし、さっきの選手宣誓の奴はそうは…」

救出戦…救出って何を助けるんだ?

「皆の言いたい事は分かる、だがまずは代表にルールを説明させてくれたまえ」

先ほどよりも若干ざわつきが長かったが、会長の言葉で場内が一端落ち着く。

「この救出戦は今ここにいる二人の代表とさらに二人まで"副将"として代表メンバーに入れることが出来、全滅した組から敗退となる…此処までは至ってシンプルな内容だ」

確かに追加でメンバーを入れることが出来るとは意外だったが、単純で分かり易いな。にしても副将ねぇ…だったらディーガン辺りを仲間にするのが現実的か…

「この救出戦では二人組、三人組の場合は一人が、四人組の場合には二人に重傷を負ってもらう」

「なっ…!」

思わず声が出てしまう、重傷を負ってもらう?どういう事だ!?

「すまない、言い方が悪かったな。正確に言えば、基本的には手か足に重傷と思われるほどの呪いをかけて戦ってもらうのだが、メンバーが三人になった際には一人の手足に呪いをかけて戦ってもらう。つまりは一本の手か足もしくは両方がが拘束された状態、麻痺で動かなくなったと考えて貰いたい。勿論、これだけでは重傷とは言えない。この呪いは時間と共に進行し、最終的には全身が動かせなくなる。そして、救出組と重症者組は目隠しをしそれぞれ離れた位置から開始してもらう。また、先に注意をしておくが間違っても解除しようと思わない方がいい、失敗した場合には生き地獄という物を知ることが出来る仕様になっているからな。」

成程…早く合流しない不利になる、なるべく早く重傷組と合流して他の代表を潰すのが得策って事か。

「大会期間と行動範囲については、期限は明日の午前九時から最後の一組になるまで、行動範囲はこの街の中ならば何処でも可。禁止行為は先程も言ったが関わっていないものに対する戦闘行為の他に、殺人行為などの法律を犯すもの全般。何か、質問のある者は?」

「"倒した"とされる基準は?」

美男子…いや、美男子と言うよりは美少年と言った方が正しいか?まぁそんな感じの銀髪の男がそう言った。俺が聞こうとした事だったからありがたい…って見たら睨まれた、なんでだ?

「おお…それを忘れていたな。敗北条件はこの式の後に配られる指輪をとられる事だ。この指輪は絶対に右の薬指に付けなければならない、外した場合は…言わずともわかるだろう。この指輪をとる際には禁止行為に触れない限り何をしようと構わん、つまり…指を切り落として奪おうとも構わん。残酷だという物もあろうが今は戦時、戦争中はこれ以上にむごいことだって平気で起こる、指輪が首輪じゃなかっただけ良いと思ってもらいたい。それに治療に関しては各ギルドから最上級の"救世士"を呼んである、指を切られても元の状態まで戻すことは可能だ、安心してほしい。他には?………何もないようだな、では…」

「おい、ちょっと待ってくれ!今年の奴らで本当にやるのか?そいつを見る限り、今年がその年とは思えねぇんだがな」

そいつと指さされたのは勿論俺だ、この見た目やはり失敗だったか…。ちょっと落ち込む俺をよそに会長がゆっくりと話し始めた。

「ふむ、皆が不安になるのも無理はない。この試合方法で優勝した物は例外なく"将軍"以上の地位を誘われると言われておるしな…故にこの試合方法は優秀な者が集まった時にしか選ばれない、だが今回ここに集まった代表たちには、この方法で戦うにふさわしいと確信している。それに…今回、二人組であるとはいえギルドの新人による依頼達成数が過去最高の者がいる」

「な…あの"剛塵剣"の記録を…!?」「一体どの組なんだ…?」「あの組じゃない…?」

…ここで何処の組なんだ…?なんて思ってたらいいんだろうが、生憎どの奴等だかは分ってる、出来れば言わないで欲しいと言うのが今の心情だ…

「今回、選手宣誓をしてもらった、ルフト=ゼーレ・イレーナ=ルートナイされている、目は。この二人組である。」

「「「なっ…!」」」

場内が騒然とし、観客は口外に「ホントに此奴が?」と言う目線で統一口ほど物を言うって本当だったんだな。。

「おいおい、ちょっと待ってくれ、そいつぐらいなら俺でも倒せるように見えるぜ?どうせ、此奴がこなした依頼なんて落し物探しかなんかだろ?」

観客の一人がそう言う、圧巻の小物台詞だな。

「ふむ、君は見た目で人や物事を判断するなと言われなかったのかね?」

「し、しかし…どう見てもそいつは…」

「はぁ…言いたい事は分かる。だがそれも今回の大会で分かる事だろう、少し落ち着きたまえ。ここにいる皆もだ、それ以外の質問は無いな?では、解散」



◇◆◇◆◇◆◇とある喫茶店にて◇◆◇◆◇◆◇



「いやしかし…何の情報も無いとは…」

思わず愚痴ってしまう、だがあの後細かい手続きや指輪を貰ったりしたのだが、他の代表の武器や資格はもちろん、名前すら教えてもらえなかったのだしょうがない事ではなかろうか。

「しょうがないだろう、より実戦に近い様に…だ」

「そうは言っても…名前ぐらいは、ねぇ?」

「試合の展開は放送されるらしいからな、その放送で名前が出ても分からない様にだろう」

「そう言われるとな~誰かあの中に知ってる奴は居たか?」

「…ああ、居た」

「へっ?」

「ラディーアの代表に,私の親友と弟がいた」

「弟?となると異能者だって言ってた…?」

「ああ、名前はヴェルデン,異能名"為政者"」

「為政者?名前だけだと名君になるタイプの異能じゃないか?それ」

「ああ、確かにあいつは頭が良くて口が回った、しかし私が知っているのはそれまでだ、恐らく"拳通士"の時の様にもう一つ何か能力を持っているんだろうが…私には分からん」

「何かおかしなところが、とか何かおかしなことが起こった、とかは無いのか?」

「………そうだな、あいつが喧嘩しているのを止めようとしたことがあるんだが…その相手が殴りかかろうとした途端、地面に倒れ込んでいたな…まるで錘を乗せられたみたいだった。おかしなところは…そうだな、たまに何だがあいつが嫌に感情的になるときがあった…様な気がする」

重力を操る…?いやそれは闇の魔術でも可能だよな…、だったらなんだ為政者…分らないな。

「…とりあえず異能の事は後回しだ。親友の方の名前は?」

「チューリ=フェミーネ。ラディーア魔術師養成学校、一般魔術科主席、短大部卒…こんな所だな、私に分かるのは」

「一般魔術科…って言う事は資格は?」

「持っていなかった、だがそれは昔の話だ、一年あればチューリの実力なら、三つは資格を取れる」

「主席は伊達じゃないって事か…とんだエリートがいたもんだな」

「全くだ、なぜギルドなんかに…っとこういうと悪いか」

「そうだぞ、一応俺達の職場なんだから…まっそう言いたくなる気持ちもわかるけどな、特に弟の方は"為政者"なんて異能持ってるんだ、余裕で政治家に慣れただろうに」

「それは私もそう思った、あいつ自政治家になるのに前向きだったのにな…まぁそこまで気にしてる余裕は私達には無いか」

「それもそうだな、それじゃあそろそろ行くか」

「ああ、今から出たら丁度だろう」

そう言うと俺とイレーナは同時に立ち上がり、会計の板を押し付け合った。



◇◆◇◆◇◆◇ガレアータ邸にて◇◆◇◆◇◆◇



大きな机一面に置かれる空になった皿、俺とイレーナはシュヴェルトさんに夕食に誘われていたのだ。

実際には夕食と言うのは建前で今回の大会に参戦してもらう為の話し合いが本題だ。今回の大会では大なり小なり怪我をするのは間違いない、となるとその危険に見合った額の報酬を払うのは必然だ。その"見合った額"は依頼する側とされる側で違う、それを交渉するために来た訳だ。幸いギルドからは支援金を貰ってる、結構な額だしなんとかなるだろう。ちなみにイレーナは「交渉についてはお前が適任」と、椅子で目を瞑って何かを考えている

「どうした、ルフト。そんな険しい顔して」

「いや、なんでもないですよ。シュヴェルトさん」

「そうか?なら良いんだけどよ。それじゃ腹も膨れたし、本題に入るぞ」

「ええ、そうしましょう」

「お前らの来た理由は分かる、明日からの大会に副将として加わってほしいんだろ?うちの馬鹿に」

「ええ…そうなんですけど…ディーガンは何処に?」

「今は部屋で武器やらなんやらの点検だ、あの馬鹿は協力する気満々だ、安心しろ」

「はっ?いやいや、まだ報酬の話とかしてないんですけど…」

「おいおい、それは俺にする話じゃねぇ、あいつとする話だだ、まぁ俺にもしてもらうことになるんだがな」

「え…いや、それは…!」

「ああ、本当は観戦するつもりだったんだが…こと"救出戦"と成ったら他のギルドの古株が出るかもわからねぇ、"剛塵剣"シュヴェルト御年四十六歳参戦させて貰うぞ」

「あ、ありがとうございます…それじゃあ、報酬の…」

「ああ、それならもう決めてある、これ以上は動く気はない」

そう言って何か文字が書かれた紙をこちらに差し渡して来る。これは厄介だぞ…この態度、梃子でも動きそうにない…一体いくらぐらい…

「って…シュヴェルトさん、どういう事ですか?これ」

「ああん!?そのまんまだよ、そのまんま。額はお前が俺達の戦果を見て決めろ、それだけの簡単な話さ」

「…はぁ…了解です」

いや、円満に進んだのは良いんだけどさ。なんか、こう…舌戦!みたいな事があると思ったんだよ、俺は。

「それじゃあ、作戦を話し合いたいんでディーガンを呼んでくれますか?」

「ああ、了解だ」

その後作戦会議は夜が明けるまで続いたとか言ってみたいが…実際には二時間程で終わった。


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