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最初に通った廊下は曇りない透明感さえ感じる白さだったが、壁も床も安っぽい間に合わせたこの場所は、基本的に使用人のみが使い、女帝や、その廷臣達が見ることもないのだろうと想像する。

ゆっくりと息を殺して進む、わずかな物音にも肩を震わせて壁に沿って出来るだけ身体を隠そうと身を縮めた。

「おかしい、人がいないなんて考えられない」

 イリュージアが怪訝そうに周囲を見回した。

 歩くたびに二人を繋いだ鎖がシャラシャラ音を立てる。その音にびくつきながら歩いていた私は、イリュージアが考え込むのを止めた。

「何か起こっているの確実なんだから、とにかく急いで隠れる場所まで行きましょう。考えるのはその後にしなさい」

 再び歩き出し、非常扉と思われる場所から外階段に出た。その階段は建物に巻きつくように取り付けられている。

 そして初めて私はこの宮殿の外観と周囲を見ることが出来た。

 私の予想通り、城壁も白く雲の様な浮き彫りで装飾されていた。城の周囲には同じく白いやや小規模な建物が点在しており、その周囲は植物が生い茂っていた。

 そして、一つだけ、どす黒い塔に似た建物が建っていた。

「あちらは、ほとんど人の出入りがありません」

 そう言って、見下ろした庭園も周囲の建物の周りにも誰もいなかった。 

「いつもこんな状態なの?」

 そう呟く私の声は掠れていた。

「いえ、周辺警備の人間がいないはずないんです」

 その言葉に、私は身も凍りつくような恐怖を感じた。

その言葉に、私は身も凍りつくような恐怖を感じた。

これは正真正銘ただ事ではない。さもなければ常に持ち場に立たねばならない人間がいなくなるはずがない。

 今も宮殿にいる他の仲間は無事だろうか。ずしりと胃辺りに重くのしかかってくるような気がした。

 いっそ逆戻りして宮殿に戻り仲間を捜そうとも思ったがイリュージアを見て考え直した。

 さっき狙われたのはイリュージアで、私はとばっちりを食っただけかもしれない、しかし私のほうこそ狙われたのかもしれないし、二人共という可能性もある。

 そうなると、彼らの元に私が戻ることは危険を倍増させることになるかもしれない。

 ぐるぐると考えて、それでも私達は歩いていた。


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