親友に彼女ができた関係上、私は親友にお菓子をたかることができなくなった。これは困った。
まずいことになった。私の親友の男子に彼女ができた。転校生の美人である。非常にまずいことになった。
「……どうしようかなこれ」
放課後、小中高一貫のちょっと良い学園。誰もいない図書室の中。私は頭を抱える。ぶっちゃけると、長年連れ添った幼馴染を取られた悲しみはない。負けヒロインぶるつもりはない。なので『最愛の人を奪われて心が弱ってる状態の女の子を狙ってナンパしてやろう』みたいな思惑を持っている男どもはお帰りください。即座に。
私が抱えている最大の問題、それは――――私のたむろする場所が無くなることである。
「……どーすっかなぁ」
端的に言うと、友達のあいつはプチ金持ちである。自分自身もバイトしてるし、親もなんか有名企業の秘書職だとかで、金銭的余裕がとてもある。つまり、あいつの家に行けば手に入るのだ。珍しいお菓子が! 最新のゲーム機が! 自家用カラオケルームが!
こういう言い方をすると、私があいつのことをカモにしているように思われるかもしれない。さすがにそんなことはない。自分ではそう思っている。
――――ただし、あいつは転校生のことを『たかってこないから好き』と語っていた。
「もうオチてんじゃん……」
独り言が止まらない。どうしようか本当に迷う。ここであいつに彼女が――――最優先で家の中に連れ込むべき存在ができてしまったら――――他の女を連れ込めない理由が出来たら――――私は今後どうやってドイツ製の高級チョコレートを手に入れればいいのだ。どうやって高画質のディスプレイでFPSゲームをすればいいのだ。助けてほしい。
「……あいつさぁ」
転校生の美少女は、本当に美少女である。どこかはかなげな感じもする。完膚なきまでにラブコメヒロインである。私に勝てるところが見当たらない。本当に見当たらない。同じ土俵にすら立てていない。
というかあんな美少女出てきたら反則だろ。ゲームセットですよ本当に。こっちは生まれ持った物だけで戦ってるのに。あいつ絶対整形してるだろ。高校生のクセに。
「……助けてくれぇ」
マジでやりようがない。だが、私にもやりようはある。転校生は所詮転校生。しかし私には、あいつとのとてつもなく長い付き合いがあるのである。10年だぞ。10年。経験では勝てる。あいつの好物の料理とかは大体知っている。まぁ私は料理できないんだけどね。
――――ちなみに、例の転校生美少女は料理できます。見事ですね。
「詰んだ」
長い長い独り言もこれにて終わった。まぁ、たかった私が悪い。あいつにお菓子とかをたかる量を少なくすれば、あるいはちゃんと親しき中にも礼儀あり的な態度で挑めば、もっと違う未来があったかもしれない。
あいつとデートして、あいつとジェットコースターとかに乗って、あいつとキスして……あいつと幸せな未来を……ごめん、あいつにそこまでの魅力ないわ。
「……私はチョコレートと高画質ディスプレイに惹かれていた、ってこと!?」
思わぬ真相にたどり着いてしまった……いやいや、そんなわけない。さすがにあいつはまぁまぁかっこいいし、プチ金持ちじゃなかったとしても、あいつと私は仲良くなっていたはずだ。きっと! いや絶対!
そうこうしていたら、図書室にだれか入って来た……うわっ、あいつが来たよ。友達のあいつが。私は軽く挨拶してやる。
「……よぉ、彼女持ち。転校生とは元気にやってんのかい?」
「その言い方やめてくださいよ……」
「仕方ねぇだろ。まぁ座れよ」
私と向かい合わせに座ってきた、小柄だが必要以上にナヨナヨはしない感じの男子。彼は私に向かって、こう言った。
「まったく、先生はいつもそういう性格ですね……」
小中高一貫のちょっと良い学園で知り合ったこいつとの関係をどうするのか、今後の課題である。




