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カピバラキング

作者: ぜき呑
掲載日:2026/06/05

「雪崩? やばいやばい! みんな早く逃げろ! 早く!」


▽▽▽


 俺たち五人は信州の山に来ていた。

 別に雪山登山が趣味の集まりでは無く、仲の良いグループでの大学卒業旅行である。

 ひなびた温泉にしようと盛り上がり、こっちは夕飯が美味しそうとか、あっちは露天風呂が大きいなど楽しい議論の末に決まった旅行だった。


 俺は、この五人組のまあ、自称まとめ役みたいはもので『ゲン』と呼ばれている。

 あとは冷静なタイプというか冷めている男の『ソウ』、しっかりお姉さんの『キコ』、大人しい童顔娘の『エリ』、そして、なんだかつかみようの無い自由な男『タツ』である。


 雪道の影響で、旅館に着いたのは夕方になってしまったが、それぞれ温泉に入り、宴会場での夕食の後に、男の3人部屋に皆が集まって地酒なんて飲みながら大学の思い出話をしつつ、どこを観光しようやら、名物はどこで食べようなど楽しく過ごした。


 翌朝、朝風呂と朝食の後に、しっかりお姉さんのキコが旅館にあった観光案内を見ながら軽い感じで言った。


「近くの山に展望台があるってさ。街を一望できるみたい」

「エリも見てみたい……」


 でも、雪で登れんやろ。俺は体力に自信あるからいいけどな


「僕も展望台に行くのは賛成だな。観光客も多いし、道も踏み固められてるんじゃないかな?」

「オイラは雷鳥が見たい」


 いや、そんなポンポンとその辺に雷鳥いないだろと、タツに言いながら、じゃあ、行くだけ行ってみようかということになった。


 近くまで行くとロープウェイがあるみたいだ。普通に動いている。でも、観光客はほとんどいないし、ロープウェイに乗る人は誰もいない。

 市営なので格安ということもあり、5人貸切り状態でロープウェイに乗車したんだけど、全方向が真っ白でなにも分からんわ。


 展望台近くの中腹で下車するも誰もいない。観光客どころか売店も閉まってるし。


「こりゃ、このまま引き返したほうが良さそうだな」


 俺は皆に言ってみたが、展望台はすぐそこだから行ってみようと他の四人は斜面を登って行く。仕方ない、俺も行くか。

 案の定、展望台からも真っ白だねぇ以外の感想はなく、さて帰ろうとしたらタツがいつも通りの意味不明な行動を取る。


「雷鳥だ! いやシマエナガかも?」


 いやいや、全くビジュアルが違う鳥だからね。と思いながらも危ないから横道に入るなと注意しようとしたらなんか変な斜面をゴロゴロと転がり落ちて行ったわ。


「お~い! 大丈夫かぁ!」 ちょっと焦る。


「笑いながら落ちているから平気でしょ」

「……いつものことだし」

「そもそもシマエナガは北海道しかいないよね」


 みんな冷静過ぎないかな。とりあえず助けに行かないと。

 一歩一歩、確認しながらみんなで斜面を降りて行くと、タツは雪に埋まっていた。だから気をつけろと言うてんねん!


「まあ、これも笑い話になるからいいでしょ」

「とっとと引っ張り上げて展望台まで戻りますかね」


 怪我が無くて良かったと思いながら、ふと、エリを見ると山頂を見ていた。

 どうした? と聞こうとしたら


「なんか音がする。地面もちょい揺れてる気がする……」


 そうかなぁと思いながら山頂を見ると確かに何か不自然な感じがする。これは、まさか?


「雪崩? やばいやばい! みんな早く逃げろ! 早く!」


 そして、皆、雪崩に巻き込まれた……。


▽▽▽


 気がつくと室内にいた。ベッドに寝かされているから救助されたのだろうか。確か雪崩に巻き込まれたことまでしか覚えていない。

 ふと周りを見ると四人とも寝かされていた。生きているよな。


「おい! みんな大丈夫か? 怪我とかしていないか!」


 四人はふらふらしながら体を起こす。


「僕は大丈夫かな」ソウは体を触りながら答える。

「エリも平気……」

「全く、タツのせいで大変なことになったわ」


 タツはニコニコしながら「雪崩にあったの初めて」とか言っている。当たり前だ。そんなに頻繁にあってたまるか。


「皆様、ご無事でなによりです」


 突然、声をかけられてあわてて入口を見る。困った顔をしたお爺さんがゆっくり近づいてきた。


 あきらかに日本人じゃないな。中世っぽい恰好だし、まさかね?

 四人とも意味不明な感じでお爺さんの言葉を待っている。


「ここは皆様からすると異世界となります。実は皆様にお願いしたいことがありましてご足労願った次第です」


 まさかが当たってしまったか。そして色々説明するからと別室に案内された。


「突然の召喚でご迷惑おかけしました。ただ、これは皆様にとっても良いことになると思います。いや、なって頂きたいと思っています。皆様にも、我々にも」


 そこでこの国の事情を聞かされた。

 お爺さんはこの連合国の筆頭宰相で政治を仕切っている人だということ。かなり偉いのかな。十か国ある国をまとめているくらいだから有能なのだろう。

 そして、この召喚は魔力の高く優秀なスキルを持つ人が事故などで死にそうな場合、自動で送り込まれてくること。

 それに俺たち五人が適合したとのことだが、魔力とかスキルってなんだよって話だな。


 現在、魔王国と戦争になる直前で是非に魔王を討ち果たして頂きたいということだが、そんなこと言われてもなぁ。でも、召喚されてなければ死んでいたんだろうってことは何となく理解できる。あの雪崩の瞬間に、ああ、これ死んだなと思ったし。


「あの…… 質問いいですか? 俺達って平和な国から来たんで、戦うとか言われても良く分かりませんし、具体的に何をさせたいんですか?」


「ゲン殿、皆様の戦闘力、魔力、スキルはこれから調べます。戦い方も精鋭部隊が指導します。どうかどうか我々をお救いください」


 すごく偉い人なんだろうけど土下座しそうな雰囲気で頼まれたわ。土下座の文化があるかどうかは知らんけど。しかしなぁ、負け戦な気がするなぁ。


 そこまで黙って聞いていたキコが話し合いに参加する。


「宰相殿、 私から三つ質問があります」


 宰相は姿勢を正し、次の言葉を待つ。


「一つ目ですが、私達は元の世界に帰れますか?」


「キコ殿でしたね。ご質問にお答えします。帰られるかどうか分かりません。申し訳ありません。但し、可能性は充分ありますとしか言えません」


 キコは良く分からないという顔で再度聞き直す。


「可能性とは?」


「この世界は魔族を倒せば、そのスキルを奪えます。実は魔王は異世界移動が簡易に出来る力があるようです。従いまして魔王を倒して頂ければ皆様がその力を得られますのでご帰還できる可能性が高いということです」


 何だかフワっとした回答だな。倒してみないとよく分からんということか。


「二つ目の質問です。連合国と魔王国との戦力差はどれくらいですか?」


 宰相は泣きそうになりながら答える。


「兵力は連合国が三十倍は多いのです。それでも勝てるかどうか難しいのが実情です。魔族はそれほど強いのです。その頂点に立つ魔王がどれほどの力があるかが未知数なのが恐ろしく、今回のような自動召喚の設定に頼ることになりました」


 自動召喚って言っちゃったな。まあ、あの雪崩のまま死ぬより良いのかな? つうか魔族怖えな! そんなに強いのかよ。


「では、最後の三つ目の質問です。休戦あるいは和解の道は無いのですか?」


 宰相は魂を振り絞るように叫ぶ。


「無いのです! 我々が亡ぶか相手が亡ぶかしかありません! どちらかが滅亡するしか無いのです!」


 重いわぁ。 でも、タツはマイペースで部屋の中をウロウロ歩いていたな。こいつはどこでも生きていけるタイプだなと、あらためて思う。

 あんなに辛いことがあってもいつもニコニコしている。俺には出来ないな、でも、タツは絶対に泣き顔を見せないよ。もしかしたら一番強いのはタツなのかなと思う。


 何だかよく分からない状況だけどとりあえず能力を調べる部屋に連れて行かれました。

 でかい水晶みたいなもんに手をかざすと能力が分かるとかなんとか。

 はい、結果でました。


ゲン  勇者

キコ  聖女

エリ  魔道士 

ソウ  剣聖

タツ  魔獣の家族(魔獣は本人の適性により決定)


 ベタな職業が並んだものである。しかし、タツだけは変化球だな。魔獣の家族ってなんだ? ドラゴンとか呼ぶのかな。俺たちが食われそうだけど。


「宰相さん。これって良いのか悪いのかどんな感じですか?」


 宰相は満面の笑みでこの上なく素晴らしいと答えた。但し、タツはまだ分からんみたいだけど。

 装備もアイテムも連合国最高のものをくれるらしい。まあ、そりゃ滅亡したらいらなくなるからね。出し惜しみはしないだろうさ。


 次に大きい部屋に連れて行かれた。訓練施設だとか言っていた。そこに戦闘指導の騎士やら魔法使いやらがいるらしい。

 そこでそれぞれの職業の武具を持つと身体能力やら魔力やらが一気にあがるとか。


 俺は勇者用の聖剣みたいなやつを持ってみた。重てえな、持ち上がらんぞ、これ。

 と、思っていたら体が光って力がみなぎってきた。

 キコ、エリ、ソウも同じようで、不思議そうに手のひらとか見つめていたわ。

 ただ、タツは何も武器がないので首をかしげていたけど。


「タツはどうするんですか?」


 宰相に聞いてみると地面に手を当てれば家族になる魔獣がせりだすと言う。

 言われたタツはすぐやろうとするも宰相に止められた。デカいのが出ると危険なので、皆が大きく距離を取ってからにしてくれとのことらしい。そうりゃそうだね。


 そしてタツが珍しく真剣な顔をして地面に手を当てると魔法陣みたいな模様が浮かび上がってその魔獣が飛び出してきた。


「カピバラ……」


 うん、どっからどう見てもカピバラだな。タツは大喜びしているけどその魔獣じゃ戦えないよ。リンゴとか無いですか?って聞いているけどそもそもこの世界にリンゴがあるかどうか分からないでしょ。

 慌ててタツ以外の四人で打ち合わせを始める。さすがにタツは連れて行けないという話をしたら皆も同意してくれた。カピバラがかわいそうってね。


「あぁ、タツさぁ。うちら四人で戦うからしばらく待っていてくれるかな。別に仲間外れにするつもりは無いけど、さすがにカピバラ連れて魔王のところ行けないだろ」


 これにはタツも同意してくれた。でもせっかく異世界来たからカピバラと一緒に色々散歩とかしたいってさ。


「オイラどうしよう? 異世界と言えばマヨネーズを作るのが基本かな?」


 うんうん、マヨネーズが王道だね、あとは唐揚げとかトンカツとか絶賛されるよね。

 あとは、実は王家の血筋だったとか、婚約破棄とかされればいいんじゃないかな。子犬を拾ったらフェンリルとかあるけどカピバラ食べられちゃうな。


 そんなことを考えていたらあわてた様子の兵士が訓練施設に走りこんで来たわ。

 宰相への緊急な報告らしいけど、俺たちに聞かせちゃっていいのかな?


 なんでも、魔王に異世界召喚したのがバレたらしい。そこで両国の国民に被害が出ないよう魔王城で待っているから直接来いとのこと。そこで魔王と異世界召喚メンバーで直接対決して決着をつけようということだとか。うん、国民に被害が無いのはいいね。意外と良識のある魔王みたいで良かった、良かった。


 そして決戦日は一か月後だとか。訓練期間が短いなぁ。延長してくれないかな? カラオケ屋みたいなシステムは無いか。


「皆様、このような形になりまして誠に申し訳ございません。これから一か月にわたり、できることは全てさせて頂きますので、よろしくお願い致します。人が滅びるか魔族が滅びるかの最後の戦いとなります」


 宰相も泣きそうだよ。泣きたいのはこっちだけどな。ふと周りを見ればみんな深刻な表情をしている。タツはカピバラと遊んでいるけど。


「宰相さん! やるだけやってみましょう。俺たちも頑張りますのでこちらこそお願いします」


 愚痴っても仕方ない。他に選択肢も無いのだし、イチかバチかみたいな感じだけどやるしか無いよな。みんな不安そうだけど盛り上げるのは俺の役割だな。俺だって怖いけど。

 タツ見てちょっと落ち着こう。カピバラ触らせてくれないかな。


 それから俺たち四人は一か月間、必死に訓練した。もう、人生でこんなに一生懸命やったことないわってくらい訓練した。それでも全然自信は無いけど、やるだけやった感じはある。タツは色々な村とか見てまわっているらしい、うん、アイツはそれで良い。


「僕たちは大きく成長したよね」

「死ななければ私が絶対回復するから」

「……大魔法連発で倒す」


 いよいよ決戦日が近づき、連合国十万の兵と共に魔王城へ乗り込むことになった。

 万が一、罠だった場合を考えて兵を連れて行くそうだが、魔王城では正門が開かれ、牛みたいな大きい魔族に案内されて魔王の座る玉座の間に来た。デカい牛さんは余裕の表情だな、負ける気は全然してない感じか。


 魔王が余裕の態度でワインみたいなもん飲んでるよ。しかし、魔王ってデカいな。三メートルくらいあるんじゃね。そして、低音ボイスで話かけてくる。


「ふむ、よく来たな。ともに酒でも飲みながら異世界の話を聞きたいところだが、そんな雰囲気ではないのう」


 そりゃそうだ、戦いに来ているんだから飲んでいる場合じゃない。

 俺たちは戦闘態勢になる。いつでも行ける!


「せっかく、遠い世界からきたのだから初手は譲ろうか。好きに攻めて良いぞ」


 なめられたもんだな。三人に目配せしてから俺が初手をつける。全員、全力で行け!

 振り絞った全員攻撃のあと、魔王はグラス片手にそのまま座っていた。


「思っていたよりはやるのう。まあまあの攻撃じゃったぞ」


 傷ひとつ無い魔王が微笑みながらつぶやく。ああ、これは無理だ。力の差がありすぎる。

 周りを見ると皆が下を見ている。そうだよな、渾身の攻撃だったよな、何のダメージも与えられなかったけど。

 これでおしまいか。人は亡ぶのかな。つうか俺たちはここで死ぬんだろうな。雪崩で死んだと思えば多少は長生きできて良かったと思うところなのか。割り切れんけど。


 ひざまづいてしまった俺たちの前にタツがいた。もちろん、カピバラも一緒に。


「このカピバラ兄さんが相手だ!」


 いやいや、タツさんよ。帰りなさい。カピバラがかわいそうでしょ。つうか兄さんなのかよ。

 でも、魔王の様子がおかしいな。何がどうした?


「……我には攻撃できぬ!」


 なんでやねん! と思ったが、やはり、そばにいた牛さん魔族が魔王に進言する。


「魔王様、攻めねば魔族が亡んでしまいます」

「だったらお前が攻撃してみろよ。こんなかわいい生き物に魔法とか当てられるならな」


 牛さんもカピバラを見て、「できません」とか言ってるし。かわいいって強いな。

 そこでタツがニコニコしながら魔王に話しかける。


「魔王様、そして連合国の皆さん! オイラたち五人が問題の解決をしますので争いは止めましょう。大丈夫、大丈夫」


 何が大丈夫なのか適当なこと言ってんな! と怒るところだが聞いて納得。そういうことね。


 どうやら魔族と人の争いは領土ではなく食糧問題とのこと。

 タツが色々な村に行って聞いた話だと、適当に種や苗を植えてあとは魔法で育てているらしい。そして、土地が荒れて収穫が減った結果が、この戦争らしい。


 詳しく聞けば、まあ、荒っぽいこと。

 肥料使ってない!(ふざけるな) 農薬が無い!(自然由来のもあるわ) ほぼ小麦しか作っていない!(色々作れや) 季節に関係なく栽培している!(農業なんだと思っている)


 そう、俺たちは農学部の大学生だった。もう卒業したけど。

 実家もみんな農業だから専門知識も実地作業の経験も嫌ってほど詳しいわ。

 初めから言ってくれよ。勇者とか無理にやるより役にたつ知識あるよ。


「あのぅ、俺たち農学部の大学生だったのでお役に立てると思いますけど」


 俺は初めから説明をする。農学部って何?からの説明だったけど。


「僕は肥料を専門的に勉強していたから任せてください」

「……エリは天候と土壌を見て、適した作物を考える」

「水は豊富にあるのかしら?」


 両国とも水は豊富らしい。ならばどうにかなるな。

 五人で段取りを検討し始めたが、そうだ、大事なことを聞いてないや。


「魔王様、食糧問題を解決したら俺たちを元の世界に戻してもらえますか?」

「簡単なことよ、場所も時間も変えて戻せるな」


 それは助かる。全く同じ状況で戻っても雪の中じゃどうにもならんし。


 玉座を見るとカピバラが座っている。って言うか乗っている。怒られるから降ろしさい、タツさんよ。


「いや、かまわぬ。我は負けたのだから今からは彼が王となった」


 魔王カピバラ! カピバラキングだよ。いいのかそれで。

 でも、周りの魔族の皆さんもニコニコしている。いいみたいだな。


「二年もあれば大幅に改善できると思います。そうしたら巻き戻して帰らせてもらえたりしますか?」


「かまわぬぞ。何なら一度先に戻って色々準備しても良い。時々帰ってまた来てくれればありがたいな。ただし戻れば身体能力や魔法は使えぬぞ」


 いや、それだともう戻ってこないかもと宰相さんが汗かきながら必死に言っているな。まあ、その心配も分かるけど。

 勝手なことを言って申し訳ないと泣き顔で言っているけど、そんな非道なことはしないよ。


「じゃあ、オイラが人質で残るよ。皆は種とか苗とか買ってきてね」


 メロスっちゃうのか、タツよ。そんなことしなくてもちゃんと戻ってくるよ。


「オイラはこのままこっちで暮らすよ。カピバラ兄さんと別れたくないし」


 おいおいと思いながらも日本で暮らすのはやっぱりつらいのかな。

 両親を事故で無くして、その保険金で大学卒業したけど、実家の畑を見れば思い出すだろうしな。たしか他に身寄りもいないとか言っていたな。


「そんなこと言わずに最後は一緒に帰ろうぜ」さみしいじゃないか。


「タツ、あんたが一人でやっていける訳ないでしょ」

「僕も反対。行方不明扱いになると面倒かと」

「……こちらの人に迷惑かけそう」


「へへ。たまには元魔王様に頼んで帰るようにするよ。他のみんなには海外で農業しているとか言ってくれるかな」


 タツ、君って外国語が苦手だったよな。でもまぁ、ここも海外みたいなもんか。

 この世界で新しい家族ができたしな。


 そして日本から色々な作物の種などを持ってきた俺たちは小麦ばかりだった農地に様々な穀物や野菜を育てた。思っていたより順調に進み、二年後には十分な量を備蓄できるまでの豊作となった。

 俺たちの専門知識とこの世界の栽培魔法ですごいことになっていたわ。魔族のパワーで耕耘機とかもいらんし。しかし土魔法って便利だな。日本でも使いたかったわ。


▽▽▽


 そして明日、俺たち四人は日本に帰る。まあ、何回かこっそり帰って色々買い物したんだけどね。今度は雪崩のあった時の三時間前に帰ってやり直す。

 元魔王様のご厚意で五歳ほど若返らせてくれた。女性二名は大喜び。高校生のときみたいな感じだとさ。違いが分からんけど。


「タツ、ホントに一緒に帰らないのか?」


 何度もした話を蒸し返す。タツはこの世界でいわゆる農業大臣みたいな担当をしている。


「うん。たまに帰るからそのときは遊んでね。実家の畑はごめんね、面倒かける」


 俺たち5人は同県民だ。そんなこともあり、仲よくなった。タツの実家の畑はみんなで荒れないようにする約束をしていた。好きに使っていいとも言われている。


「タツ、俺たちもまた遊びにくるよ。酒でも持ってな」

「……エリは果物の苗を持ってくる。甘いやつ」

「僕は家畜の飼育を調べておく。魔族に頼めば多少荒いやつでもいけるでしょ」

「私は養殖を調べておくわ、海があるのにもったいないからね」


 みんな泣きそうだな。俺もだけど。

 再会の約束をしてタツと固い握手をする。これで一旦はお別れだ。でもまた会えるから笑顔でサヨナラだな。


 ふとタツの足元を見る。カピバラキングが眠っている。

 魔王国の国民はやさしい王様になってみんなうれしそうだ。元魔王もニコニコしている。きっと色々無理していたのかな。

 勿論、連合国の国民もうれしそう。絶対ひどいことをしない魔王だよね。かわいいし。


 いよいよ帰るとなったときに、前にタツが言っていた言葉を思い出す。

 思わず笑みがこぼれる。もう皆さん大丈夫だな、きっと。


 その言葉とは、


『魔族も人間もカピバラの前ではみんな平等』



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