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この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第一章 拒絶された初夜

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7

 翌日、目覚めるとベッドからむくりと起き上がる。

 キョロキョロと部屋を見渡し、誰もいないことを確認する。

 見慣れない調度品に最初、ここはどこだと戸惑った。


 あっ、そうか。ここはもう南部ではないのね。


 少し肌寒く感じ、ベッド脇にかけておいたガウンを羽織る。窓に近寄り、外を眺めた。


 どんよりとした曇り空だ。南部では朝からカラッとした天気が多かった。むしろ曇りの日が少ない。だが北部では、このような天気が続くという。


 雪こそ降ってはいなかったが、そろそろ降り出しそうな気がする。その証拠に空気がツンと冷えている。

 窓辺はひんやりとした空気が入り込んでくる。


 やがて控えめなノックがされたので、扉に向かい返事をした。

 そっと開かれた扉からはドリーがおずおずと顔を出した。


「シャルロット様、起きていらっしゃいましたか」

「ええ、ドリーおはよう」


 ドリーがホッとした表情を浮かべて入室してきた。手には着替えを持っている。


「さあ、こちらに着替えましょう」


 ドリーの準備したドレスに着替え、朝の身支度を終える。


「お体は辛くありませんか?」


 ドリーが髪をとかしながら、私を気遣う言葉をかけてくる。鏡越しにドリーを見つめ、返答した。


「ええ、あのベッド、すごく寝心地が良かったのよ」


 私の返答にドリーはホッとしたように頬を緩める。


「良かったです。少し心配していました」

「私、場所が変わっても眠れたわ」


 クスリと微笑む。


「それに広々としたベッドでしょう? 寝返りをうっても、両手を伸ばして眠っても大丈夫だったわ」

「…………」


 ドリーは急に無言になる。


「あ、でもあのお方は狭かったかしら。わざわざソファで寝るんですもの!」

「シャルロット様、まさか……」


 息を呑んだドリーが恐る恐るたずねた。


「ええ、そのまさかよ。私たちに初夜はなかったわ。彼から拒否されたの」


 あっけらかんと伝えると、ドリーが顔をゆがめた。


「あの男、シャルロット様に恥をかかせやがって……」


 眉をひそめ、小さくチッと舌打ちが聞こえた。

 どうやらドリーは怒っているらしかった。


「ふふ、ドリー、大丈夫よ。怒ってくれてありがとう」


 親身になってくれるドリーは、怒りを溜め込んだ形相をしている。


「でも、もしかしたら、彼には将来を誓った方がいるのかもしれないわ。なにせ、急に決まった結婚だったから」

「仮にそうだとしても、王命である以上、この婚姻は絶対です。北部の人間も考えが甘いんじゃないでしょうか。セバスティア侯爵家の秘宝と呼ばれるシャルロット様を娶ることができるなんて、どれだけ光栄なことかわかっていないのです。南部の独身男性の恨みを一身に受けるといいです」

「大げさね」


 決してそんなことはないが、ドリーの言い分にクスリと笑う。


「いっそ、もげろですわ」

「ん? もげ……?」


 首を傾げるとドリーは慌てて「なんでもありません」と言った。


「しかし、こんなに美しいシャルロット様との初夜を断るなんて、男性としての欠陥があるんじゃないですかね?」


 ドリーはズケズケと指摘してきた。


「まあ。それなら、南部のいいお医者様を紹介しましょうか」


 でも相手がなにも言ってこないのに、勝手に早合点はできない。


「北部もこの先、世継ぎに恵まれないのも困るでしょうし。治療するなら、早い方がいいわよね」

「絶対、そうですよ。でなければ、女性より男性を好むのかもしれませんね」


 ドリーが吐き捨てるように言った。


「まあ、仮にそうだとしても、カロン侯爵家を途絶えさせるわけにもいかないでしょうし」


 世継ぎを持てないのは致命的だ。

 女性に産んでもらわねば困るだろう。それが例え私じゃなくとも。


「でも、あの方、イザークは、とても北部を大事にしている様子だったわ。だから、いつか世継ぎの問題もきちんと考えると思うわ。それこそ愛人を作って産ませるかもしれないし」

「そんな……! シャルロット様がいらっしゃるのに、愛人だなんて許せません!」


 ドリーはクシを手にしたまま、プルプルと肩を震わせる。


「例えばの話よ」


 イザークに愛人がいようとも、私と彼の結婚には関係ない。好きにすればいい。

 ドリーが怒りつつも、朝の支度を終えた。


「朝食は下のダイニングだと聞いております。向かいましょう」

「ありがとう」


 扉を開けると廊下はひんやりとした空気だったので、身震いをした。


「冷えるわね」

「シャルロット様、あとから上着をお持ちしますわ」

「ええ、お願いね」


 ドリーにお礼を言い、二人でダイニングに向かった。

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