表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第一章 拒絶された初夜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/73

1

 静寂な教会に神父の声が響く。

 広い建物は全体が白く、天井が高い。ステンドグラスの窓からは光が差し込む。


 だが、雪がチラチラと舞い散る光景を目にするのは初めてで、内心驚いていた。


 ここは北部。

 南部とは違うのだわ。


 当たり前だが、今さらながら実感してきた。

 建物の中だというのに、こんなにも肌寒いのだから、気候の違いを痛感する。


 肩を出したドレスにしなければ良かったのかしら。


「シャルロット・セバスティア」


 ぼんやりと考え事をしていると神父に名を呼ばれ、ハッとする。


「はい」


 私の声が教会に響き渡る。


「あなたはイザーク・カロンを夫とし、生涯の愛を誓いますか」

「はい、誓います」


 それは自分自身にも言い聞かせているかのようでもあった。


 私は今日、結婚する。


 この北部の侯爵、イザーク・カロンと――。


 不意にベールが持ち上げられ、視界が開けた。


 目の前にいたのは端正な顔立ちの男性。背は私よりもずっと高く、見上げるほどだ。


 銀の髪に紫色の瞳。その色の瞳は南部では珍しいが、北部のカロン侯爵家特有だと聞く。


 長い手足にスッとした鼻筋、顎はシャープで顔立ちは整っている。


 だが目つきが鋭いのは、私に対して警戒しているのだろう。


 彼は私の手を取った。


 うわぁ、すごくたくましい手。


 彼の手はゴツゴツして大きかった。豆ができているが、腕の立つ剣士だと聞いたから、それでなのだろう。


 彼は大きな手を使い、器用に私に指輪をはめた。

 左手の指輪には北部で採掘された宝石が一つ、輝いていた。


「では、誓いの口づけを」


 神父が言ったので、改めて彼の顔を見つめる。


 パチリと目が合った。

 彼はどこか戸惑っているように感じた。


 だが、無理もない。

 私たちは顔を合わせたばかりなのだから。


 彼はおずおずと手を伸ばすと、私の肩に手を置いた。

 頬に添えられた手が冷たくて、一瞬びくりと体を震わせる。


 そっと顔を上げると、再び彼と目が合う。


 静かに目を閉じるとやがて、軽い感触を唇に受けた。


 ほんの一瞬だけ、触れるか触れないか。


 それは手の冷たさに反して、とても温かだと思った。


 ***


 私たちの住む、インペリア国。


 年間を通して気候がいい南部のカタフニア。南部を治めるセバスティア侯爵家の三女として生まれたのが私。


 対する北部は四季の移ろいがはっきりしている。


 冬には雪に覆われ、大地は痩せている。広大な山に囲まれているせいか、やっかいなことに山から魔物が下りてくることがしばしばあった。


 そのため、北部の人間は戦闘能力が高かった。幼い頃から剣を手にして、身を守るために戦っていたのだ。

 北部の人間から見れば、南部の人間など、のほほんと暮らしているように見えるのだろう。


「魔物に襲われることも、雪に閉ざされる苦労も知らず、呑気な人々が集まる南部」


 北部の人間は、南部を批判していると、よく耳にしたものだ。


 北部は年間の半分は雪に覆われているので、作物を作るのに向いていなかった。そのため、食糧はその大半を他の地方に頼ることが多かった。


 その代わり、北部には恵まれた鉱産物があり、資源は豊富だった。

 そしてこれまで南部と北部は、なんとな~く仲が悪かったのを、国民皆が肌で感じていたと思う。


 そこでインぺリア国王から直接、命令が下された。


「インぺリア国の南部と北部の結束を願い、婚姻関係を結べ」と。


 そりゃ、国王から見たら、国内の争いに発展させるわけにもいかないし、ここらで仲良くさせておいた方がいいと、判断したのだろう。


 そして白羽の矢が立ったのが、私、セバスティア侯爵家のシャルロット。


 ちなみに女系家族で、セバスティア家は長女である姉が継ぐことが決まっていた。


 一方、私の夫となったのは、北部のカロン侯爵家の長男。


 イザーク・カロン。


 本人も魔物を倒す討伐隊の総指揮官を務めているという。


 サラサラとした銀髪に神秘的な紫色の瞳はとても魅力的だ。

 背も高いし、手足も長く、体も引き締まっている。筋肉質でシュッとして、スタイルがいい。その横顔は彫刻のように整っていた。


 さて、王命によって結婚した私たち。


 この結婚は北部と南部の架け橋となる。


 インぺリア国の発展のため、よりよい関係を築くのだと、父に散々言われ嫁いできた。


 はい、お父さま。わかっていますわ。


 政略結婚とはいえ、私は国の発展のため、力を尽くします。


 そして願わくはどうか、相手も同じ気持ちでありますように――。


 静かに祈りを込めて、小さく息を吐き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ