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この結婚は王命ですから。初夜で拒絶された花嫁です、それでは自由にやらせていただきます!  作者: 夏目みや
第一章 拒絶された初夜

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10

 あ、確かミーシャが魔物の見回りに行くとか言っていたわね。早朝から出かけて、戻ってきたのかしら。


 彼らは馬から下りると城内に向かって歩いてきた。

 十人ほどいるだろうか。皆背が高く、体格が良い。北部の人はたくましく、男女ともに背が高い印象を受けた。


 それに比べて私の背はあまり伸びなかったわね……。


 姉たちはスラリとしているが、私だけは低い背のままだった。


 歩いている集団、その中でもひときわ目立つのがイザークだ。

 銀髪に遠目でも整っているとわかる顔立ち。すらっと伸びた手足に厚い胸板。

 隣にいる男性と仲が良いのか、談笑しているみたいだ。相手の胸を叩き、笑っている。


 仲良くなると、あんな笑顔を見せるようになるのね。


 昨夜の彼は眉をハの字にして困っているような顔か、眉をつり上げて怒っているかのどちらかだった。


 笑顔は見ていない、まだ一度も。

 私に対する態度も戸惑っているように見えたけど、警戒しているのだろうか。


 窓辺からずっと見ていると、イザークとパチリと目が合った。


 あ、気づかれてしまったわ。


 どうすればいいのか迷ったが、にっこり微笑んで首を傾げた。


 魔物の討伐隊の総指揮官として仕事をしてきたのだろう。労いの気持ちでゆっくりと手を振った。


 イザークはその場でピタリと足を止めた。


 反応するどころか遠目からでもわかるほど、険しい顔をしている。


 そんなににらまれるなんて、手を振ったことを後悔した。


 なれなれしくするな、って思っているのかしら。そうよね、部下の手前、気安い態度を取って図々しかったかしら。


 足を止めて私をジッとにらむ姿は威嚇しているようだ。


 オズオズと手を下げようとした時、イザークの隣を歩いていた男性が顔を上げ、私に気づいた。さきほどイザークと笑いながら歩いていた男性だ。


 茶色の長髪を後ろでくくり、人の良さそうな顔をしている。窓の方を指さし、なにかを言っているように見えた。だがイザークの反応がないことを悟ったのだろう。


 長髪の彼が私に向かって、手を振った。


 思わずクスリと笑ってしまう。


 そして、一部始終を見ていたと思われる年配の男性が、ツカツカ前に出てきたと思ったら、長髪の彼の後ろ頭を叩いた。


 そして勢いよく長髪の彼の頭を押し付け、深々と下げさせている。


 これは謝罪のつもりなのかしら。


 思わず声を出してコロコロと笑ってしまう。


「シャルロット様になんたる態度。失礼な」


 ドリーはプリプリと怒ってはいたが、私は窘めた。


「平気よ。あの方、イザークが無視したから、きっと私をかわいそうに思って手を振ってくださったのよ」

「ですが侯爵令嬢、今では自分たちの主人の奥様に気安く手を振るなど……北部の礼儀はどうなっているのでしょうか。不安になります」


 確かに南部にいた時では、こうやって手を振られるなど、経験したことがなかった。

 北部は一度認めた相手なら、気安い付き合いをするのかしら。


「それに対して、イザーク・カロン侯爵の反応は無でしたね」

「ええ、そうだったわね」

「こんなにお美しく優しいシャルロット様を無下にする態度、信じられません」


 ドリーは自分が無視されたわけじゃないのに、不機嫌になっている。


「私の代わりに怒ってくれてありがとう。長期戦だと思って挑むわ」


 ドリーをなだめ、窓を閉めるように言った。


「それよりも、行きましょう」

「どこへ行かれるのですか?」

「もちろん、イザークの出迎えよ」


 ドリーはムウッと頬を膨らませた。


「シャルロット様にあんなに素っ気ない態度を取るのに、出迎えだなんて……」

「まあ、まあ。疲れていたのかもしれないじゃない」


 ドリーを引き連れて、階下に向かった。

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