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異世界帰りのTS転生ロリババア、ひ孫のヒロインになる  作者: ひさなぽぴー/天野緋真
第一章 始まりの夏、TSロリなひいじいさんと

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第一話 異世界からの帰還者と来訪者 2/4

本日二回目の更新です。

 改めて自己紹介をしよう。


 僕の名前は脇田(わきた)優一(ゆういち)。愛知県の中核都市の一つ、真宮市(まみやし)出身、在住の漫画家である。たまに動画配信サイトで配信をしたりもする。

 現在二十八歳の独身で、今は彼女なし。高校時代に少し付き合っていた子はいるけど、お互い夢に向かって全力疾走するタイプだったのでほぼ自然消滅して、今に至る。


 まあ僕の場合、ストライクゾーンが狭いからこそ現在彼女なしである、とも言えるのだけど。

 だからこそ、そんな僕がセティと並んで歩いている様子を友人知人に見られたら、こう言われるに違いない。


「いつかやると思ってました」


 とね。

 失礼な話だけど、同時に気持ちはわかるのだ。何せ僕は確かに漫画家だけど、描いているものがものだから。


 それに実際、女児服をひいじいさん……もとい、セティに着せるのが楽しかったのは否定できない事実だ。我ながら結構なハイテンションだった自覚はあるから、親しい人間に揶揄されるのも致し方なし。


「……お前、この家の感じからして子供はおろか嫁もいないよな? なんでこんな子供の服が大量に……」

「作画資料だよ」

「あ、な、なるほど?」

「浴衣もあるけど、どうする? セティの世代なら、こっちのほうが馴染みあるだろ?」

「ん……それは確かに、その通りなんだが。動きやすさの観点で言えば浴衣はあまり、だろう?」

「それは確かに。オーケー、それじゃ普通に洋服を……この辺から順に行ってみようか」

「俺は早く飯が食いたいんだが!?」


 まあ結果として、そんな会話をしつつもセティのファッションショーを、一時間弱楽しんだわけだが。

 大量の資料写真をスマホに収めることができた僕は大満足だけど、途中からセティも案外楽しんでたので、やはりこのひいじいさんノリがいい。


 とはいえ、別に彼女も能天気にノリノリだったわけではない。この約一時間の間、僕たちはさして重要ではないとはいえ、様々な会話のキャッチボールをしていたからね。

 要するにこれは、互いの性格をある程度知るための儀式のようなものだ。より大げさに言うなら、今出会ったばかりの曾祖父とひ孫、という関係からの脱却を試みたわけだ。


 結果としては、一定の成果あり、と言うべきだろう。僕もセティも、それなりに軽口を交わせるようになった。僕としてはありがたいことに、彼女と言葉を交わすことは苦ではなく、楽しい時間だったと言って間違いない。


「よし、それじゃあこいつを使わせてもらおうかな」


 なお彼女が最終的に選んだのは、デニムのショートパンツに、袖や裾がふんわりと広がる白い半袖のブラウスだ。

 シフォン生地を思わせる透け感のある素材でできていて、身に着けると夏らしく涼やかな装いになる。ほっそりとした白い腕や足が、実にまぶしくてとてもよい。


 さらにせっかくだから、ということでヘアピンまで着けてあげた。いわゆるパッチン留めタイプの上品な黒いやつで、セティの金髪とのコントラストがいい感じになっていると思う。

 どのみち僕は作画資料にしか使っていないからプレゼントしたんだけど、普通に嬉しそうにしていた。女をやっている時間のほうが長い、というのはマジなんだろう。


 というか、着せ替えをしながらそれとなく観察していた感じからして、仕草や立ち居振る舞いが普通に気品あるお嬢様という感じなんだよな。女物の服を着て自身を飾り立てることに、抵抗がまったくない。

 がさつさを一切感じないし、男らしい迂闊な動きもない。普通に女性と接している気分だ。なるほど貴族の生まれ、というのは事実なんだろう。


 この感じからして、やはり性別が変わったことによる様々なイベントは既にあらかた終えているんだろうなぁ。

 残念だよ……これじゃただ男言葉なだけの女の子じゃないか。現実にはまだ完ぺきな性転換なんて存在しないから、変わっていく自身の心に振り回されるTSロリの様子を、特等席で余すことなく観察したかったんだが。


「着たぞ。どうだ?」

「めっちゃいいよ。最高にかわいい」

「ふふん、そうだろ!」


 まあそれはそれとして、普通に見た目がよすぎるので、依然としてストライクゾーンど真ん中であることに変わりはないのだけれど。ドヤ顔で、ない胸を張るセティのかわいさよ。

 さらに姿見で姿を見せてあげたら、「さすが俺、よく似合ってるじゃねぇか」と満足げだったので僕も満足です。本当にかわいい。語彙力なくなる。


 まあ、そんな新しい装いでウキウキしながら外に出たセティの第一声は、「暑ッ!? もう夜の八時過ぎてるだろ!? なんでこんなに暑いんだ!?」だったんだけどな。

 それはそう。八十年分のジェネレーションギャップを感じる。


 とりあえず彼女に地球温暖化とかについてあれこれ説明しつつ、夏の夜道を歩く。

 向かう先は、諸々あって行きつけのファミレスだ。選択肢は色々あったけど、確実に米と味噌汁がメニューにあり、味が必要十分だと保証されていて、この時間に行っても問題にならない店となると、ここが一番都合がよかったからね。家から近くて僕が行き慣れている、ということもある。


 まあ、二十分近く歩く必要はあるわけだが。車を出そうかと提案したものの、セティ曰く「その程度の距離で車? 贅沢言ってんじゃねぇぞ」とのことで。

 なるほど確かに。今ほど車が普及していなかった戦前の感覚だと、そういうものかもしれない。昔は今に比べて、歩くという手段が一般的だったわけだもんな。


 ただ、シンプルに今の街並みを見ながらがいいという気持ちもあるらしい。そういうことなら、と僕も素直に歩くことにして普段使いしているロールバッグを手に取った。


 とはいえ、今は夜。夏とはいえ日は完全に暮れているから、景色を楽しむために最適な時間帯とは言えない。僕はそう思っていたのだけど……セティにとってはそうじゃなかった。


「夜なのに街灯がたくさんある……こんなに明るい……。歩道も車道も全部舗装されてる……! この時間に、あんなにたくさんの車が走ってる……! すげぇ……日本、豊かになったんだなぁ!」


 と感動していたものだから、改めてジェネレーションギャップを感じたよ。念のため車道側を歩いていて正解だ。車道まで乗り出しそうな勢いだったからね。


 車の量に関しては、愛知県が世界的な自動車メーカーのお膝下という事情もあると思う。加えて公共交通機関が他の都市圏に比べると微妙に発達してないから、車社会なんだよな。

 あとはこの辺りは真宮市の中心地域に近いから、というのもある。市郊外にある実家のほうなら、もっと少ないはずだ。


 しかしこれくらいで驚いていたら、名古屋や大阪、東京なんてどうなってしまうのか。何かの拍子に見せてみたいところだ。

 過去の人間が未来に来たときの生のリアクション、ぜひ色々と観察してみたい。漫画にはリアリティが特に重要なもので。


「この並んでるやつ、全部家なんだよな? い、一体何人いるんだ……!?」

「戦後何度か自治体の再編とか合併とかあったから、一概に昔とは比較できないけど……今の真宮市の人口は確か、三十七万人くらいじゃなかったかな」

「さんじゅうななまん! はぁー、信じられねぇけどこの様子からして、マジなんだろうな……。この感じだと、俺がいた頃とは何もかもが変わっちまってるんだろうなぁ。文字通り隔世の感があるぜ……」


 けれどしばらくしたら、テンションが落ち着いてきたのか雰囲気が変わってきた。しみじみとそう言ったセティは、少し寂しそうだった。


 気持ちはわからなくはない。まだ三十になっていない僕ですら、久々に通りがかった場所の様子が様変わりしていることに対して、そこはかとない寂しさを覚えるのだ。セティならなおさらだろう。


 そう思った僕は、手を伸ばしてセティの頭をそっとなでた。見た目通りの女の子にしたら事案かもしれないが、TSロリババアであるところのセティにならまあ許されるだろう。許されてくれ、頼む。


「安心しなよ、八十年前と変わってないところもちゃんとあるから」

「本当か? 八十年前って言ったらお前あれだぞ、俺からしたらアヘン戦争の頃って感覚だぞ?」

「完全に歴史の話なんだよなぁ……本当だっての。そろそろ見えてくるはず……ほら、あれ」

「んん?」


 撫でられるがままにしていたセティは、僕が指さした方角に向けて目を凝らした。そして僕が何を示していたのかをすぐに理解したのか、そちらに向けて駆け出す。


「おおーっ、線路! 線路じゃねぇか!」

「そうだよ。東海道本線は八十年前もここを通っていただろ? まあ見た目はちょっと違うかもだが、それでも建物とかよりは変わってないんじゃないか?」

「ああ、違うところもあるけどこれは確かに、あの頃に近い感じがするぞ。はぁー、そうかぁ、全然知らないところじゃないってわかったら少しほっとしたよ」


 先ほどとは打って変わって、嬉しそうにため息をつく姿に僕もほっとする。やはり美少女には、笑顔でいてほしいもんな。


 さて、ここから目的地であるファミレスの近くまで、しばらくは南に向かってこの線路沿いを歩くことになる。十分くらいかな。

 その間、二本の電車が横を通り過ぎることになり、それを見たセティは二回とも足を止めて大喜びだった。かつて見ていた汽車とはまったく違うけれど、明らかに洗練された見た目と圧倒的に向上したスピードに目を輝かせて、ばたばたと身体を動かす様は控えめに言って大層かわいらしい。


「……待てよ? 線路が近いってことは、さっきまでいた家は実家じゃねぇな? もしかして、うちの工場があったところか?」


 うわあ、急に冷静になるな! 答えるけど!


「お、気づいた? そうだよ。正確には社宅として使ってたところだね。今は建て替えて、僕の仕事場兼自宅として使っているってわけさ」

「そうかぁ! じゃあそのうち実家のほうも見たいな……どうなってるかちょっと怖くもあるが……」


 そうだな、そっちのほうも見せてあげたいところだ。


 ……ただ、セティのことは両親にどう説明すればいいだろうか。ちょっとすぐにはアイディアが浮かばない。

 大学を卒業するまで、二十二年間を過ごしたところだ。僕の顔を覚えているご近所さんがほとんどだから、仮に両親に顔を合わせなくとも下手に周辺を歩き回るだけで、よからぬ噂を立てられる可能性もあるのがなぁ。田舎の噂は怖いんだ。


「ん? なんだあれ? 橋か?」


 内心であれこれ考える僕をよそに、セティは無邪気だ。前方を指しながら、僕を見上げてくる。


「陸橋さ。線路をまたぐ形にかかってて、電車が車の移動を妨げないようになっているんだよ」

「なるほど。汽車……じゃねぇや、電車も車もこれだけ数が多いもんな。そういう工夫が必要ってことか」

「ああ。これから行く店の道中でもあるから、上り切れば線路を上から眺められるよ」

「いいじゃねぇか。俺が光太郎だった頃は、高いところから景色を眺める機会なんて山に登るしかなかったからなぁ」

「そういうことなら、そのうち実家近くにあるタワーにでも行こうか。木曽川沿いに展望台があって、真宮市を一望できるんだよ」

「ほぉー、それも楽しみだな!」


 なんて話しているうちに、僕たちは陸橋に上がるところまで来た。さらに数十秒歩けば、陸橋の一番高いところまで来る。


「おぉっ、なかなかいい景色だ!」


 欄干に限界まで寄りかかって、セティが歓声を上げた。反対側から見たら、まるで牢屋に投獄されてるような絵面かもしれない。


 しかし、こうやって陸橋から線路を眺める機会ってあんまりなかった。すぐそこにある日常って、なかなか気にしないものだよなぁ。

 だけどこうやってじっと見てみれば、これはこれでなかなかに趣があるような気もしてくるから不思議だ。今度昼のうちに、スケッチに来てもいいかもしれない。夏が終わってから。


 そうこうしているうちに、また一本電車が通過していく。大きな音を立てて走る車両を、二人でのんびりと見送る。

 あれは私鉄のほうだな……なんて思っているうちに、電車はすっかり走り去っていった。


 僕たちはそのあとも少しだけ無言だったけれど、そろそろいいだろう。そう思って、口を開こうとしたそのときである。


 不意に後ろに引っ張られて、僕はたたらを踏んだ。さらに首に力のこもった手が当てられており、僕の気道が少し締まる。


「ぐ……っ!?」

「優一!? ……ッ、テメェは!」

『おっと、二人とも動くんじゃないよ』


 セティが険しい表情を浮かべている。その視線の先に僕も横目で視線を向けて……思わず息を呑んだ。


 そこにいたのは、兎だった。


 ……いや、違うな。人間に兎の要素を足したような、人型の生物だ。きちんと服を着ているところから察するに、いわゆる獣人というやつだろうか。

 人間で言えば耳に当たる部分は、いわゆるロップイヤーになっているようだ。俗っぽい言い方をするなら、ほどほどにケモ度があるタイプの獣人と言ったところだろう。


 当然、地球上にそんな生物は存在しない。ということは、セティがいた世界から来たのだろう。それ以外にはあり得ないはず。

 ただ、額から黄色の角が生えているところからすると、人間というよりは魔族とか悪魔とか、そういう種族かもしれない。僕を人質にするような真似をしているんだ、まっとうな手合いではないのは間違いないだろう。


 そんな相手に、首を絞められかけている。その事実を改めて認識して、僕は一気に肌が粟立つのを感じた。


ここまで2話分の話を読めばわかる方にはわかるかと思いますが、主人公である優一は性格がまっとうな代わりにロリコンになってしまった某動かない人、というイメージで大体あってます。

でもちゃんと(?)光のロリコンですから・・・。

嘘じゃないんです、本当なんですポリスさん! 信じてください!


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― 新着の感想 ―
おまわりさん、こいつです。 ひい爺様に取って、八十年前の日本とは何もかも変わってしまったでしょうが、意外と受け入れが早いのは、異世界を経験していることと、理系卒で現実的な考え方をしているからでしょう…
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