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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
1:大使館を作る(日本編)

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1-7

逃げるように去っていった2月が終わり、3月となった小春日和の東京・二重橋。


「ただの認証官任命式にしちゃあ人が集まり過ぎじゃないか?」


門前に集まるメディアの数にげんなりした俺に運転していた嘉神が「それだけ注目されてるということでしょうね」と呟きながら、スピードを落として皇居の門をくぐろうとしていく。


マスメディアから向けられる視線に目礼をしながら車は門を越えて皇居の特別な空間へと入っていく。


(まあ、これが初仕事だからな)


ずっと閑職にいた自分がこのように多くの目に晒されるのは違和感があるが、これも仕事だからと言い聞かせて車を降りる。


認証官任命式は天皇の国事行為の一つで、簡単に言うならば天皇が認めた全権大使であるという権威をつける為の儀式である。


実務の上では受けなくても良いと言うが、天皇陛下による任命式を受ける事で広く己が大使であると言うことを伝えることができ箔もつく。


まだ買ったばかりの燕尾服に身を包み、しわやほこりをつけないように気を遣いながら車を降りる。


この先いずれ公的行事に呼ばれる機会も増えるからという理由で購入はしたがやはり慣れないものを着る場面は気を遣うもので、とにかく汚すまいという気持ちでゆっくりと気を付けて歩いてしまう。


必要以上に足音を鳴らさず、汚れも付けず、皇居でよけいな失敗もせずに過ごす事のみを考えていると松の間へとたどり着く。


皇居宮殿内における最上級の格式を持つ板張りの緊迫感ある空間の中心に立つ、穏やかな物腰の男性こそいまの天皇陛下である。


テレビ以外では見たことのない人物にいささかの緊張感を抱きながら、一礼してその御前に立つと俺の目を見てにこりと笑った。




「全権大使に任命します」




その言葉に深々と頭を下げると再び俺の目を見てこう告げる。


「あなたとその仲間たちがふたつの世界の懸け橋として活躍することを願います」


「……はい」


たった一言で自らの使命をずしりと感じる。


誰も引き受けたがらず押し付けられたような職務ではあるが、同時にそうした思惑もある。


任命証を受け取ると松の間を出て、そそくさと休憩できる場所に腰を下ろす。


「お疲れ様です」


渡された安物の缶コーヒーの香りがほっと心を安らげてくれる。


「皆さんにさっき連絡しましたよ」


「そうか」


他愛もない会話と普通の安いコーヒーの苦味がこんなにも穏やかに聞こえた事は無い。


異世界へ行くまであと1週間。

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