表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
7:大使館はウィンター・バケーション

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/87

7-1

12月が始まると人々の動きが忙しなくなるのがわかる。


こちらの世界では冬というのは仕事で疲れた体を癒す長期休みの季節で、休み前にこなしておきたい仕事を片付けるためみんな忙しくなるのだ。


地域差はあるが金羊国の役場の場合、冬至の前夜祭にあたる12月21日から最後の正月仕事が終わる1月10日までの21日間が休みとなる。農家の場合はさらに休みが伸び、雪が溶けるまで最低限の仕事をしてあとは家で体を休めるのだという。


「で、大使館の休みはどうします?」


嘉神が悩ましげに俺にそう尋ねてきた。


「少なくともその21日間は仕事のしようがないし、オーロフとアントリも休ませるべきだろうな」


どうしても仕事したいなら休日出勤手当を出せばいいのだろうが、彼らにはずっと頑張ってもらっているので休める時にはしっかり休ませてやりたい。


「じゃあ大使館はこちらの役場に合わせて21日から1月10日にしますか?」


「そうだな、ただ21日から28日までは外務省が動いてるからそっちの仕事は無くならないだろうし、4日から外務省も仕事始めだからな」


「……大使、日本とこちらでは暦にずれがあるので向こうは平日ですよ」


何とも言えない悲しい顔をした嘉神を見ていると、言いしれない気まずさがわいてくる。


「真柴、やばいのが来た」


木栖がドアを開けると同時にそう告げる。


その瞬間にもうめんどくさい気配を察知して、今すぐ帰りたくなった。




****




「ヴィクトワール・クライフさん、日本への亡命希望と言う事ですね」


大使館員全員集合を前にしても彼女は堂々と「はい」と答えた。


服装はボロボロで地味だが、この世界では忌み子とされる黒髪に切れ長の黒い瞳を持っている。逆に言えばそれ以外の特徴があまり見受けられない。


「黒髪黒眼はこの地では差別対象ですし、いっそ違う世界に行って一からやり直したいと考えています」


「金羊国への亡命でも良いのでは?」


「まだこの地は政情が不安定すぎます。大森林と山が自然の防壁になっているとはいえ西の国が教会と組んで異教徒討伐の名目でこの土地を狙ってるって噂もありますからね、なら最初から無関係な場所のほうがいい。


もちろん勝手に日本へ侵入することもできるでしょうけど大使館の保護下にあれば余計なちょっかいは出されにくいと思ったんですよ」


言い分としては大体わかった。が、それだけでは問題がある。


いちど意識を日本語に切り替えて同席していた嘉神のほうを見た。


「この言い分で入管は申請を通すと思うか?」


「……厳しいでしょうね。立証の証拠が少なすぎます」


亡命するには難民申請を通す必要があるが、難民申請を通すにはまず証拠や証言を提示して自分が出身国から保護されない、もしくは保護を求めない立場であることを証明する必要がある。


亡命の理由として挙げたこの世界における黒髪黒眼差別について難民調査官が来たら手伝う事にもなるだろうが、金羊国は黒髪黒目差別から逃げてきた人がこの地で安定的に暮らす様子も見受けられるので日本への亡命の必要なしと判断される可能性はある。


「そもそも日本で難民申請が通るのって難しいんじゃ?」


納村の言うとおり、日本は元々難民申請が通りにくい国である。


それを踏まえると正直あまりお勧めできないし、多少政情に不安があっても金羊国にいたほうが安全なように思える。


(というかこの国の移民受け入れ基準結構ゆるいからな……)


ここは被差別人種の亡命者で構成されてるような国だから厳しくするのはむしろ不利なのかもしれない。


受け入れ基準は≪この土地の決まりに従う意思があるか≫ただ、それだけだ。


「とりあえず本人に伝えてみるか」


それでも望むなら面倒でもやらなければならないだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ