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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
6:大使館に休みはない

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66/122

6.5-中

翌朝。朝食の際に納村に新聞の話をすると「読んでないのがまだいくつかあるんで読み終わった奴なら」という返事だった。


読み終えたという新聞はサイズも紙質も日付もばらばらで、唯一の共通点と言えばみな大きな川湊のある都市国家で作られたぺら紙一枚のものということぐらいだった。


全面モノクロで色味はなく挿絵が少しある程度の視覚的に地味な誌面だが、各都市国家の情勢と大陸各地の情勢を中心に時々嘘かほんとか疑わしいような話も掲載されている。


明治期の新聞がそう言えばこんな感じだったな、と思いながら記事の一つ一つに目を通していると未知の単語が目についた。




『伯爵令嬢の呪いは黄金の〇△のでっち上げ?!王家からも賞金首に』


今から半月ほど前、西の国の3分の1を占める王家直轄領に多数の火の玉が降り注いで収穫直前の小麦畑が延焼する事件が起きた。


その際『王都南西の伯爵家令嬢ルネはマルセル第1王弟殿下にその身を穢され捨てられた、降り注ぐ火の玉はその恨みである』という怪文書が出回るが、その直後伯爵家当主とその妻は『娘の恨みは晴れた』という文章を残して火災によって焼死する。


この奇怪な事件に黄金の〇△と呼ばれる悪しき者が関わっており、国土の3分の1を燃やしたこの人物を王家は賞金首とするとともにマルセル王弟殿下とルネ伯爵令嬢のかかわりを否定した。




「にしても関わりを肯定する根拠も否定する根拠もゼロの報道だな、これ」


これを書いたのは南の国の人間だから、これはあくまで他国の問題というスタンスで言われたことをそのまま書いてるんだろう。にしても伯爵令嬢と王弟の関わりを否定する根拠も、事件と黄金のナントカという人物との関わりを証明する証拠もないのはどうなのだろう。


「……まあ、王家が言うならそうなんだろうというスタンスなのかもな」


結局この黄金の〇△が人物を指すのは分かったが、どういう意味合いなのかは分からなかった。


納村に聞いてみるか。




***




「あー、そこの訳語ですか。私も分かんないんですよね」


昼食のタイミングで納村に話を振ってみると答えは明瞭だった。


「ちょうどいい日本語がない感じか」


「ですね、オーロフさんとかファンナル隊長に意味合いを聞いた感じだと『強大な魔術の力を持ちながら悪しき事や神の教えに反することにその力を使っている人物』みたいな感じらしくて」


「……妖術使いとか呪術師みたいな感じか?」


「いや、でも使ってるのはあくまでこの世界の人が普通に使っている魔術って認識っぽいんですよね。妖術や魔術だと違う技を使っているニュアンスになりそうなんでしっくりくるのは魔女かなあって」


「魔女か、確かにしっくりくるかもな」


何となく脳裏で黒づくめの老女がヒヒヒと笑いながら大鍋をかき回すイメージは何となく悪者感があり、しっくりくる。


「ただ魔女だと女性しか使えない気がして」


「中世の魔女狩りでは男性も魔女とされたりしてるからいいんじゃないか?」


「じゃあ、とりあえず魔女と翻訳することにしますね」

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