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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
6:大使館に休みはない

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6-5

「留学生勧誘のイベントやるんですか?!」


驚いたように目を見開いた河内さんに「ええ」と軽く答えた。


現地支社の建設進捗の把握のため朝一番にやって来た彼女が手土産に持って来た栗ようかんを咀嚼しながら「本題はそこじゃないんですがね」とツッコミを入れる。


「あ、そうなんですね。てっきり手伝いにでも駆り出されるのかと」


「民間人でましてや留学は専門外の人間を手伝わせはしませんよ、アラビア語できるなら別ですが」


「日常会話ぐらいなら出来ますよ、元々原油も扱ってたので」


腐っても総合商社勤め、外国語はお手の物らしい。


3日後の収穫祭まで滞在する確約を取り付けて手伝わせることを決めると、すっかり本題を忘れていたことを思い出す。


「本題はこれです」


以前北の国から届いた原油取引についての手紙を見せる。


留学生勧誘イベントでバタバタしていて忘れていたが、並行して行っている原油の輸入交渉の中で北の国でのガソリン精製という案が出てきたのだ。


「ガソリン精製技術の供与ですか、まあ確かにこっちでガソリン作れれば車やディーゼルカーでのピストン輸送ができるからデカいですよね」


「外務省側にも話は振ってます、本格的に動くとしても冬以降でしょうが紅忠側にも重要な話なので」


「助かります。原油精製技術の輸出かー……社内の専門人材を送り込めないか動いてみます。手紙の写しとっても?」


「どうぞ」


スマホで手紙の写真を撮って保存しておくと「話を戻しますけど」と口を開いた。


「留学生の受け入れって中東から手を上げてる国あるんですか?」


「アラブ首長国連邦が受け入れを表明してますね」


「UAEかー、最大の輸出先が日本だから日本における原油需要の奪い合いを危惧して留学生受け入れで少しでもこっちの情報をってとこもあんですかね」


「おそらくは」


「でも原油って金羊国内で湧出してるわけじゃないですよね?」


「まだ未開拓地域がかなりあるので未知数ですけどね」


ふうんと彼女は呟きながら「とりあえず分かりました」と口を開くと「また来ます」と言って軽やかに去っていった。




***




午後になり、嘉神が今回金羊国に来るという人たちの資料を届けてくれた。


各国から留学担当者2人・報道記者1人というスリーマンセルで、そこに大使館関係者を1人通訳としてつける形になる。


本来外交官ではない木栖や納村まで引っ張り出すことになりそうだが「仕方ない」の一言でごまかされてくれた。


「という訳で担当国を決めた」


「お疲れさん、誰がどこを担当するんだ?」


「俺が中国・嘉神にアメリカとカナダ・柊木医師にヨーロッパ連合だな、アラブ首長国連邦にはお前と紅忠の河内さんで考えてる。納村はフリーにするぶん臨機応変に動いてもらうつもりだ」


振り分けのメモを渡すと「嘉神の負担が大きくないか?」と木栖が言う。


大使館の人手不足のせいもあるが、この2か国は金羊国とひそかに結びつく動きがみられないという外務省側の連絡もあってこのような振り分けになった。


「人手不足だからな」


「それに何故中国の担当者がお前なんだ?」


「……中国が金羊国と組まれると厄介なんでな」


つまりは監視である。


木栖もその言葉で納得したようで「わかった」とつぶやいた。


「俺も可能な範囲で手伝おう」


「助かる」


明日は大使館の人間総出で3階の迎賓エリアの大掃除が待ち受け、それが終われば各国の担当者がやってくる。


休みはまだ遠い。

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