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久し振りに帰ってきた駐金羊国日本大使館はある点を除いて何も変わらなかった。
「なあ、嘉神」
「はい?」
「お前の飼育してるあのアルマジロ、デカくないか?」
会わない間に80センチほどに成長したアルマジロのジョンに嘉神は「いいものを食べてますからね」とどこか自慢げに答えた。
最後に会ったときはまだ50センチもないぐらいだったと思うのだがいくら栄養状態が改善されたと言えど成長が著しすぎる。
「あれぐらいなら大型のアルマジロなら十分ありうる大きさですよ」
「まだあのアルマジロ拾って3か月かそこらだよな?」
「確かに成長が早いとは思いますが」
「……本当にあれは地球にいるアルマジロと同一種なのか、ちゃんと確認しておいてくれ。動物園の象サイズにでもなられたら本気で困る」
俺の真剣な頼みに嘉神は少し悩んでから「わかりました」と答え、部屋を去っていく。
庭をのんびり歩きながら草や虫を食うジョンの能天気さがほんの少し羨ましくなる。
長らく大使館を開けていた余波で仕事が思いのほか溜まっていたのだ。
不在の間に嘉神が屋根付きの駐輪場を設けていたとか、優先順位が低くて目を通していなかった日本からの書類だとか、ハルトル宰相の不在で進められずにいた話をまとめるための打ち合わせだとか。
さらに北の国とのドタバタと、そのついでに得られた大陸内の情勢についての報告書にまとめないとならないのだ。
これについては実際に行った俺と納村しか書けないので他人に丸投げできない。
「……暑い」
この国はもう8月に入り、夏の盛りだ。
蒸し風呂と化した東京よりはマシだが暑いものは暑い。
開け放した窓から入り込むそよ風と夏空をぼうっと見上げながら、かき氷のひとつも欲しくなるのだった。




