4-19
―1か月後
ハルトル宰相とともに大森林を抜けると、金羊国は本格的な夏であった。
セミやカエルのような虫の音は夏に活発になる生き物たちの声だというし、日差しも随分強くなった。
「巻き添えで大使館の皆さんまで遅くなってしまいましたね」
あの後王妃の替え玉を巡って王宮内でひと悶着あり、それが解決するまでハルトル宰相が帰国することが出来なかった。
俺たちも原油の件を詳しく聞きたいというアネッテ宰相補佐から足止めされ、原油の採掘から用途・加工にいたるまで根掘り葉掘り聞かれた挙句視察したいとまで言い出した。
それについては日本政府を通さないと決められないので伝書鳩を飛ばしまくり、冬にでもという事でけりがついた。
そうしてアネッテ宰相補佐の足止めに疲れ切ったころ、ようやくハルトル宰相の契約解除の儀式が行われた。
用事が出来たというグウズルン情報管理官と王都で別れると、自由の身になったハルトル宰相とともに適度な休息を入れながら一週間かけて戻ってきた。
「初夏というかもう夏だなこりゃ」
そう呟いた納村に「本当だな」とつぶやく。
東京の殺人的な暑さに比べれば優しいものだがそれでも暑いものは暑い。
木陰の向こうにすらりとした男と大きな何かが見える。
「真柴、おかえり」
「木栖お前なんでここに」
「夫の迎えに来ただけだ、簡易的だが乗り物もある」
迎えにと用意したのは自転車に荷台を繋いで布製の屋根を付けた代物だった。
2人ぐらいなら座って乗れそうな広さで、屋根で日差しを遮ることもできる。
「じゃあ納村はハルトル宰相と後ろ乗っとけ。あと全員の荷物も」
「やった、もう歩かないでいいんだ」
しんどそうな顔をしていた納村が1ミリの遠慮もなく乗り込むとゴロンと寝そべっている。
ハルトル宰相も「お邪魔します」といってリヤカーに乗り込んだ。
「お前はどうする?」
「そうだな、お前の自転車の後ろに乗せて貰おうか。良いだろダーリン」
冗談交じりにそう言ってやればグッと奥歯を噛みしめたような顔をする。
「あ、私リヤカー乗って加速させますよ!おひとりで漕ぐの大変でしょうからね!」
ヘルカ魔術官がそう告げてきた。そうだ、忘れてたな。
木栖が「じゃあ、俺がせーのと言ったら魔術で加速してくれ」と告げる。
「せっかくだし全員で言います?」
納村の提案に全員が乗った。
俺が木栖の後ろに乗り、リヤカーの一番後ろにヘルカ魔術官が腰を下ろす。
「じゃあいくぞ、「「「「「せーの!」」」」」
バカみたいな加速がついた自転車は夏の日差しの中、風を切って走り出した。
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