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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
4:大使館、北へ

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42/92

4-15

この国の最重要人物との面談は明日の朝一番に決まった。


本来はさっと済ませるはずだったであろう問題だ、向こうとしてもある程度交渉材料を準備する必要もあるだろうしこちらとしても都合がいい。


俺たちは正式に賓客扱いになったので王城のすぐそばにある迎賓館に招かれ、グウズルン情報管理官は夕方までちょっとうろついてくると言ってまたいなくなった。


迎賓館も小規模ながら豪勢な作りで、建物は群青と金で豪華かつ美しくまとめられ、家具も木製ながら精緻な彫りが施され技術の高さをうかがわせる。


壁の作りも触った感じでは梁や床などに鉄を使い、基本の内装は木や土がベースになっているように思う。金は金箔だろうか?提供された大使館とは共通点が多いように感じられた。


ハルトル宰相がこの土地で生まれ育ったからこその共通点という事だろうか。


(ただ、いささか豪華すぎて落ち着かないな……)


この豪華な迎賓館は貧乏育ちの身にはあまりにも派手過ぎ、どうもソワソワしてしまう。


私室として与えられたただっ広い部屋の柔らかいソファに身を横たえるとハーブの心地よい匂いがする。


「アネッテ・ディ・シェーベイルです。入室の許可を」


「お入りください」


入ってきたのは今朝対応してきたあの小太りの宰相補佐の女性で、メイドや執事も4人ほど引き連れている。


「迎賓館はお気に召しましたか」


「ええ」


「それはよかったです、メイドと執事を数人置いておりますので所用は彼らに申し付けください」


これもこの国流のもてなしだろう。ありがたく受け入れるとしよう。


「ではお茶とお菓子を頂けますか」


後ろにいた4人に告げると彼らは素早い身のこなしでソファの前にあった机の高さを少し上げ、お茶と焼き菓子をさっと並べてくる。


並べられたのは紅茶のような鮮やかな赤いお茶にベリーの香りがするジャムのかかったホットケーキに似たお菓子。


「私もご相伴に預かってよろしいですか?」


「どうぞ」


お菓子が並ぶと書記官と納村もやってきて、隣に腰を下ろす。納村もお菓子を貰うが、書記官のほうはお茶だけであった。


「新王閣下とのお話の前に色々と聞いておく必要がありまして」


「ええ」


「余計な腹の探り合いはせず率直にお伺いします、なぜ日本政府はわざわざ異世界に?」


本当に率直な質問である。


まあその方が俺たちの気苦労も減るのでこちらも素直に答えよう。


「金羊国が外交を求めてきたからです」


「そこに何のメリットが?」


「メリット・デメリットの問題ではありません。何の衒いもなくただ自分を仲間にすることを彼らが求めてきて断る理由もないから受け入れただけです」


金羊国と日本の外交が成立し、国連の場にも出られたのはそうした側面が大きかった。


いくらかの打算はあるが日本側にとって国交を持ったところで不利益が少なそうという部分は大きかった。


彼女はふうん?という風に見ながらお茶を飲んでいる。


俺のほうもせっかくなのでお菓子を食べてみると、これもサツマイモのようなほんのりとした甘さのパンケーキにジャムの酸味が妙に美味くかみ合って面白い。


「ならば我が国とも求められれば国交を結んでもいいと?」


「ええ、今のところは。ただ簡便な移動手段がないで無理ですが」


「確かに」


東京~王都間の移動手段さえ用意してくれれば外務省との便宜を図ることはやぶさかではないのは俺の本心だ。


原油の件があるし、異世界産の原油が日本に入ればエネルギー事情が大きく変わる。


「どうです、興味はありませんか?」


「……検討はしておきます」


それはそうだ。この辺は明日原油とセットで話を切り出してみてもいい。


「こちらからもひとつ。ハルトル宰相閣下の以前の持ち主はグスタフ4世新王閣下だと伺いましたが、仲が宜しかったのですか?」


「自分の買ってるペットの事が嫌いな人は普通いないと思いますが」


「だとしてもわざわざ力で取り返すのは荒っぽい沙汰だと思いまして、言葉が通じるのですから交渉の余地はあったのでは?」


「言う事を聞かないから無理やり連れて帰る事もありますよ」


再三帰国命令を出していたにも拘らず従わなかった、だから力で連れて帰ったという理屈か。


おやつを食べ終えた納村が「ちょっと迎賓館の中回ってきます」と言ってふらりといなくなる。


俺はまだ食い終わってないんだが……?




***




腹の探り合いという名のおやつタイムを終え、考えていたことを紙に起こしなが机に向かっていると町は夕焼け色に染まっていた。


グウズルン情報管理官がでかい鳥を連れて戻ってきたので「ギーロンで出した手紙の返事か?」と問えばと「その通り」と答えが来た。


匂いを追ってギーロンから北上してきたという鳥から手紙を受け取って開くと、それはサンプルとして送った黒油の分析結果だった。


率直に言うと、この世界の黒油は地球で言う原油で間違いないらしい。


硫黄分が多いので加工に多少の手間はかかるが十分商品価値はあり、日本の製油施設で対応できるという。


しかも国内には閉鎖予定の石油精製施設が複数あるがそのほとんどが異世界産原油精製専用に転用可能らしい。


「……よし」


実に都合のいい事を聞いた。


この辺の話も交渉材料に用いよう。輸出入のための輸送手段も考える必要はあるが、その分あるだけこちらで買うぐらいの気持ちでも構わない。


食糧支援と原油の購入、それは新王にとって宰相閣下よりも大きなメリットになるはずだ。

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