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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
25:大使館に恋の嵐

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312/323

25-3

その日の大使館メンバーと湾岸アラブ諸国・富山協同製薬ご一行と親交を深めるため、みんなで会食という形になった。


前菜のブルスケッタに始まりロールキャベツ入りのオニオンスープに落ち鮎の塩焼き、口直しに洋梨のソルベを挟んだ後は鴨肉のオレンジソース添え、締めには大森林で採れたあけびとタルトタタンのデザートプレートも出てくるという本気のフルコースだった。


(飯山さんの本気は受け取るが……胃が重い)


一品当たりの量は控えめだったがいかんせん品数が多すぎたせいでちょっと胃が重い。


大使館メンバーはと言うと嘉神や深大寺は食べ過ぎて眠いのかさっきからずっとコーヒーを飲んでるし、木栖は飄々とした顔で食休み中、夏沢はタルトタタンのおかわりを貰っており、石薙さんに至っては食べ過ぎて眠くなったからと先に戻ってしまう始末だ。


しかし湾岸アラブ諸国ご一行様は異世界で本格的なフルコースが出てきたことにご満悦な様子で、胃が重い俺の気持ちを知ってか知らずか俺の前で飯山さんの腕をほめちぎってくれている。


ガストロディプロマシー(美食外交)と言う言葉が示すように、食と外交は切っても切り離せない。


金羊国・日本・湾岸アラブ諸国のちょっと複雑な関係性―異世界産原油の輸入は産油国である湾岸アラブ諸国にはあまり快く受け入れられてないので―も踏まえて飯山さんに気合を入れておいて欲しいと言ったのだが、まさかこんな形で自分に返ってくるとは思わなかった。


話に一区切りつくと、俺は木栖の方を確認する。


木栖は特に誰かに話しかけられることもなく周囲の様子を観察している。


(あの男五十里桂馬に声を掛けられてる様子はなし、と)


木栖と視線がかち合うと微笑みを向けられ、俺はぷいと視線をそらす。


なんとなく気恥ずかしかったのだ。俺は悪くない。




*****




翌日、大使館メンバーは朝から大忙しであった。


俺と納村は金羊国・日本・湾岸アラブ諸国の提携に伴う声明文の準備に追われ、嘉神と石薙さんはヘイルム草輸出に伴う実務者協議へ出席し、残ったメンバーで日常業務を回すという状態だった。


で、この嘉神と石薙さんの出席した実務者協議がまた大騒ぎだったのだ。


異世界産の薬草をベースにした薬の一般販売を目指すうえで最初のネックとなるのが、原料のヘイルム草を根付きでは持ち込めないという問題だ。


これまでは学術調査目的で持ち込まれていたので厳重な梱包などにより検疫をパスしていたのだが、商業目的輸入となると検疫に引っかからないように根付きでの持ち込みが出来なくなる。


土を落として乾燥させれば検疫には引っかからずに持ち込めるのだが、この手間を誰が担うのか?という問題があった。


金羊国側としては誰が担うにせよ自国に金を落として欲しいし、富山協同製薬側は現地労働者の雇用にかかるコストを薬代へ上乗せしたいと言い、湾岸アラブ諸国側は広く薬を普及させるため薬価を下げたいようで、金羊国で異世界産薬草の加工施設を作って自国産業にすべきと提案した。


これが地味にまとまらず嘉神は頭を抱えていたが丸一日話し合った末、結局金羊国側が湾岸アラブ諸国の支援を条件に自国産業化を目指すことを決意してくれた。実際この先ヘイルム草のように地球への輸出でお金になるものが出てきてもおかしくないので、その判断は間違っていないだろう。


しかし、だ。


地理的条件の都合で金羊国は日本側を通じての支援を受けることになるので、その辺りの打ち合わせもしなくてはならない。そして内容的に全権大使である俺もある程度把握しておく必要がある。


嘉神からの実務者協議についての報告を受けた後、俺は疲れ切って深い深いため息を吐いた。


「……後からどんどん仕事が湧いてくるのは何故だろうな」


そうぼやいた俺に納村が可哀想なものを見る目で「どうにもなりませんよ」と返された。

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