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24-10
霞ヶ関でのデモの後はネットカフェで仮眠を取り、早朝に大使館へと戻った。
なんとなく納村のスピーチを見に行っていた事は納村に黙っておきたかったのだ。……もし本人にバレてたら、その時はその時ということにしておこう。
他のメンバーも俺が昨晩出かけた理由は分かっていたがあまり深入りはされなかった。せいぜい石薙さんにデモの様子を聞かれたぐらいだろう。
当の本人である納村が大使館に戻ってきたのはお昼前で、本人は妙にスッキリした面持ちをしていた。
「大使、ちょっと覚悟できました」
「なんの覚悟だ?」
「ファンナルと生きてくために全部曝け出して戦う覚悟ですよ」
本来しなくても良い覚悟を固めた納村はどこか明るい顔をしている。その戦いがいつ終わるかは分からない。
それでも好きな人と生きて行くことを世界に認めさせる為に戦うのだ。
「難儀だな」
「大使もたいがいと思いますけどね、百均のタグついたまんまのバケハなんか被ってねぇ?」
ニヤッと悪そうな笑顔をこぼしながら俺にそう言い放った納村明野に、俺は何も言い返せなかった。




