表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
24:納村明野の結婚

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

308/323

24-9

金羊国から『金羊国は獣人と日本人の結婚に伴う在留資格取得を認めない日本政府の方針を、我々は大変許し難く感じている』という怒りの声明文が発表された。


ファンナル隊長の特定活動ビザが下りないという話が伝えられてわずか3日の早業であり、日本側でもすっかりこの話は政治的議題として取り上げられるようになった。


「大使、悪いんですけど明後日の夜ちょっと出かけてくるんで出勤遅くなります」


「明後日の夜?」


納村が休みでも診察でもないタイミングで日本に出かけるというのはかなり珍しく、まして夜に出かければ入国審査・税関が夜に閉まってしまう関係でその日のうちに大使館に戻れなくなる。


しかも明後日・明々後日は平日だ。翌日休みもないのに夜から出かけるというのはこれまで一度もない。


「昔の知り合いから連絡が来ましてね、日本で異種間婚認可デモをやるから金羊国を知る人間としてスピーチしてくれないかって。でも開催タイミング的に次の日の始業が遅くなりそうなんで話通しとこうかと」


個人的には北の国の国王訪日の際の記憶のせいでデモというものに良いイメージはない、しかし納村はあの場に居なかったのでデモに対して悪いイメージが無いのだろう。


それに納村はこの件において当事者であり、金羊国情報部に属するファンナル隊長と違って自由に発言できる立場にある。だからこそ自ら声をあげなければと考えてもおかしくはない。


「……好きにすれば良い、思想信条集会の自由は憲法が保障してるしな。


ただ夕飯要らないんなら飯山さんにも話しとけよ」


「はーい」





*****




3日後の夜、俺は納村がスピーチをするというデモに赴いてみることにした。


デモという場所への恐怖と納村のスピーチへの興味を天秤にかけ、興味が勝ってしまったが故の行動だった。


場所が場所なので参加してるのがバレたら面倒だから、百均で買ったマスクと帽子で顔を隠しての参加だ。


デモの会場は霞ヶ関の法務省赤れんが館前、時間は夜の7時前。


オフィス街のど真ん中は老若男女問わずさまざまな人が詰めかけておりその手にはさまざまなメッセージが綴られている。


6色のレインボーフラッグを持つ仕事帰りのOLもいれば、『#Loveislove』と書かれた厚紙を手に友人と話す人、1人で参加したらしい学生、そしてそれらを遠巻きに撮影するマスメディアと疲れからか足早に駅を目指す官僚たち。


スタンディングデモと呼ばれるこの形式では自分たちの主張をまとめた紙やフラッグなどを手に並んでいるだけとなっているが、7時を過ぎるとスピーチの時間として何人かが入れ替わり立ち代わりスピーチを始めてくる。


スピーチはひとり5分といったところで、それぞれにそれぞれの主張を霞が関の夜空へと響かせる。


やがて納村がマイクを受け取った。




「私は現在仕事の関係で金羊国に暮らしながら、現地の獣人男性と交際関係にあります。そして交際相手との関係を持続的なものとするための必要な措置として結婚を望んでおります。


しかし日本政府は『結婚とは男女の間に生まれた子供を保護するためのもの』としており、それは異種間に限らず不妊に悩む男女カップルの婚姻すら認めないということではないでしょうか?


また金羊国で獣人との婚姻を行ってもビザは下りませんが、人間との婚姻であれば同性であってもビザが下ります。それってつまり獣人だからダメってことなんじゃないんですか?それに対して現状満足のいく答えは聞くことができずにいます。


そして私が獣人の男性を愛しているという事実に対して、何故国がケチをつけてくるのでしょうか?ただ家族や友人に祝福され、自分に何かあった時大切な人をサポートする体制の中に私の好きな人を組み込んで欲しいという願いに過ぎません。


私の好きな人は獣人で、子供は出来ませんが共に生きていきたいと思っています。ただそれっぽっちの事をおめでとうと言ってくれないことがこんなにも辛いのだと知りました。そんなこと知りたくなかった!結婚ってもっと幸せなものじゃないんですか!誰を好きになっても良かったんじゃないですか!」




納村の叫びに似た悲痛な言葉は、晩秋の霞ヶ関の夜に沈んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ