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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
24:納村明野の結婚

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24-7

金羊国から出た異種間結婚を認めないと言う日本の方針に対する遺憾のコメントについて、世間の反応は真っ二つに分かれた。


『同性婚と同様に異種間結婚は認められない!』という層と『成人同士が愛し合っているのであれば異種間であっても結婚は認められるべき』という層で、これがまた同性婚と絡めて議論する人達がほとんどを占めていた。


頻繁に引き合いに出されるようになった同性婚訴訟原告団も『本人たちの同意のもとであれば人と人が愛し合うということに性別・年齢・種族は関わりがない、我々は異種間結婚を応援する』と言う声明を出し、霞ヶ関に於いて納村とファンナル隊長の結婚は一種の政治問題の様相を呈していた。




「とりあえず今度の休み福井にファンナル連れていく関係で3日間不在になるんで、よろしくお願いします」




そんな世相を知ってか知らずか、夕食の最中に納村は福井への帰省を宣言した。


元々納村は福井の実家にファンナル隊長を連れていくつもりで観光ビザを取得していたから、そうなるのも当然なのだろう。


「世間を騒がせてるこのタイミングでか」


「雪で移動困難になる前に連れていきたいんですよね。向こう日本が11月末になれば初雪もあり得るし、そうなると今のうちが安全かなって」


確かに世間が静まるのを待って雪の季節と被った結果帰れなくなるよりは、多少世間が騒がしくとも雪の無い今の時期が安全だろう。まして日本に不案内なファンナル隊長を連れて行くのなら尚更だ。


「確かに雪で新幹線や飛行機止まったら洒落になりませんもんねえ」


同じく雪国出身の夏沢が納得したようにうんうんと答える。


俺のような雪と縁遠い関東人にはピンとこないが、雪国育ちの2人には思うところがあるのだろう。


「まあそういう事ならわかった、ファンナル隊長を怪我させないようにな」


「わーってますって」


そんな訳で10月中旬、日本では11月末へと差し掛かろうとするタイミングで納村はファンナル隊長を連れて福井へと旅立って行った。


その間も日本国内では異種間婚を巡る議論は燻り続けており、国会の議題にまでなった。


しかし『現在係争中の裁判と絡む事案であるので省令を取り消し・変更することは出来ない』の一点張りとなっていた。


(……同性婚裁判と勝手に絡めたのは法務省では?)


そんな俺のツッコミは誰にも届くことなく、しかし突っ込んだところで法務省の態度が変わるはずもない。


こういう時、俺はどうしようもなく無力だと思い知らされながら俺は休暇を過ごしていた。




****




納村が戻ってきたのは休暇明けの夕方のことだった。


ヘロヘロの納村は俺に手土産を押し付けると「疲れた……」と言う。


「お疲れ、夕飯もうすぐできるぞ」


「だいじょぶです、談合坂で食ったミニ丼がまだ胃に残ってるんで」


「何故談合坂?」


「電車やバスだと悪目立ちするから車で移動したんですよ、往復10時間かかりました」


疲れ切った納村の口から乾いた笑いがこぼれる。


往復10時間、しかも異世界人であるファンナル隊長は当然車など運転できないのでひとりでずっと運転していたことは容易に想像がつく。万年ペーパードライバーの俺には絶対出来ない芸当である。


「実家との顔合わせはうまく行ったか?」


「二度とうちに帰ってこないのか!と親に泣かれたんで、年末年始は絶対帰るからの一点張りで丸め込みました」


心身ともに疲労困憊の納村に言えることは一つ。


「……お前もう疲れたろ、先風呂入って寝とけ」


「じゃあ、そうさせてもらいます。仕事は明日やっつけるんで」


ヘロヘロの納村を見送るとほんの少しうらやましくも思う。


(あれだけの苦労してでも結婚したいと思える相手との出会いってのは、きっと幸運なんだろうな)


納村の背中を見送りながらそう思った。

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