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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
24:納村明野の結婚

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24-1

「この度ファンナルと正式に結婚することになりました」


夏の暑さも落ち着き秋へと差し掛かろうとする9月上旬、夕食を終えたタイミングで納村が突然切り出してきた。


言われてみれば夏辺りからファンナルとの結婚について匂わされてきたので、展開としては想定の範囲内だが実際に結婚と言われると多少は驚くものがある。


「……マジか」


「マジですね、なので手続き面の方でお世話になると思いますけどお願いしますね」


遂にこの時が来たかという気持ちもあるが、いずれ起きるだろう事案だった。今さらぐだぐだ言っても仕方ないだろう。


「納村さんも結婚ですかー……まさか、退職はしませんよね?」


「しませんって」


「おめでたいですねぇー」


俺の仕事増大と嘉神の寿退職への心配はともかく、他のメンバーはほっこりお祝いモードだ。


なんせ大使館が出来てから現在まで寝食を共にしてきた同僚の結婚だ、祝わない理由がない。


「挙式とかするんですか?!」


「身内への挨拶とか引っ越しとかが終わったらやる予定」


全員が祝賀ムードの中で仕事のことを考えてる俺は多分ロクでもない人間なんだろう。


ここ数年を共に過ごしてきた同僚の結婚を祝う気がないわけではないが、この結婚に伴う仕事が終わってからでないとおめでとうなどと言う気にはなれない。


「納村、戸籍謄本ぐらいは自分で用意しろよ?」


「そりゃしますよ」


金羊国出身者との婚姻手続きは外国人との婚姻手続きと同じ形式を採って行われる。


基本的な手続きなどは俺も把握しているので面倒ではあるがやることは明瞭だし、ファンナル隊長は日本で暮らす事もないからそっちの手続きもないので、少なくとも深大寺の求婚騒ぎの時のようなトラブルは起きまい。


()()()()、そう思っていた。




*****




日常の仕事の隙間に納村の結婚のための書類処理という仕事が追加されて10日。


金羊国発行の結婚証明書や婚姻届の写しを確認し、日本側へ転送しようと封筒に詰めた。


「お疲れ様でーす」


「高槻くんか、久しぶり」


紅忠に席を置きつつ俺たちの荷物を代わりに運んでくれている青年から「これ、大使宛てです」と言って一枚の紙を挟んだ透明クリアファイルが手渡される。


それは外務省経由で届いた法務省の省令通達書だ。


通達書を流し読みしようとして、その中身が見逃せないものであることに気づいてもう一度読み返す。




「日本国内における獣人との婚姻手続きは全面不受理?」




もう一度頭から読み返すがやはり中身は俺の理解で間違っていないし、これは法務省からの正式な通達であることを再確認すると思わず天を見上げた。


「なんでよりによってこのタイミングでそんな通達が来るんだよ……」


日本での婚姻が認められなければ、納村は金羊国では既婚者なのに日本では独身という異常な状態になってしまう。そして何より納村本人が荒れる。


この通達書を見ただけで大いに荒れるだろう納村と配偶者の母国で法的に夫と認められないファンナル隊長を思うとなかなか心が痛む。


想像しただけで頭の痛い事態が俺の前に降りかかっていた。

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