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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
23:大使館と夏の日々

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23-7

「ルリ、おやつ食べよう」


急なクライフ上級魔術官の問いかけにいきなり何?と言う顔をする。


しかしそんな顔も無視してクライフ上級魔術官は席を立って、紙製の深皿と小さじと薄茶色の小瓶を持って来た。


そして右手をくるくるっとまわすと雪のようなものが出来上がり、それを紙皿の上に落とすと薄茶色の小瓶を軽くまわしかける。


そしてひとさじ掬い上げて相模さんの口元に寄せてると、仕方なく相模さんが口を開けて受け入れた。


「……かき氷だ」


驚きに満ちた顔で相模さんがそう呟くとクライフ上級魔術官はでしょ?と言う顔をした。


もしかして相模さんがやたらと俺たちを案内しなかったことを気にしているから、かき氷で気を逸らしたのだろうか。小学生のやり方である。


「ちなみに俺たちの分は……」「へいへい」


クライフ上級魔術官が作ったかき氷は、子供の頃にノリで食べた雪に水で薄めたメイプルシロップをかけたような味がする。


この薄いメイプルシロップは大陸南部で作られており、北の国の最北部で採れる甘くて日持ちする樹液を煮詰めるとこんな感じの味になるんだそうだ。


メイプルシロップのかき氷は日本だと聞かないがサラサラとした氷のスッと溶ける感じと天然の甘さが夏の身体に心地よく染み渡る。少し水の雑味が強い気がするがこれは仕方のない事だろう。


「これって一般的なおやつなんですか?」


「北の国の王宮では夏になるとよく出ましたね、一般の街だとどうなんだろう?」


ハルトル宰相に聞いてみたが、あまり明確な答えは出てこなかった。まあこの人いちおう王宮育ちだしな。


かき氷を食べる相模さんしか見えてなさそうなクライフ上級魔術官を尻目に、俺たちはただかき氷を楽しむのであった。




*****




工事現場の視察の帰り道、紅忠の河内さん佐々さんのコンビと遭遇した。


「真柴大使とハルトル宰相、お久しぶりです」


「こちらこそ」


このところあまり会う機会のなかった2人を見て、ハルトル宰相が俺に聞いた。


「紅忠さんも暑さ対策してるか聞いて貰っていいですか?」


頼まれた通りに質問をすると「そりゃ勿論」とハッキリした答えがくる。


紅忠で雇ってる獣人たちは室内作業がメインでトンネル工事現場と比べて熱中症リスクが低いので、とにかくこまめに水分補給をさせ定期的な水浴びで体に熱が篭らないようにすると言った対策をしている。


そう言うことなら大丈夫そうだなと言うところで話は終わり、立ち話もそこそこに帰り道を歩きながら俺はある質問をしてみた。


「ハルトル宰相は本当に皆さんを気遣いますが、ハルトル宰相にとっての国民の皆さんってなんなんですか?」


「家族です、家族を気遣うのは当たり前のことじゃないですか」


そんなふうに笑って答えるの見て、この国の人々がなんとなく羨ましく思える。


国民全体を守るべき家族と言い切れるその潔さを日本のどのくらいの人が持ててるだろう。


家族や肉親ですら守るべきと捉えて気遣えるひとは少ない。むしろ家族だからこそ遠慮は無用と気を遣わなくなる人も多いだろう。


まして政治家などと言う職務に就く人間が国民を家族のように想っていると口にしている姿を俺は一度たりとも見たことがない。


人生のほとんどをそうした世界を生きて来た俺にはハルトル宰相は少しだけ眩しく見えた。

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