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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
23:大使館と夏の日々

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23-4

7月も終わりに差し掛かったある日、金羊国は酷い夕立に見舞われた。


窓の外はバケツをひっくり返したような大雨だ。


「納村さんまだ帰ってきてないですねー?」


仕事が終わる時間になり、ぼちぼち夕食の時間だ。


しかし昼間フィールドワーク行ってきますと言って出て行った納村だけがまだ帰ってこない。


「この雨で足止めされてるんじゃないですか?」


嘉神がそう答えると「ですかね」と飯山さんがつぶやきながら外の雨を見守る。


「まあそのうち戻ってきますよ」


「納村さんのごはんどうしますかねー?」


いくらここが異世界でも納村はいい歳の大人であるしこの雨が止んだ頃には戻ってくるだろう。


そうしてぼんやりと窓の外を眺めていると夕食の時間になった。


「今日はソーメンチャンプルーとトマトスープですよー」


「昼もそうめんじゃなかったですっけ」


「今年も嘉神さんのご実家からそうめんをたくさん頂いたので、消費しないとと思いましてねー」


飯山さんが苦笑いしつつ大盛りのそうめんチャンプルーとトマトスープが差し出される。


「去年の夏の二の舞になりましたねえ」


石薙さんも苦笑いでそう応じると「うちの親がほんとにすいません」と申し訳なさそうに答えた。


「何のことです?」


「大使と木栖さんはあの時不在でしたからね」


夏沢が遠い目でそんな事を言うので、俺が不在の時にゆかいなトラブルが起きてたらしい。


まあそうめん自体は別に嫌いじゃないので気にはならない。


そうぼやきつつもソーメンチャンプルーに箸をつけると、焦がした魚醤の風味がついたそうめんとイノシシ肉の油が不思議とよく合い、野菜のシャキシャキ感とそうめんのつるりとした食感が楽しい仕上がりになっていた。


「向こうで食べたのとは違うけど、これもうまいな」


過去に沖縄地本にいた木栖がちょっと満足げにつぶやくので「そうなのか?」と問えばこくりと頷く。


「確かツナとカット野菜だったかな、ちょうど台風の日に泊まりに来た時にチャチャっと作ってくれて」


こいつの沖縄時代で、家に泊まりに来て料理を拵えてくれる相手というのでふと思いついたのはこいつの元恋人だった。既婚者であることを隠して木栖と付き合っていたことで相手の奥さんとトラブルになったという、木栖の沖縄時代の恋人。


(……いや、恋人じゃない可能性もあるか)


ちょっと聞きたいような、聞いたら聞いたらめんどくさい心情になりそうな、微妙な心地でソーメンチャンプルーをすすっていたら遠くから足音がしてきた。


「遅れてすいませーん」


ようやく帰ってきた納村はちょっと申し訳なさそうに食卓に着く。


「今日は帰り遅めだったな」


「夕立に足止めされましてね、まさに遣らずの雨って感じで」


言い訳めいた事を言いつついただきますと夕食に箸を伸ばす。


確かに帰ろうという時に振る急な夕立は誰かを引き留めるような雨に思えるときがある。


「でもお前、傘あるんだから無理すれば帰れたろうに」


「いいじゃないですか、間に合ったんだから」


「お前の帰りがもう少し遅かったらみんなの分が増えたんだがな」


俺がそんな事を言うと納村はえー?と不機嫌そうな顔をした。

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