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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
22:大使館のある求婚者

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22-9

ぽんと言い放ったその言葉を理解しかねるのが理解できた。


「結婚しなければお互い何も捨てなくていいんじゃないか、と思うんだ」


「……そもそも結婚という政治的な問題から逃げるのが目的じゃ?」


「愛と政治を天秤にかけるんなら結婚を捨てて愛を取る、それが私の結論」


随分あっさり言い切ったものだが、たぶん本人なりに悩んだ結論がこれなのだろう。


「生涯独身を貫くという事そのものについての問題は?」


「もちろん承知してる。求婚者は減りはしてもゼロにはならないだろうし、跡継ぎの問題も出る。本家断絶の危機となれば周囲も黙ってはくれないだろう。けれど私は若菜や愛する者たちを捨てたくない」


生涯独身の女性権力者で連想するのはヴァージンクイーンと呼ばれたエリザベス一世だが、彼女はその生涯において度々結婚が政治的問題として取りざたされていたという。


カウサル女公爵もそうした問題に直面することは自明の理であるが、本人がそうすると決めた以上俺が口を挟む余裕はないだろう。そうなると内政干渉になりかねない。


「どうか、それで許してくれる?」


「あなたのすべてが僕のものにならないかわりに僕も何も捨てなくていい、という事は受け入れます。ただあなたに複数の恋人がいるという事実をうまく許容できるかは分かりません」


「……いいよ、私はどうしようもない人間だが私はきみを好きであることを受け入れてくれるなら。それでいい」


カウサル女公爵は深大寺足元にしゃがんで、その手を取ると手の甲に口づけを落とす。




「きみも私も何も捨てなくていい、ただ私を恋人にして欲しい」




カウサル女公爵は再び自らの願いを懇願した。


全てを捨てて夫や伴侶にならなくてもいいので、ただ己の恋人であって欲しいという率直な願い。


深大寺はその祈りのまなざしに深い深いため息を吐いてから「そもそもですよ?」と告げる。


「あなたに惹かれてなんかいなければ最初から全部お断りしてるんですよね」


その言葉に公爵の目が輝いた。


「若菜……」


「と言う訳でこの話は終わりです!船の時間大丈夫ですか?」


「まだもう少しは大丈夫、もうちょいきみと一緒に居たい」


とりあえず俺は退席した方が良いか。


ようやくお互いの気持ちに整理のついたのだ、俺はただの邪魔な置物でしかない。


カウサル女公爵の従者の人に軽い目配せをして部屋を出てから思う。


「結局この辺の心配は全部杞憂に終わった訳か……」


まあ杞憂で済んでよかったのか?




*****




翌日、嘉神が俺の執務室に来たタイミングでこの件の結末を伝えると「なら良かった」とつぶやいた。


「人が減る心配も深大寺君のボーっとタイムもこれでなくなるんですね」


「まあゼロにはならないだろうけどな」


「ああ、でも一応異世界人との結婚についての対応協議はまだ続けることになる感じですか?」


「今回の件は結婚に至らなかっただけで、可能性はあるからな」


主に納村とかはその余地がある。


優先順位は下がるがやっておいて損は無かろう。


「双海公国も大変でしょうけどね、国家元首による生涯独身宣言ですから」


「でも選んだのは本人の意思だ」


深大寺に何も捨てさせず己も捨てずに、ただ愛し合うためだけに選んだ茨道だ。


俺達はただそれを見守るだけである。

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