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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
21:大使館と秘密の子

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21-6


「……それは無理筋と言わないか?」


国王殿下は呆れたように聞いてくる。


無論無理筋と言えば無理筋であるが、子どもの幸せのためだ、多少無理な言いくるめもしてやろうじゃないか。


「15歳からですから最短3年、長くても7~8年程度ですよ?それで国全体の問題を回避できるなら安いものじゃないですか」


「それを無理筋と言うんだがな」


「爵位相続に子どもを巻き込まないように生まれてきた子供を北の国に入国させない、と言う約束付きならばどうでしょう?」


これは子どもの母親である福永やよいへ相談する必要もある。


しかし彼女自身の考えに反することはないはずだ。


(彼女の望みは惚れた男との間に作った子どもが困らない事、ならむしろ北の国への入国は自ら問題に飛び込むことになる)


子どもが将来爵位を望んだらどうしようもないが、地球には金で爵位を売ってくれる国もあるのでそれで我慢してもらう事も出来る。


「本人が入国しなければ爵位相続権争いに巻き込まれることもないと言う訳か」


「ええ。良識的な人間に育ってさえくれれば入国不可の国に無理して入ることはないでしょうから」


無論、危険だから行くなと言っても戦地に突っ込んでいく人間はいる。


そういう人間に育ってしまった場合はもう諦めるしかない。こちらとしては煮るなり焼くなりラジバンダリ、という心境である。


これから生まれてくる子供の人間性なんてもんはさすがに予測がつかない領域であるので、福永やよいとその周りの人達には頑張っていただきたい。


「父親の国だとしてもか?」


「子どもと父親の交流が条件に含まれていたのを忘れですか?


父親であるへルペンシュルツ辺境伯に日本や金羊国へ来てもらう、もしくは日本から北の国への訪問時に母子を随伴させることで親子交流は実現させつつ爵位相続に首を突っ込ませないように監視するという手もあります」


ある程度本人が自分の父方について納得できる機会を設ければ、無理な入国もある程度回避できる。


歳を食うと自分のルーツと言うものに興味を持つことは自然な事である。爵位相続問題から離しつつその興味をある程度満たす機会は用意できる。


「そして自国の爵位相続権を持つ異世界人の子が居るという事が公になれば教会や西の国から今以上に危険視されるでしょうから、ある程度使い道が公になる国庫でなく国王殿下ご自身の財布から……と言う訳です」


一通りの話を聞いた国王はハーッと大きなため息を吐きながら「微妙に筋が通ってるのが腹立たしいな」と呟いた。


「へルペンシュルツ宮廷伯は少ない負担で異世界人当主を回避、北の国は爵位相続権保有者の入国によるトラブルを回避、我々は爵位トラブル回避と子どもの養育資金をゲット。誰も損はしませんでしょう?」


今回の一件は王家が自分から突っ込んできたのだ、解決に一役買って頂こうではないか。


北の国の国王は俺たちの算出した養育予算を見返してから少しばかり考えてからつぶやいた。


「全額は出せないぞ」


「承知しております」


大切なのは生まれて来る子どもが幸いであるために、お金で苦労しない環境を整えること。


ひととは違う遺伝子を受け継いで人と違う身の上で生まれてくる子どもが良い環境に在り続けるための資金を得ること。


「……他人の子どものためによくもまあ考えるものだ」


「子どもは生まれて来る家や家族を得られません、ですが我々の世界では金銭があればより良い環境を選び取りやすくなります。自らで選べることの少ない子どもが少しでもいい環境に居られるように努力するのは大人の義務ですよ」


国王は「そこまで言い切るか」と呆れたように答える。


「少なくとも我々の世界ではそう言うものだと多くの大人が思ってるはずです」


みんながみんなそう思っているかは分からないが、少なくとも俺の親族は俺が必要以上にお金で苦労しないよう面倒を見てくれた。


俺に子どもはいないけれど、俺が多少頑張ることでそれが果たされるのならばそうしてやりたかったのだ。

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