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異世界大使館はじめます  作者: あかべこ
20:全権大使は名探偵じゃない

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20-6

同席していた貴族達の大半はお茶菓子を食べながら、その製菓や製茶技術に感心している様子が見受けられる中でふと1人の少女に目がいった。


(確かあれは、ノーラ・アールクヴィスト伯爵代理だったか?)


昨年火事により当主を亡くしたアールクヴィスト伯爵家は跡取り息子が幼少のため当主夫人であったノーラ・アールクヴィスト伯爵夫人が代理を務めていると紳士録に記載があった。


「お菓子の追加はいかがですか」


オレンジ色の髪の毛を緩くまとめた20歳にも届かないような眠そうな面立ちのそばかす顔の少女が、クッキーを食べるのをやめて俺の方を見た。


「一つお伺いしたいのですが、このようなお菓子は日本でも貴重なのですか?」


「貴重、というほどではありませんね。ここにあるものでしたら庶民でも冠婚葬祭などの贈り物に出来る程度でしょうか」


俺の一言で空気ザワついた。


「庶民でも贈り物として買える程度、ということですね」


「ええ。もしお気に召されたようでしたら手土産に包みますよ」


幸いまだ少し残っているので包んでもらうことは可能だ。


持ち帰って分析するという可能性もあるが、製法を再現したとしてもそもそも原材料のクオリティが違うので全く同じものは作れまい。




「私たちは庶民の味で満足すると思われてるのかしら」




小声でサクッと言葉で俺を刺してきた。


(見た目の割に辛辣だな……?)


しかしその点を俺たちも考えなかったわけではない。


「言い方は悪いですがそうなりますね、しかしこの国の貴族階級が嗜む味を庶民が食べられるほどの値段で量産出来る。それが強みのひとつです」


「庶民が贅沢する国なのね」


「たとえどれだけ卑しい生まれであろうとも懸命な努力とほんの少しの幸運があれば、贅沢な暮らしも一国を率いる事すら許される。そういう国ですので」


「身の丈に合わない暮らしをしても不幸になるだけではないかしら?」


「子供の背が伸びるように人の身の丈というものは変わるものですよ」


その言い分については俺も否定しない。


しかし金持ちになれば金持ちとしての振る舞いを覚えていく例はいくつかある。


俺だって全権大使の任を押し付けられてから外交イベントに巻き込まれ続けてきたのだ、いやでも振る舞いは変わらざるを得ない。


「……そういうものかしら」


「そういうものですよ」


追加の菓子を並べつつ俺は話を続ける。


「底が上がれば上辺も上がります。日本の繋がりを得る事で職人は良い菓子ものを作ろうと奮起し、仕立て屋は地球の服屋に負けるな追い越せと努力し、日本との交流で新しい産業が誕生する事すらあるでしょうね」


「領地の民が一挙に日本へ向かう、という可能性は?」


「それはその土地の悪政の果てのものでしょう、我々はそのような誘導しませんよ。ただでさえ地球の人口は飽和状態なんですから。


それに、北の国の国王殿下が訪日最終日に遭遇した出来事をお忘れですか?」


当然ながら訪日最後の記念パレードで国王がデモに遭遇した話は届いている。


わざわざ他国の王の前で自国の恥を晒すようなことを国が誘導しない事は彼らにも想像がつく。


(日本との外交が領地や国益にプラスになることを少しでもアピール出来たならいいんだが)


利益となる存在になれば金羊国の存在によるデメリットは無視出来るはずだ。


最後に手土産として日本からのプレゼントである事を示す小さな刺繍入り今治タオルハンカチを配って終わりとなった。

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